収益優先、レイオフは一回のみ、そしてプラス思考で。ITバブルを生き抜いた投資家からの5つのアドバイス

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ヨーロッパのシードに特化したVC「マキvc」のマネージングパートナー、イルッカ・キヴィマキ 

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イルッカ・キヴィマキ(Ilkka Kivimäki)が最初に興した会社、PCスーパーストア(PC Superstore)を売却したのは1999年だった。ITバブルのさなかエグジットに成功すると、彼はすぐに別の会社を立ち上げた。

キヴィマキが次に設立したのはワイコム・コミュニケーションズ(Wicom Communications)という小規模な通信会社向けにビジネスコミュニケーションやコンタクトセンターのソフトを提供する会社だ。しかし、ワイコムを創業後ほどなくして株式市場が暴落した。

「ITバブルが崩壊し、資金調達はとても難しくなりました」と、現在はヨーロッパのシードに特化したベンチャーキャピタル(VC)、マキvc(Maki.vc)の共同創業者兼マネージングパートナーを務めるキヴィマキは語る。

「それでも、バブル崩壊をなんとか克服し、1200万ユーロ(約17億円、1ユーロ=142円換算)の資金を調達できたのですが、その2カ月後に9.11が起こり、全てが悪い方向へ向かっていきました」と話す。

インターネット企業は1990年代後半にITバブルを引き起こし、投資家は将来の収益性を見込んで資金をつぎ込んだが、実際には多くの企業で業績にはつながらなかった。

バブルは2001年に崩壊し、市場全体が低迷。インテルやオラクルなど世界最大のハイテク企業の評価額も大幅に下落した。現在、ハイテク株が大打撃を受けている状況は、2001年の株式市場の崩壊に酷似していると指摘するアナリストもいる。

ITバブル崩壊から6年後の2007年、キヴィマキはワイコムをSAPに売却したが、当時は見込み顧客企業が破綻したため事業の成長軌道の修正、レイオフ、ビジネス戦略全般の見直しなどで苦しんだ。

「あまりにも不安で、自分が心臓発作を起こしていないかと、たびたび医者に診てもらいに行かなければなりませんでした」とキヴィマキは振り返る。

現在、迫り来る不況を背景に、成長よりも利益を優先しようとしているスタートアップにとっては、資金調達がより困難な状況だ。仮想通貨やデリバリーサービス、フィンテックなど、さまざまな業界のスタートアップは人員を削減し始めている。ITバブルの崩壊を的中させたベテラン投資家ジェレミー・グランサム(Jeremy Grantham)は、株価は全体で40%程下落すると予測している。

そんなテック業界で不確実性が極めて高い時代を乗り越えてきた3人の人物に、自身の経験に基づいて、スタートアップが不況を乗り切るための5つのアドバイスを語ってもらった。一人は前述のキヴィマキ、そして他の2人は、ジー・フェルナンド(Gi Fernando)と、スティーブン・マッキンタイア(Stephen McIntyre)だ。

フェルナンドはいくつもの事業を立ち上げた起業家であり、気候変動の取り組みを推進する非営利団体アクセラレーター、スバック(Subak)の会長だ。2008年のリーマンショックの時、2社目に起業したソーシャルメディアエージェンシーのテックライトンメント(Techlightenment)を経営していた。

マッキンタイアは、VCのフロントライン・ベンチャーズ(Frontline Ventures)のパートナーで、ITバブル崩壊時、エリクソン(Ericsson)でエンジニア職に就いており、5万人の人員削減を生き抜いた経験を持つ。

1. 厳しい現実を直視する

「難しいことですが、まずは厳しいぐらいに正直な見通しを立てるべきです」とキヴィマキは話す。

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