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マイナビ、青山ら大手が就活マナー刷新。「男女別」「化粧・パンプス強要」は「時代に合わない」

就活

大手企業を筆頭に、就活マナーが変わり始めた。背景には何があるのか。

撮影:今村拓馬

就活大手やスーツ大手が打ち出してきた就活の身だしなみマナーには、多くの問題があると指摘されてきた。

「男性向け」「女性向け」の男女二元論に支配されており、多様性に欠けていること。また、女性に向けられた指南には「美しさ」を求めるものが多く、ヒールパンプスやスカートの着用を勧め、ノーメイクはNG。スーツのくびれを強調したり、中には左手薬指の指輪を外すような指南もあった。

これらを「就活セクシズム」だとして就活産業に改善を求める署名も立ち上がっており、その提出先企業では少しずつ変化が起き始めている。

身だしなみ指南から「男女」の区分を撤廃

就活、マイナビ

マイナビ「恥をかかないための就活マナー 身だしなみ・持ち物編」。2020年時点のもの。

提供:スマッシュ就活セクシズム

その筆頭がマイナビだ。同社のサイト内にある「恥をかかないための就活マナー身だしなみ・持ち物編」を見てみよう。

2020年頃は「顔」という項目が設けられ、「男性」「女性」向けに指南がなされていた。女性には「厚化粧でもノーメイクでもなく健康的で自然なメイク」、男性には「ヒゲはきちんと剃る。剃り残しはNG」という記述が。

就活、マイナビ

同サイトのアップデート後。2022年現在。

出典:マイナビHP

それが現在(2023卒2024卒向け)では分類も「顔周り」という表現になり、「男性」「女性」の区分が撤廃されている。さらにノーメイク禁止の文言も撤廃され、ヒゲは全て剃るという指南から、「整え」「清潔感を大切に」と判断の余地がある表現になっていた。

他にもスーツやかばん、靴などの項目があるが、全てにおいて「男性・女性」の区分がなくなっている。

メイクやヒールパンプスの強制は「時代に合わない」

就活、マイナビ

身だしなみチェックリストも男女の区分をなくして統合されている。

提供:スマッシュ就活セクシズム(2022ver.のハイライトは当該団体によるもの)

これは同ページ内における「見だしなみチェックリスト」も同様で、かつては「男性編」「女性編」の2枚に分かれていたものが、現在は性別による区分をなくして1枚に統合されている。

女性編にあった「ノーメイクではない」「指輪はつけていない」というチェック項目や、靴は「プレーンパンプスがおすすめ」「ヒールは3〜5cmのものが足さばきが綺麗に見える」という指南も、統合後は全て撤廃されていた。

マイナビは今回の改変について、

「本コンテンツは公開開始当時から改良を重ねており、内容は毎年ブラッシュアップしています。見直しをかけている背景としては、社会情勢など時代の流れにあわせた内容を反映したいという意図です」(社長室・広報部)

と話す。

人物像は多様性ある例示を

就活、就活セクシズム

就活セクシズムをやめるよう求める署名は1万7600人超が賛同している(2022年6月12日時点)

出典:Change.org

前出の署名を立ち上げた団体「スマッシュ就活セクシズム」では、マイナビに対し2021年6月に署名を提出している。マイナビは署名の受け止めについて、「各所からのさまざまなお声を貴重なご意見として承っております」と回答した。団体の中心となって活動する水野優望(ゆみ)さんは言う。

「指南の内容が包括的なものになって良かったです。

男女のラベルをなくしたことで、さまざまな性自認の人が『自分はこっち』と選ぶ心理的なハードルも下がったと思います。とはいえ、現在の写真もステレオタイプな男性像と女性像の2パターンのみなので、男女二元論であることは否定できません。より多様性を感じられるような3、4パターンの例示を検討して欲しいです」(水野さん)

男女二元論からの脱却を試みる就活企業は他にもある。就活情報会社のディスコが運営するサイト「キャリタス就活」の身だしなみマナーコーナーでも男女の区分が撤廃され、女性に化粧やヒールパンプスの着用を課すような指南もなくなった。

成美堂出版の『こう動く!就職活動オールガイド』の面接中の姿勢・椅子の座り方指南では、男性は両膝を開けて座るのに対し、女性は閉じるべきという表記だったものが、男女の区別が撤廃され、膝の開閉についての記述も削除されていた。

ディスコ、成美堂出版ともに水野さんたちがこれまで改善の要望を伝えてきたものだ。

男子は「面接」女子は「メイク」で比較

就活、青山、マイナビ

青山商事が運営する就活指南サイトでの1コマ。こちらは変更前のもの。マイナビとの共同企画だ。

提供:スマッシュ就活セクシズム

リクルートスーツを販売する大手メーカーも変わり始めている。青山商事が展開する「洋服の青山」の「オンライン就活での好印象の与え方」という記事ページでは、女子学生と見られるイラストの吹き出しに「オンラインだしノーメイクでもいいか〜」と書かれ、ぞっとした表情の絵文字が添えられていた。女子学生は眉が薄く、目の下のクマが強調されている。

