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- 心理学者たちは、ストレスのサインとそうした行動が周囲からどう見られているかを調べた。
- その結果、ストレスを感じているとはっきり示す人の方が、同僚からは好感が持てる人物だと見られていることが分かった。
- オープンな人ほど、協力的な印象を与える可能性があると、研究者らは指摘している。
人から嫌われたい人などいるだろうか? 人から好かれる人は信用され、友人に恵まれることが多い。
職場であれば、それは同僚とより良い関係を築いたり、組織の中で昇進する助けにもなるだろう。
好感度を上げる方法はいろいろある。自分がストレスを感じているとオープンにすることも、意外に思うかもしれないが有効だ。
一般的にわたしたちはストレスを感じると爪を噛んだり、顔を触ったりといった行動をしがちだ。
こうした行動を周囲はどう受け止め、どう反応しているのか調べたのがノッティンガム・トレント大学とポーツマス大学の心理学者たちで、その結果は学術誌『Evolution and Human Behavior』に掲載された。
実験では、31人の被験者に短時間で3分のプレゼンテーションと模擬面接の準備をするよう指示し、その後、難しい数学のテストを受けてもらった。その間、被験者のリアクションは全て撮影した。
それから被験者にアンケートに答えてもらい、コルチゾール(ストレスを受けると分泌が増えるホルモンの一種)の値を確認するために唾液のサンプルを集めた。すると、当然ながら一部の被験者はストレスを感じていた。
次に、133人の別の被験者に先ほど撮影した動画をランダムに見せ、その行動から動画に登場した人がどのくらいストレスを感じているように見えたか尋ねた。
同時に、動画に登場した人についてどのくらい好感を持ったか、100点満点で点数をつけてもらった。
その結果、ストレスを強く感じていると申告した人ほど、周囲からもストレスを強く感じているように見られていたことが分かった。そして、興味深いことに、強いストレスを示していたり、少なくともそう見えた人は、好感度も高い傾向にあった。
それはなぜなのか、研究者も理由はよく分かっていない。ただ、自分の「弱さ」にオープンであるように見えることが周囲と協力する用意があるように見える可能性を彼らは指摘している。
理由は何であれ、今回の研究はストレスを感じていると明かすことがアドバンテージになる可能性を示唆している。
「人は相手の弱みに付け込むものだとわたしたちは考えがちですが、自分の弱い部分を見せることでサポートや社会的な絆を促進するのです」とノッティンガム・トレント大学の心理学部の特別研究員ジェイミー・ホワイトハウス(Jamie Whitehouse)氏はThe Conversationに書いている。
ストレスにもメリットが?
ストレスにもメリットがあるかもしれないと示唆した研究はこれが初めてではない。
適度なストレスは仕事のモチベーションを上げ、人々が自分の役割を果たすよう後押しすることが研究で分かっている。
また、ストレスフルな状況で引き起こされる「闘争・逃走」反応をネガティブなものでなく、楽しいものだと捉え直すことで、困難な状況を乗り越える助けになると示唆する研究もある。
もちろん、だからといって、わたしたちはストレスを広く受け入れるべきだということではないし、好感度を上げるための手段としてストレスを助長すべきだということでもない。ストレスが慢性化すると、バーンアウト(燃え尽き症候群)や心身ともに悪い結果につながる恐れがある。
今回の研究結果がわたしたちに伝えているメッセージは、就職面接や発表、仕事、日々の生活があなたにストレスを感じさせているなら、口に出そうということだ。
ホワイトハウス氏も書いている。
「行動を通じて正直かつ自然なコミュニケーションを取ると、他者に良い印象を与える可能性があります」
[原文:Showing that you're stressed may make others like you more, psychologists say]
(翻訳、編集:山口佳美)