記者会見するアメリカ連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長。2022年5月4日。
Alex Brandon/AP Photo
- アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を0.75%引き上げた。これは、通常の利上げの3倍だ。
- この利上げは、1981年以降で最も過熱しているインフレを冷やすために、FRBが抑制策を強化したことを示している。
- これにより、住宅ローン、自動車ローン、カードローンなどの借入コストが高くなるだろう。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は2022年6月15日、インフレ抑制策を強化するため、1994年以来の大幅な利上げを決定した。
FRBは6月の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合終了後、政策金利を0.75%引き上げた。金利は現在1.50%から1.75%の間にあり、2020年初めのパンデミックによるクラッシュの直前に見られたレンジと同じだ。0.75%の引き上げは1994年11月以来で、政策当局のインフレ抑制に向けたより積極的な取り組みを示すものだ。
FRBは「委員会は、連邦政策金利の目標レンジを引き上げ、1.5%から1.75%にすることを決定し、目標レンジの継続的な引き上げが適切であると考えている」と声明で述べた。
この引き上げは、FOMCの投票権を持つ11人のメンバーのうち10人が承認し、カンザスシティ連銀のエスター・ジョージ(Esther George)総裁だけが反対票を投じた。これは、5月の会合で承認された0.5ポイントの引き上げと、引き上げが始まった3月の0.25ポイントの引き上げに続くものだ。
株式市場は、FRBが過度にアグレッシブであるとの懸念から株価が急落した6月13日の取引終了までに0.75ポイントの引き上げを織り込み済みだったと見られる。債券市場では7月のFOMCでも0.75ポイントの利上げが行われるとの見方が大勢を占めている。また、トレーダーの多くは、2022年末までに基準金利は3.25%から3.50%の間で推移するようになると見ている。
投資家は当初、6月の会合では0.5ポイント引き上げられると予想していたが、6月10日に発表された予想を上回るインフレ率によって、FRBはさらに迅速に行動するのではないかという懸念が高まっていた。
アメリカの消費者物価指数によると、5月のインフレ率は前年比8.6%増で、平均的な予想の8.3%を上回り、1981年12月以来最も速いペースで物価が上昇している。この上昇は、3月がインフレのピークであるという希望を消し去り、物価上昇問題の解決が予想よりも困難であることを示すものだ。
通常より大幅な利上げを支持したということは、FOMCはアメリカ経済がパンデミックの初期にFRBが採用した低金利によるサポートなしでも回復を続けられるほど強いものだと見ているのだろう。
この見通しはさまざまな指標によって裏付けられている。アメリカでは5月に39万人分の雇用が増加した。これは予測を上回っていて、完全な雇用の回復にさらに近づいている。5月の小売店やレストランでの消費はわずかに減少したが、依然として高い水準にある。失業保険の申請件数は金融危機以前の水準にとどまっており、解雇が広がっているわけではないことを示唆している。インフレはアメリカ人に重くのしかかっているが、景気回復はこの夏も続いていくだろう。
彼らはまた、最新の四半期経済予測も発表した。2022年の1年間のインフレ率の予想中央値は4.3%から5.2%に上昇し、FRBは前回の予想よりもインフレが冷え込みにくいと見ていることを示している。その後、物価上昇率は2023年に2.6%、2024年には2.2%に減速すると予想されている。
予測金利を示す「ドット・プロット」。
Federal Reserve
2022年の失業率予測の中央値は3.5%から3.7%に上昇した。その後、2023年に3.9%、2024年には4.1%に上昇すると見ている。この見通しは、FRBによるインフレ抑制の取り組みが労働市場に何らかの悪影響を及ぼすと考えられていることを示唆している。
また、FOMCは2024年からは利下げが行われるとの見通しを示している。各メンバーの予測する金利を示す「ドットプロット」では、基準金利が今後数カ月で中立レベルを超え、制限的な領域まで上昇することが示されている。2024年に利下げされるという予想は、インフレ率が持続可能な水準に戻れば、FOMCが金融緩和の立場に戻ることを示唆している。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)