上海の金融街「陸家嘴」には、上海タワー、ジンマオタワー、上海ワールド・フィナンシャル・センターが密集して建っている。
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- 中国には、世界のどの国よりも多くの超高層ビルが建っている。
- その中国には、建築家のステファン・アルが新著『スーパートール』で「世界初の3棟隣接型超高層ビル群」と表現したビル群がある。
- 上海タワー、上海ワールド・フィナンシャル・センター、ジンマオタワーの3棟がこの超高層ビル群を構成している。
中国には世界一高い超高層ビルはないかもしれないが、高層ビル・都市居住協議会(Council on Tall Buildings and Urban Habitat)によると世界で最も高いビル10棟のうち5棟が中国にあり、そのうちの3棟は上海の金融街に密集しているという。
建築家のステファン・アル(Stefan Al)は新著『スーパートール(Supertall)』で、世界中の超高層ビルを検証し、それらがどのように摩天楼を形成しているか書いている。その中には 「世界初の3棟隣接型超高層ビル群」 と呼ぶものも含まれている。
「通常、超高層ビルは単独で建っていることが多いので、これは本当に珍しい」と、アルは上海にある3つのビルの密集についてInsiderに語った。「ここには3つの超高層ビルがあり、しかもすべて隣り合わせに並んでいる。それらは数年おきに次々と建設され、新しいものは前に建てられたものより高くなっている」
密接して立つ3つの超高層ビル。
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このビル群は、上海の金融街である陸家嘴(りっかし)にあり、上海タワー(上海中心)、上海ワールド・フィナンシャル・センター(上海環球金融中心)、ジンマオ(金茂)タワーの3つで構成されている。
「一番新しいビルは2017年に完成した中国で最も高いビル、上海タワーだが、他の2つのビルもできた当時は一番高かった」とアルは話す。
「1999年に最初に完成したジンマオタワーは最も高かった。そして9年後にその高さを超える上海ワールド・フィナンシャル・センターが建てられた」
では、その中国の3つの超高層ビルを見てみよう。
1. ジンマオタワー
高さ:420.5メートル
完成:1999年
ジンマオタワーの頂上。仏塔をイメージし、徐々に細くなる尖塔状になっている。
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ジンマオタワーは、パゴダ(仏塔)をイメージした段状のファサードが特徴だ。シカゴの建築設計事務所、スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル( Skidmore, Owings & Merrill :SOM)により設計された。
「このファサードは本当に質感が高く、金属製の縦仕切りや柵がたくさん見られる。窓ガラス清掃のための通路のようなものも役に立っているだろう」とアルは話す。
88階建てのこのビルの上層階にはグランドハイアットホテル(Grand Hyatt Hotel)が入り、残りの階にはオフィスが入っている。
2. 上海ワールド・フィナンシャル・センター
高さ:492メートル
完成:2008年
上海ワールド・フィナンシャル・センターの上部には、台形の切り込みがある。
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ジンマオタワーと同様、上海ワールド・フィナンシャル・センターにもホテルがある。パークハイアット上海(Park Hyatt Shanghai)は、このビルの79階から93階に入っている。このビルを設計したニューヨークの設計事務所、コーン・ペダーセン・フォックス( Kohn Pedersen Fox Associates :KPF)によると、他の階にはオフィススペースと小売店が混在しているという。
上海ワールド・フィナンシャル・センターは、ビルの上部が台形に切り取られているのが特徴的だが、アルの著書によると、本来は円形になるはずだったという。
「上海の空に巨大な円がそびえ立つというアイデアは、国民の怒りを買うことになった。中国国民は、円形から日本の国旗の日の丸を連想した」とアルの本には書かれている。その反発を受けて、設計者は円を台形に変更したのだという。
3. 上海タワー
高さ:632メートル
完成:2015年
上海タワーは、ビルの側面を切り取ったようなくびれがあり、ひねったような形になっている。
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高層ビル・都市居住協議会によると、上海タワーは中国で最も高い建物だ。
上海タワーの高さは、世界一高い高層ビルであるドバイのブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)に次ぐものだ。しかし、アルの著書によると、上海タワーの床面積はブルジュ・ハリファよりも2割も広く、エレベーターシャフト(エレベーターが移動する空間)もブルジュより長いという。
「全長約578メートルという途方もない長さは、ブルジュのエレベーターシャフトを約73メートルも上回っていて、55秒以内で下から上まで一挙に移動することができる」とアルは書いている。
「地上から頂上までたどり着くのには、3398段の階段を登らなくてはならず、約53分間を要する」
このほかにも、タワーの設計には構造的に考慮されている部分があった。建物の側面に切り込まれた小窓があるねじれたデザインは、風の力から建物を守っていると、アルはInsiderに語った。完全に円形の塔であると、強い風が吹くと、「渦流」と呼ばれる現象によって建物を引っ張る力が働き、危険な状態になることがあるという。
「通常、風が丸い物体に風が吹きつけると、風は円の表面に沿って移動して背面に集まる。しかし、もし不規則な表面だったり、このビルのようにくびれがあると、風は建物の表面を辿れなくなり、そのまま散逸してしまう」とアルは説明する。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)