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ユニクロ「値上げ」は吉か凶か…値上げ「成功」したZARA、株式市場は好感

ユニクロ

撮影:小林優多郎

先週発表されたユニクロの値上げが話題になっている。

6月7日にメディア向けに2022年秋冬商品展示会で発表されるやいなや、ニュースは国内外に一気に広がり、SNSなどでは「悲報」「今の原価の高騰なら仕方ない」などの意見が飛び交った。

一方、ファーストリテイリングの翌8日の株価は1月26日につけた年初来高値(6万9130円)を更新。週末に入る6月10日の終値は6万9180円だった。株式市場ではおおむね好感を持ってとらえられたと言える。

改めてユニクロの「値上げ」の背景にあるビジネス環境の変化をおさらいし、その成否を占う。

値上げの理由と、値上げアイテム

ユニクロ商品

写真は2021年の秋冬商品。

撮影:小林優多郎

今回の値上げについて、ユニクロの広報担当者は「極力、価格は維持していきたい」とした上で、「素材高や物流費の高騰、円安の影響で生産コストが上がっており、今までと同じ価格でご提供することが難しくなってきている。秋冬商品については一部の商品で値上げを予定し、値上げに伴い商品を見直し、機能やデザイン面でのアップデートをしている」と説明した。

2022年秋冬に値上げをする代表的な商品とそのアップデート内容

ユニクロ秋冬展示会

6月7日に行われた、2022年秋冬展示会でのファーリーフリースのプレゼンテーションの様子。

ユニクロ・プレス提供

・ファーリーフリース:1990円→2990円

【ここがup】回収ペットボトルから作られたリサイクルポリエステルの比率を従来の約30%から約100%に高めて、よりサステナブルに。

・ヒートテック(極暖):1500円→1990円

【ここがup】ストレッチ機能(ウルトラストレッチ化)や消臭機能を向上させることでより着やすく快適に。

・ウィメンズのカシミヤクルーネックセーター:8990円→9990円

【ここがup】ホールガーメントによって3D化。立体的になることや、はぎ合わせ部分の突起や硬さがなくなることで、着心地が向上。製造過程で発生する毛糸の廃棄量も減り、よりサステナブルに。

ユニクロは「素材高や物流費の高騰、円安の影響で生産コストが上がって」いるというが、実際にはどれくらい高騰しているのか?

ファッション雑誌編集者によると、「衣料品で最も多く使われるポリエステル糸の価格は、アジアでの取引価格がここ半年で25~30%上昇している。綿花に至っては、コロナ前に比べて約2.4倍に高騰している」という。

綿花の価格上昇は、コロナ禍で生産量が落ち込んでいることや、エネルギーや輸送費の高騰、さらには、インドの農家で通常のコットンをオーガニックコットンとして偽装したことによる余波なども要因になっている。

いま、世界的なサプライチェーン危機やコンテナ不足で物流費は驚くほど高騰している。

「中国・上海から北米航路便では、20フィートコンテナの輸送費が、コロナ前の2020年1月に1380ドルだったものが、昨年末には9810ドルにまで実に7.1倍に急騰。今年3月には7770ドルへと多少落ち着いたが、それでも5倍以上になっている。日本までの距離は近いとはいえ、3~4倍になっているとみられる」(同ファッション雑誌編集者)

他にも、中国・ASEANの縫製費は年率5~7%上がっているといわれている。サステナブルな素材や商品の開発や、循環型の仕組みづくりへの投資などもコストアップに影響している。

「円安」が値上げ決断のとどめになったか

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撮影:小林優多郎

とどめは、20年ぶりの円安だ。為替はコロナ前の2020年1月ごろは1ドル109円前後で推移していたが、直近では1ドル130円台で推移。6月9日には一時134円を付け、その後、週末に差し掛かる6月10日時点でも同水準が続いている。単純計算で約22%の下落というわけだ。日本の衣料品の約97%は輸入であり、円安のダメージは大きい。

ユニクロは海外売上高比率が国内売上高を上回っているため、為替メリットもあると思われる。

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2021年2月、「新サステナビリティレポート」記者会見に登壇した際の柳井会長。

出典:ユニクロ

だが、柳井正会長兼社長は、1ドル126円前後で推移していた4月、決算会見で日本経済全体を見たときの円安のメリット、デメリットを問われて、こう断言している。

円安のメリットはまったくない。日本全体から見たらデメリットばかりだ。日本は世界中から原材料を入れて、加工して付加価値を付けて売る業務をしている。その中で自国の通貨が安く評価されるということは、決してプラスにならない。

これ以上続くと日本の財政などが悪い方向に行くのではないか。円安に行かないように、日本の財政をなんとかしないといけないんじゃないか」(柳井会長)

さらに、値上げについてはこうも発言する。

「今の日本の経済情勢から考えると、安易な値上げはできない。やはり(お客は)価格にすごく敏感だ。我々、値上げはほとんどしていない中でも、『値上がった』という情報がすぐ伝わるのが現状だ。

ただし、原材料が2倍とか、50%アップとか、ひどいものは3倍ぐらいになった。それを今のプライスで売るというのは不可能だ。

我々も上場企業なので当然だが、収益と成長を目指してやっていく中で、利益がなければそれはできない。うまくどうやって努力していくかということを考えてやる。

もう1つ、ビジネスは会計年度別やシーズン別に考えるのではなく、もっと長期で考えていくもの。今度の秋冬、さらにその次の春夏に向けて、考えて考え抜いたプライスであればご理解いただけると思う」(柳井会長)

外資ファストファッションは「値上げ」に成功

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インディテックス社は今春夏商品で値上げに成功し、利益増加、株価上昇を実現した。

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実は、「ZARA」を手がける売上高世界ナンバーワンのアパレル企業のインディテックス社では、今春夏商品から先行した値上げが奏功している。

この6月に発表した2022年2~4月の四半期売上高が前年同期比36%増となり、売上総利益率は60.1%と過去10年間で最高を記録した。一方、営業費用の伸びは24%増に抑えた。その結果、純利益は80%増。この発表により、株価も7%前後上昇した。

ロイターはスイスに本拠を置く金融機関のUBS調べとして、2022年に入ってからのZARAの12の主要市場でオンラインストアの最低価格ラインが10%上がっており、4月には平均18.5%上昇したとレポートしている。これは「アパレル全体の2倍以上の値上げ幅」だ。また、ロイターの同じ記事では、同じくファストファッションのH&Mとザランドは4.2%上昇しており、ZARAの4分の1にとどまっていると報じている。

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