ネットゼロ・トラッカーによると、世界の大手企業の3分の1以上がネットゼロの目標を掲げている。
Michael Sohn/AP
- ネクステラ・エナジーは、オフセット(相殺)を利用しても温室効果ガス排出量がゼロになるわけではないことを示すため、「リアルゼロ」という用語を導入した。
- 同社は太陽光エネルギー、蓄電池、グリーン水素で温室効果ガスの削減を目指す。
- オフセットの利用を避けることを目標にするべきだと主張する環境活動家もいる。
企業が使う気候関連の用語リストに新しい言葉を加えよう。「リアルゼロ」だ。
この言葉は、ネクステラ・エナジー(NextEra Energy)が2022年6月14日の発表で使用したもので、同社は太陽光エネルギーと蓄電施設の大規模な拡充に加え、天然ガスを自然エネルギーから作られる水素(グリーン水素を呼ばれている)に置き換えることで、2045年までに温室効果ガス排出をほぼゼロにするという。
フロリダを拠点にアメリカ全土で電力・天然ガスの事業を展開する同社は、ネットゼロの目標を掲げる多くの競合他社と異なり、目標達成のためにカーボンオフセットの購入や炭素固定技術に頼ることはないという。
「リアルゼロは他社から見ると厄介だと思う」と自然保護団体シエラクラブ(Sierra Club)の「ビヨンド・コーラル・キャンペーン」のフロリダでのシニア・キャンペーン担当者、スザンナ・ランドルフ(Susannah Randolph)は述べた。
「スイスチーズのようにたくさんの抜け穴があるネットゼロとは一線を画すものになることを期待している」
ランドルフによると、その中の穴の1つがカーボンオフセットだという。カーボンオフセットは森林維持や再生可能エネルギーのようなプロジェクトにお金を出すことで、自社では削減できない温室効果ガス排出の埋め合わせをするものだ。しかしこれには多くの批判があり、環境活動団体は企業に対し、オフセットの前にまず自社の運営での炭素除去を求めている。
ネットゼロ・トラッカー(Net Zero Tracker)によると、世界の大手企業の3分の1以上がネットゼロの目標を掲げている。そのうち40%は目標達成のためにカーボンオフセットを利用する意向で、明確にそれを行わないとしている企業は2%未満だ。つまり約60%の企業はどちらでもない。
ネクステラ・エナジーのクリーンエネルギー部門であるネクステラ・エナジー・リソーシズ(NEER)のレベッカ・クジャワ(Rebecca Kujawa)CEOは、同社はカーボンフリーの電力を実現するためのテクノロジーや政府のインセンティブがあるため、オフセットは必要ないと話した。
「リアルゼロが可能だとわかったら、それを目標にする方がいい」と彼女はInsiderに語った。
だがネクステラ・エナジーの計画は、発展途上のグリーン水素のテクノロジーに依存している。この代替燃料は燃焼時に温室効果ガスを排出しないので需要が伸びている。だが化石燃料から作られた水素と競合するにはまだ価格が高すぎる。
ネクステラ・エナジーの排出量の大部分は、フロリダ州最大の電力会社で主に天然ガスを取り扱うフロリダ・パワー・アンド・ライト(Florida Power and Light)によるものだ。今後20年間で太陽光パネルと蓄電池が導入されるが、2040年までグリーン水素による運転は行われないとクジャワは語った。それまでは再生可能エネルギーの拡大でコストダウンを図り、それによりグリーン水素が安くなるだろうと彼女は付け加えた。フロリダ・パワー・アンド・ライトは同社のオキチョビーの施設でグリーン水素の可能性を証明するためのパイロットプロジェクトを行っており、2023年に稼働予定だ。
「グリーン水素の未来はある。だが大きな疑問もある」と、エネルギー政策研究所の調査コミュニケーションマネージャーのアリッサ・シェーファー(Alissa Schafer)は語った。
「どのくらい早くスケールアップするか、どのくらい環境によいかにかかっている。最悪の場合、グリーン水素が天然ガス施設の建設を正当化することになる」
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)