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- 11ヶ月連続で、毎月400万人以上のアメリカ人が仕事を辞めている。
- その中には、「Financial Independence, Live Early」の頭文字をとった「FILE」というアプローチをしている人もいる。
- このような人たちは、「大退職」でも見られるように、お金よりも個人の充実感を優先している。
多くの人は定年退職を待ち望んでいるが、一部の労働者は、生活を楽しむために何十年も待ちたくないと考えている。たとえそれが仕事の内容を縮小し、より長い期間働くことを意味するとしても。
そこで、Financial Independence(経済的な自立)、Live Early(早く生きる)の頭文字を取ったいわゆる「FILE」のアプローチが登場する。FILE は、Financial Independence(経済的な自立)、Retire Early(早期退職)の頭文字を取った人気の「FIRE」ムーブメントのライバルとして注目されている。
FILEはLive, Learn, PlanとChildfree Wealthの創設者であるジェイ・ジグモント(Jay Zigmont)による造語で、経済的に自立し、仕事と退職後の生活のバランスを取ることができるようにする方法を意味している。
「FIREは仕事のオンオフスイッチのようなものだが、FILEは照明の調光スイッチだ」とジグモントは言う。
「必要なのは適度な量の仕事をすることであって、『25年間、自分の尻を叩いて働いて、(退職記念の)時計をもらって引退したい』ということではない」
ジグモントがFILEというアプローチを思いついたのは、彼のクライアントの多くに、子どもがおらず、子どもを持つ予定もなく、退職する予定もないという人が増えてきたことがきっかけだという。
「20代、30代の人々が、60代で引退をするのを待つのではなく、人生の中でどうやって仕事を変えていくかという話をしていた」とジグモントは語った。
このような人々にとって、FILEはより優れたアプローチになるジグモントは言う。FILEは、退職やその後のことだけに焦点を当てたものではないからだ。
「その核心は、意味のある仕事、つまり人生の意味を見つけることだ。例えば、仕事を辞めて、カップケーキの店を開きたい人にはそれができる」
人生や仕事にもっと意味を見い出したいと思っている働く人たちがいるというのは新しい話ではない。ここ1年で毎月何百万人ものアメリカ人が仕事を辞めている。よりよい仕事を求めているか、または給料よりも情熱が大切だと気付いたのだ。
アメリカ労働統計局(BLS)の最新データによると、2022年4月に440万人のアメリカ人が仕事を辞め、11カ月連続で毎月400万人以上が離職しているという。
そしてこの波はすぐには収まらないかもしれない。調査会社ガートナー(Gartner)の報告書によると 年間離職率は「2022年中に20%近くに跳ね上がりそうだ」という。パンデミック以前は仕事を辞める人は年間平均3190万人だったが、2022年は3740万人になると予想されている。
仕事を辞めるのと同じように、FILEのアプローチを取ることにはチャレンジが伴う。ジグモントは、FILEのアプローチは誰にでも適用できるわけではないことも指摘している。例えば、子どもがいる人々だ。
「『FILEのスタイルで生活できる』という30代の親を見たことがない」と、ジグモントはクライアントについて語った。
「そうなるのは、人生の後半かもしれない」
FILEのアプローチは人によって異なるが、大切なのは「快適な生活を送るために、十分なお金を稼ぐことと毎日の仕事を楽しむことの適切な組み合わせを見つけること」だとジグモントは言う。
例えば、人によっては退職金口座を持たないファイナンシャルプランに変更したり、退職前に老後のための貯蓄を使うと、ジグモントは説明する。FILEのアプローチはよりシンプルなライフスタイルを目指す人たちにもおすすめだ。コロラド州でキャンピングカーで暮らすジグモントの2人のクライアントのように、個人的にやりがいのある仕事やキャリアを追求している人もいる。
「もし、あなたが『早く自分の人生を生きるようになりたい』と決断したなら、より快適な退職後の生活を犠牲にするかもしれない」とジグモントは言う。
「FILEのコンセプトには、キャリアアップを少し諦めることになるかもしれないが、よりいい人生のためにというもうひとつの意味も込められているのだ」
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)