変化に負けない会社はつぶれない。創業から117年のコクヨ、5代目社長が語る"長く持続する企業"の条件

コクヨの前身「黒田国光堂」の洋式帳簿(昭和初期) 。戦前の洋式帳簿はその店や会社の格を象徴するアイテムだった。 背皮にはインド産の羊皮(ヤンピー)を、背文字には本金箔を使用。 小口に施す色鮮やかなマーブルも帳簿の品格を高めるのに一役買っていた。(「コクヨクロニクル」より)

コクヨの前身「黒田国光堂」の洋式帳簿(昭和初期) 。戦前の洋式帳簿はその店や会社の格を象徴するアイテムだった。 背皮にはインド産の羊皮(ヤンピー)を、背文字には本金箔を使用。 小口に施す色鮮やかなマーブルも帳簿の品格を高めるのに一役買っていた。(「コクヨクロニクル」より)

コクヨ提供

1905年創業の老舗文具・家具メーカーのコクヨはキャンパスノートなどで文房具メーカーのイメージが強いかもしれませんが、売上高の半分近くはオフィス家具などの空間事業が占めています。

コロナ禍でテレワークやワーケーションの取り組みが広がり、オフィスを縮小したり、テナントを解約する動きも出ている中、2021年に東京・品川のオフィスを全面改装しました。

「企業オフィスはどうあるべきか」「社員にとって『よきオフィス』とはどうあるべきか」を自ら問いかける意欲的な「実験」を進めています。

5代目社長の黒田英邦氏は、創業からの歴史をふまえつつ「(コクヨの事業は)人の生活と密接に関わる部分が大きい。社会が変化すれば影響を受けることは当然のこと」と語ります。

創業120年を目前に控える中でコロナ禍で考えたこと、時代・社会の変化との向き合い方を黒田社長に聞きました。

特集企画「だから『老舗』は生き残る」:戦争、災害、不況、疫病…日本の老舗は数々の危機をどう乗り越えてきたか。これからの時代「守るべきもの」「変えるべきもの」は何か。伝統企業のトップやキーパーソンに聞きます。

働き方・学びの環境は、コロナ禍前から変化していた。

黒田英邦(くろだ・ひでくに):1976年、兵庫県芦屋市出身。甲南大学、米ルイス&クラークカレッジ卒。2001年コクヨ入社。コクヨファニチャー社長、コクヨ専務などを経て2015年より現職。曽祖父はコクヨ創業者の黒田善太郎氏。

黒田英邦(くろだ・ひでくに):1976年、兵庫県芦屋市出身。甲南大学、米ルイス&クラークカレッジ卒。2001年コクヨ入社。コクヨファニチャー社長、コクヨ専務などを経て2015年より現職。曽祖父はコクヨ創業者の黒田善太郎氏。

撮影:小林優多郎

── 黒田さんは今回のコロナ禍をどう捉えていますか。

みなさんにとって、コクヨといえばステーショナリー(文房具)の印象が強いと思うのですが、実は「ファニチャー事業」(オフィスの家具や空間設計)も担っており、売上高で見ると半分近くはこちらが占めているんですね(2021年度は45.4%)。

日本社会の働き方や学びをめぐる環境は、コロナ禍以前から変化は始まっていました。副業を認める企業が増えたり、ペーパーレス化も進んだ。少子化も止まらず、教材のデジタル化も発展しています。

そこへきてのコロナ禍でリモートワークやオンライン学習も選択肢として当たり前になりました。

ただ、社会の変化にコクヨとしてどうアプローチするか。特にオフィスの在り方はコロナ前から考えていたことだったんです。

2021年度の売上高構成

2021年度の売上高構成

コクヨ公式サイトより

── 2021年2月に発表した長期ビジョンでは「社会の変化により、コクヨを取り巻く事業環境にも変化が生まれている」「しかし、コクヨはその変化に追随できていない」と危機感が記されていました。

たまたまコロナ禍と重なりましたが、社会の働き方が変わっていく中、コクヨでは4〜5年ほど前から「これからの働き方はどうなるんだろう」という問題意識を持っていました。

これまでのオフィスは各階ごとで部署が分かれていたり、一方でバラバラに散らばっていた各部署を広いワンフロアに集約することが主な動きでした。

その上で限られた空間の中で会議室をつくったり、コミュニケーションスペースをつくったりするためにレイアウトを区切ったりしていました。

ただコロナ禍を経て、朝9時に出社して夕方5時に帰る……というライフスタイルは、もはや過去のものとなりつつあります。

自宅やオフィス以外でも働く時間は増えている。副業も当たり前になり、コロナ禍で在宅勤務も進みました。

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