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- 欧州連合(EU)は、2024年秋までにEU域内で販売されるすべてのスマートフォンの充電ポートに「USB Type-C」を義務付けることで合意した。
- iPhoneにライトニングポートを採用しているアップルは、以前からこの法案に反対を表明している。
- EUによると、消費者はこの法律によって充電器の購入費用、年間で最大2億5000万ユーロを節約することができるという。
アップル(Apple)ファンの多くは、iPhoneの充電ポートがライトニング(Lightning)からUSB-TypeCに切り替わることを何年も前から望んできた。欧州連合(EU)の新しい法律によって、今後2年間でそれが実現しそうだ。
電子機器の充電器を共通化するために欧州議会(EP)と欧州委員会(EC)の間で10年かけて行われた交渉の結果、2022年6月7日、両者はEUで販売される有線充電を備えたすべてのスマートフォンに、2024年秋までに「USB-TypeC」の搭載を義務付ける法案に合意した。
この法案を推進してきた欧州議会のプレスリリースによると、「EU域内の製品の持続可能性を高め、電子機器の廃棄物を削減し、消費者の生活をより快適にするためのEUの幅広い取り組みの一環」だとしている。
アップルは 「iPhone 5」 以降、大きな30ピンの「ドック(Dock)コネクタ」から移行し、長い間「ライトニング」を採用してきたことから、この動きはアップルに大きな影響を与えそうだ。アメリカの市場分析会社ストラテジー・アナリティクスの2021年のスマートフォン販売調査によると、アップルはヨーロッパではスマートフォンの市場シェアのトップで、約23%を占めている。
アップルはUSB-TypeCの充電ポート搭載を義務付けるEUの提案に反対しているが、ブルームバーグ(Bloomberg)は同社はUSB-TypeCポートを搭載したiPhoneをテスト中だと報じている。実際、アップル製品の中にはすでにUSB-TypeCポートを採用しているものもあり、iPhoneは特筆すべき例外になっている。
一方で、アップルは有線の充電ポートを完全に放棄し、ワイヤレス充電専用のiPhoneでこの要件を回避する可能性があるとザ・ヴァージ(The Verge)は指摘している。Insiderはアップルの広報担当者に今回の合意についてコメントを求めたがまだ回答は得られていない。
アップルが今後どのような決断を下すかに関わらず、EUのアップル製品ユーザーには恩恵があるだろう。充電コードや接続機器の種類が減るからだ。
今回の発表によると、充電器の電子廃棄物は年間1万1000トンに及ぶという。欧州議会は、この法案によってEUの消費者がより多くの充電器を再利用するようになり、新しい充電器の購入費用を年間で最大2億5000万ユーロ(約357億2500万円)節約できると考えている。
「ヨーロッパの消費者は、新しい機器を購入する度に複数の充電器が山積みになることに長い間不満を持っていた」と欧州議会の調査を担当したアレックス・アギウス・サリバ(Alex Agius Saliba)はプレスリリースで述べている。
「これからは1つの充電器ですべての携帯電子機器を使えるようになる」
このプレスリリースには、携帯電話、タブレット、電子書籍リーダー、イヤホン、デジタルカメラ、ヘッドホンとヘッドセット、携帯ゲーム機、ポータブルスピーカーを含む、USB Type-Cが義務付けられるすべてのデバイスの一覧が記載されている。
この法案は2022年内に欧州議会と欧州理事会双方に承認されることが必要で、メーカーには2年間の猶予が与えられる。なお、ノートパソコン用の充電器に関しては、法律の発効から40カ月以内に適合させる必要がある。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)