退屈な仕事は、従業員を退職に追い込むことがある。
bymuratdeniz/Getty Images
- アメリカ労働省によると、2021年は過去最多となる4800万人のアメリカ人労働者が仕事を辞めた。
- しかし、ビジネスリーダーたちは従業員を退職に追い込んでいる要因を見落としているかもしれない。それが「退屈」だ。
- Automation Anywhereの幹部は、単純作業を自動化することで、労働者がより有意義な仕事に集中できるようになると語っている。
コンピューターは、複雑な計算問題や難しい雑学的な知識の検索において、人間に勝ることはよく知られている。しかし、機械が得意とすることには「飽きない」というものもある。
仕事をしたことがある人なら誰でも、一度は辞めたいと妄想したことがあるだろう。特に、単調な作業が続く仕事ではなおさらだ。2022年初めにマイクロソフト(Microsoft)が世界の3万人以上の労働者を対象に行った調査によると、10人に4人が2022年に転職を考える可能性があることが判明した。また、アメリカでは、経済の先行きが不透明であるにもかかわらず、労働者は転職の意思を表明している。
マッキンゼー(McKinsey)のデータによると、過去2年間、雇用主は従業員のメンタルヘルスや福利厚生などにかつてないほどの資金を投入してきたにもかかわらず、いわゆる「大退職(Great Resignation)」が起こっている。ビジネスリーダーは、新型コロナのパンデミックに立ち向かう努力をしているが、問題を解く重要な鍵を見落としているかもしれない。それは、退屈な仕事が人生全体の満足度に与える悪影響だ。
クラウドでの自動化サービスを開発するAutomation Anywhereのチーフ・ピープル・エクスペリエンス・オフィサーを務めるナンシー・ハーグ(Nancy Hauge)によると、職場の退屈をなくし、従業員の燃え尽き症候群を減らすには、自動化が鍵になると述べている。
ニューズウィークの「2021年最も愛される職場」にランクインした同社が、優秀な人材を引き付け、定着させるための仕事づくりをどのように支援しているかについて、ハーグに話を聞いた。
「退屈はモチベーションの低下につながる。人はやりがいがあり、意味のある仕事をしたいと思っている」とAutomation Anywhereのチーフ・ピープル・エクスペリエンス・オフィサーを務めるナンシー・ハーグは語った。
Automation Anywhere
職場の退屈を解消する
退屈な仕事が従業員を退職に追い込むことはよく知られている。世界的な教育テック企業であるCengage Groupの新たなレポートによると、2021年に退職した労働者の83%が自分の役割に進歩が感じられないと述べている。これはハーグにとって驚くような結果ではなかった。
「大退職は、よりやりがいのある仕事を求める労働者によって引き起こされている」とハーグは言う。退屈はモチベーションの低下につながる。人は意義のある仕事をしたいと思っているのだ。
Gartnerの調査によると、労働者を退職に追い込む要因はさまざまだが、パンデミックをきっかけに、多くの人は、何が自分を幸せにしてくれるのか、何が自分を本当に満足させてくれるのか、ほんの少しの見返りのためにどれだけ自分を犠牲にしてきたのか、という問いかけをするようになったという。
このように人々が仕事について考え直すようになったことが、2021年に4780万人(アメリカ労働省統計)という過去最多のアメリカ人労働者が退職した一因となっているようだ。
ハーグは、労働者が自らの存在意義に対する危機感を募らせていく状況を目の当たりにしてきた。ウェルネスを向上させるプログラムを実施しても、退屈な仕事によって引き起こされる燃え尽き症候群を回復させることはできない。だが、退屈な仕事を自動化することは可能だと彼女は言う。
これまでは、仕事とはある程度根気強く耐える必要があると考えられていたため、ほとんどの人が日々の仕事に没頭することができていた。生計を立てる必要がある以上、退屈な仕事に従事する多くの人にとって、「辞める」と言うのは妄想でしかなかったのだ。しかし、もうそんな時代ではない。
「未来の仕事をデザインする上で、人間が何をすべきか、何を自動化すべきかを考えなければならない」とハーグは言う。
従業員の燃え尽き症候群を減らす
Automation Anywhereは、労働者の雑務を減らす取り組みを行っている。ナイキ(Nike)、ベライゾン(Verizon)、スイスの銀行UBSなどは、同社が開発したRPA(ロボット・プロセス・オートメーション:ロボットによる業務自動化)ソフトウェアを採用している。これは「スマートボット」というシステムを用い、仕事上の多くのプロセスを自動化できるようにするものだ。
自動化によって労働者に時間が生まれ、「より魅力的な体験に集中できる」という。
長い間、労働の自動化が起こると最終的にはロボットに仕事を奪われると恐れられてきた。しかし、労働者に対する脅威は誇張されすぎていることがデータによって示されている。世界経済フォーラムによると、ロボットや人工知能(AI)などのテクノロジーは、人から仕事を奪うのではなく、少なくとも1200万人以上の雇用を創出するという。
変わるのは仕事の性質とこれらの仕事をこなすのに必要なスキルだ。手作業の需要は何十年も前から減少しており、自動化が進めばこの傾向はさらに進むだろう。
「基本的な分析をスプレッドシートに書き込む必要がないようなツールが職場から与えられたら、つまりそのような作業をデジタルアシスタントが行えるようになったら、私はより満足してさらに生産的になるだろう」とハーグは述べた。
手間のかかる作業が自動化されることで、従業員はよりやりがいのある仕事に打ち込めるようになると、ハーグは言う。ウーバー(Uber)での注文や、ナビゲーションアプリの使用、映画のストリーミング再生をしたことがある人は、コンシューマー向けAIの利便性をよく理解しているだろう。仕事の自動化も同じだという。
「私は40年のキャリアがあるが、今の世界が最もスリリングだ」と彼女は言う。
「自動化によって私は解放され、何年も『もしも』のリストに載せていたことに取り組めるようになった」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
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