イラストの下に書かれた説明文には、ノーメイクは「NGな行動」ともされていた。

対して男子学生とみられるイラストには、「ハキハキ」と自己紹介の練習をする姿の横に、満足するような絵文字が。

水野さんたちは、就活マナーとして化粧を強要することへの疑問はもちろん、この女子学生の描かれ方が女性蔑視だとして、2021年3月に青山商事と、本記事を共同企画しているマイナビに抗議の要望書を送っている。

「男子学生と見える人物には話し方を問題にしているのに対し、女子学生と見える人物にはメイクの有無、つまり見た目を問題にしています。男女で比較の基準が異なっているんです。この根底にはジェンダーバイアスがあると考えざるを得ません」(水野さん)

メイクはジェンダー問わず利用できる手段へ

就活、青山、マイナビ

変更後のページ。

出典:青山商事ホームページ

その後も水野さんたちはSNSなどでも繰り返し改善を求めてきた。もちろん署名も提出済み。サイトに修正が加えられたのは、最後に水野さんが抗議した2022年2月28日から2日後の3月2日だ。

変更後の女子学生は眉がしっかり生えてクマも消え、表情もハツラツとしている。吹き出しのコメントも「なんかクマがある気がするけど、オンラインだしいっか〜」に変わり、絵文字もぞっとした表情から疑問を抱くような表情になっている。

説明文にあった「ノーメイクNG」の記述も削除されていた。

男性には元々あった自己紹介の練習に加えて、「ニキビが気になるからコンシーラーで消しておくか」というコメントが足されている。

「女性にのみメイクを強制し、それができない女性を馬鹿にするような表現から、メイクは『ジェンダーを問わず好印象を作る手段として利用できる』というメッセージに変わっています」(水野さん)

配色もジェンダーニュートラルに

就活、リクルートスーツ、青山

洋服の青山のリクルートスーツのページ。上段が2021年、下段が現在のもの。

提供:スマッシュ就活セクシズム

青山商事は今回の変更の意図について、

「今後も社会的な動向を踏まえLGBTQ+やジェンダー平等に関し、有識者とともに適切な対応を進めて参ります」

と回答した。

就活

水野さんがこれまでに集めたリクルートスーツに関連するパンプレット。男性=青、女性=ピンクの配色が目立つ。

提供:水野優望さん

他にも、洋服の青山がリクルートスーツを紹介するページは、2021年時点ではメンズは水色、レディースはピンクの配色でレイアウトされていたが、現在はメンズはグリーン、レディースはオレンジに変更されている。

水野さんによると、就活スーツや就活指南のカラーレイアウトは男性=青、女性=ピンクになっている企業が多い。「ジェンダーバイアスに苦しむ人にとっては、こうした配色も心理的負担になるため、他の企業にもぜひ見直して欲しい」(水野さん)という。

「リクルートスーツは痴漢にあいやすい」

就活

撮影:今村拓馬

水野さんたちが開設している相談フォームには、「就活スーツを着ていると痴漢に遭う確率が高い」という声も寄せられており、投稿者は「就活生であるということが一目瞭然で、時間に遅れることができない人」という印象を周囲に与えるからだと推測している。

ネットなどで大学入試センター試験日を狙って痴漢をすることをほのめかしたり、誘導するような卑劣な投稿が見られることと同じ原理だろう。

リクルートスーツを着た就活生の女性が性的に消費されているコンテンツもあります。リクスーも制服のように、性的消費の『記号』になってしまっているんです。

就活マナーとして女性に美しさを求める就活産業の姿勢は、こうした就活生の客体化に加担することでもあります」(水野さん)

就活、青山

撮影:竹下郁子

こうしたこともあり、就活産業の現在の対応は不十分だと水野さんは考えている。

「改善しているのは嬉しいですが、長い間放置されていたり、抗議した時の対応が不誠実な企業も少なくありません。

自分たちがしてきた過去をなかったことにしないで欲しい。何も言わずにサイトを修正して終わりではなく、自社の方針を明らかにして欲しいんです。何が良くなかったのか、今後は何を重視するのかなどのステートメントを出すだけでも、勇気づけられる学生は多いはずです」(水野さん)

批判の声を受け、着実に変わり始めた就活産業。「時代の流れ」「社会の動向」をその理由としているが、昔もその画一的な規範に傷つく人がいたことを忘れてはいけないだろう。いまだ沈黙する企業の動向も含めて、今後も注視したい。

(文・竹下郁子

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