アップルが本気なのは「Mac」「iPad」、それとも車か。WWDC22現地取材から見えてきた未来

WWDC Beyond

ゲストの石川温さん(写真右)と、司会の伊藤有(左)。

番組よりキャプチャ

“変化の兆し”を捉えて動き出している人や企業にスポットを当てるオンライン番組「BEYOND」。

第5回は、スマホジャーナリストの石川温さんが登場。6月6日(現地時間)に3年ぶりにオフラインで開催された開発者向けイベント「WWDC22」の注目ポイントについて伺いました。

6月7日(火)に放映した番組の抄録を、一部編集して掲載します。

番組アーカイブはYouTubeでご視聴いただけます。

撮影:Business Insider Japan

新型MacBook AirはProに近いデザインに

——WWDCでは、アップルの新しい半導体「Apple M2」と、M2を搭載する新しい「MacBook Air」が発表されました。石川さんは現地でAirを触っていますが、どのような特徴がありましたか?

石川温さん(以下、石川):これまでのMacBook Airは丸みを帯びた楔形のデザインが特徴でしたが、新型は四角くなっています

MacBook Proを薄くしたイメージに近いです。そのため、ProっぽさがありながらProと比べると軽くて持ち運びやすい印象です。

新型MacBook Air

新型MacBook Airのデザイン。

出典:アップル

——新色も出ましたが、実際に見ていかがでしたか?

石川:「ミッドナイト」はスペースグレイよりもかなり濃く、まさに漆黒という感じです。「スターライト」はシャンパンゴールドに近い色合いでした。

新型MacBook Air カラーバリエーション

新型MacBook Airは4色展開。

出典:アップル

——「Apple M2」について今分かっていることは何ですか?

石川:M1から少しずつスペックが向上しています。

おそらくM1の実装と同じ流れを汲むため、今回の新型MacBook Airを皮切りに、今後も搭載商品が増えていき、iPad Proなどにも搭載される可能性があると思います。

——MacBook Airで見るべきポイントは何ですか?

石川:Proと比較をすると搭載端子も少なく、スピーカーが付いていないため、そういった部分が必要ない方には良い商品ですね。

——Airは、以前からベストチョイスで「普通にMacを買うならこれがいい」と評されることも多いです。その位置付けは健在でしょうか?

石川:はい。「Air」というブランドの力もあり、幅広い層が気になる存在だと思います。

違和感のある立ち位置のMacBook Pro

新型MacBook Pro

13インチMacBook ProもM2搭載に。

出典:アップル

——M2を搭載したMacBook Pro 13インチの発表もありました。ただ、AirとProでヒエラルキーが分かりにくいと感じました。現地では、Proについてどのような反響がありましたか?

石川:正直、あまり注目されていなかったです。

円安で既存の商品も値上げしているため、どちらがお買い得なのかはまだ分かりません。

しかし、すでにチップ(M1)が製造できなくなりつつあり、13インチのProで早めにM2を搭載した、という事情はあるかもしれません。

——現地では「ProよりAirでしょう」という雰囲気だったということでしょうか?

石川:そうですね。

WWDCではiPadに重きを置いて語られるように

ステージマネジャ

iPadが本格的な仕事道具になる可能性もある。

出典:アップル

——iPadの新しいOS「iPadOS 16」は、何が大きく変わりますか?

石川:新機能の「ステージマネージャ」が搭載されます。画面の左側にアプリをまとめて表示でき、アプリの切り替えが容易になります。

iPadはこれまでも複数のアプリを同時に表示できましたが、ファイルのやり取りや切り替えがしづらく、直感的ではないことが弱点でした。

「ステージマネージャ」で、この弱点が改善されたと言えます。

ステージマネージャ

iPadOS 16の新機能「ステージマネージャ」。

番組よりキャプチャ

——iOSは以前からファイルの扱いが独特でしたが、今後も改善されていくと思いますか?

石川:改善されていくでしょう。iPadで仕事ができそうなのに、何となく操作の気持ち悪さというか、モヤモヤ感があって完全に移行できない人も多いと思います。

しかし、教育現場ではiPadが導入される事例もあります。

そうすると、最初に使うパソコン(デバイス)がiPadとなり、ファイルの扱いに関する不便さを感じない若い世代が、今後増えていくと思います。

そのため、今後は何年もかけてiPadに寄せて開発していくことで、iPadがメジャーなパソコンになっていく可能性もありえます。

——iPadを外部ディスプレイ接続したときに「拡張」表示もできるようになりますよね。

石川:はい。もともとM1をiPadに載せていたときから、スペック的にパワーを持て余している部分があったため、チップのポテンシャルを生かした進化だと言えます。

——PCのネイティブアプリよりもiOS向けアプリの方が多いこともありますよね。

石川:その通りで、iOSアプリには世界中に開発者がいます。iPad向けのアプリも増えればそれだけiPadの価値が上がるため、そこが勝ち筋とアップルは見ているのかもしれません

今回のWWDCもiPadOSの発表が最後でしたし、Macとのさまざまな共有機能もiPadがメインで語られるようになっていましたね。

車の情報も確認できるCarPlayの新機能

CarPlay

CarPlayもアップデート。

番組よりキャプチャ

——車載向けの「CarPlay」にも大きなアップデートがありましたね。

石川:今回の発表で個人的に一番驚いたのがCarPlayでした。今回のアップデートで、ディスプレイにメーターパネルや車の走行データなど、車の持つ情報も表示できるようになります。

日本のホンダや日産なども対応メーカーに入っていました。将来的に日本で買う車もこういったディスプレイになる可能性が十分あることから、衝撃的な発表だと思いました。

車メーカーのロゴ

アップルがキーノートで示した車メーカー。

出典:アップル

——これまで自動車メーカー側からも出さなかった情報をCarPlayで表示できるようになり、複数の対応車種が出ることから、アップルの本気を感じますよね。

石川:そうですね。

自動車業界では、(半導体メーカーの)クアルコムが自動車メーカー向けに自動運転や車内エンターテイメントをつくるためのプラットフォームを出しています。

それに、ホンダとソニーが提携するという話もあるため、その対抗馬として面白い存在になっていると思います。

今回はあくまでiOSの一つの機能として発表されてますが、今後、仮にチップがM4、M5のように発展したとき、車の中にもアップルの半導体が載り、「carOS」のようなものが載ることもあり得るでしょう。

——グラスコックピットにiOSのデザインが入っていくのがイメージできるというか。そのあと一歩まで来ているように感じます。

石川:アップルが車をつくり、それを日本で買うような将来のイメージはまだ難しいです。

ただ、普段乗っている車のディスプレイがiOSベースになるということは、数年以内ではあり得る話だと思いますね。

(聞き手・伊藤有、構成・紅野一鶴


BEYOND ユートピアアグリカルチャー

2022年6月15日(水)19時からは、ユートピアアグリカルチャー代表の長沼真太郎氏をゲストに迎えて「地球にも良い『おいしい』の未来」をお送りします。

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毎週水曜日19時から配信予定。ビジネス、テクノロジー、SDGs、働き方……それぞれのテーマで、既成概念にとらわれず新しい未来を作ろうとチャレンジする人にBusiness Insider Japanの記者/編集者がインタビュー。記者との対話を通して、チャレンジの原点、現在の取り組みやつくりたい未来を深堀りします。

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