キース・ラボア。
Keith Rabois
- リモートワークの文化に否定的な声を上げているのは、イーロン・マスクだけではない。
- キース・ラボアのような投資家も労働者はオフィスへ復帰する方がいいと述べている。
- ラボアは「意欲的な人はIRL(現実世界)で働きたいと思っている 」と最近プロトコルに語った。
リモートワークを好まないのはイーロン・マスク(Elon Musk)だけではない。多くの投資家も同じような考え方をしている。
Protocolのアリソン・レヴィツキー(Allison Levitsky)は最近、オフィスでの仕事を重要視するさまざまな投資家にインタビューをした。その中には、アメリカのベンチャーキャピタルFounders Fundの共同経営者で、ペイパル(PayPal)創業メンバー「ペイパルマフィア(PayPal Mafia)」としても知られる投資家のキース・ラボア(Keith Rabois)も含まれている。
2022年5月、ラボアは「IRLのスタートアップへの出資を検討中」とツイートした(IRLはIn Real Lifeの略で「現実世界」という意味)。彼はレヴィツキーへの追加コメントで、「IRLを主とするスタートアップだけに投資している」と述べている。
オフィス勤務の方針を強制することで人材を失うわけには行かない企業もあるという考え方について尋ねたとき、ラボアはそれに納得していなかったとProtocolは報じている。
「そのような人たちは雇わない。意欲的な人たちはIRLで仕事をしたがるものだ」とラボアはレヴィツキ―に話している。
パンデミックの間は従業員にリモートワークを許していた企業が今後の方針を決めようとしているこの時期に、ラボアはリモートワーク反対を表明した。しかし、労働者の多くはリモートワークの継続を求めており、ADPリサーチ・インスティテュート(ADP Research Institute)の調査によると、回答した労働者の64%が「雇用主からフルタイム勤務に復帰するよう求められたら別の仕事を探すことを検討する」と答えている。
Protocolは、「従業員にオフィス復帰を求めることは大したことではない」と主張する他の投資家たちにも話を聞いているが、すべての人が同意見ではない。この議論はTwitterで拡大し、経営者や投資家たちがこの問題をどのように見ているかを垣間見せてくれた。
「IRLのスタートアップにしか出資しない」というラボアのツイートに対し、世界最大級の口コミサイトYelpの共同創業者でCEOのジェレミー・ストッペルマン(Jeremy Stoppelmann)は、「ラボアのツイートは、『Windows95を搭載したスタートアップに出資したい』と言っているのに等しい」とツイートした。
ストッペルマンはまた、「従来のオフィスのOSは崩壊した。未来に生き、そしてリモートを完全に受け入れる時が来た」とも書いている。
ラボアはストッペルマンのツイッターにこう返した。
「私は成功する会社を最初からリモートで作れるとは思っていない。上場企業を経営する創業者で、リモートワークのポリシーを持つ人の多くも、話し合えば、私の意見に同意してくれるだろう」
Insider はラボアにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
ラボアのリモートワークに対する考えは、2022年6月初め、テスラ(Tesla)の従業員に対して、幹部社員が毎週40時間以上オフィスで過ごすことを求めるメールを送ったイーロン・マスクと同じものだ。
「テスラは、これまでも、そしてこれからも地球上のどの企業よりもエキサイティングで有意義な製品を生み出し、実際に製造していくだろう」とマスクは書いている。
「電話で話してもこれは実現できない」
ラボアとストッペルマンがTwitter上で交わした会話でも分かるように、大手企業の間でもオフィスに復帰するか、または完全にリモートワークにするかで意見が分かれている。
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)のような大手銀行やアップル(Apple)のようなテック企業は、少なくとも週のうちの何日かはオフィスで仕事をするように働きかけている。
アップルは2022年5月にオフィス勤務を復活させる予定だったが、新型コロナウイルスの感染者が増加したためにひとまず保留にすることになったと報じられている。同月には、アップルの機械学習ディレクターだったイアン・グッドフェロー(Ian Goodfellow)は、同社のオフィス復帰の方針を理由に退職している。
しかし、エアビーアンドビー(Airbnb)のCEOブライアン・チェスキー(Brian Chesky)はストッペルマンと同様に、オフィスの時代は終わったと話している。
チェスキーはTimeの「The Leadership Brief」のインタビューで、オフィスは「時代錯誤の形態」で、「デジタル化以前の時代のもの」だと述べている。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)