子どものはじめての仕事は、お金の管理について親が大切なことを教える機会になります。
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- 夏休みや放課後の仕事は、貯蓄を含む、子どもたちのお金の管理スキルを教えるための素晴らしい方法となる。
- お金を管理できるようになる前に、子どもはお金を得る方法を知らなければならない。
- 子どもたちが仕事を通じて身につけるスキルと労働倫理は、子どもたちが成長してもずっと残っていくものになる。
子どもたちにとって、夏は年に一度の通過儀礼だ。教室と日々の授業に別れを告げ、数カ月間学校から解放されるその時期を彼らの多くが待ちわびる。その夏の時間を有効に使ってお金をもらえる仕事をしてみれば、生きるうえでとても大切なスキルを学べるかもしれない。
時間を守ること、信頼を得る資質、人脈づくり、コミュニケーション、問題解決、金銭管理、金融リテラシー(日々の家計管理に必要な知識や判断力)。子どもが自分でお金を稼ぐようになると、これらすべてにかかわる能力が強化されていく。
家庭の外で他人と一緒に働くことは、さまざまな環境で人付き合いをする機会を与えてくれる。気難しい同僚、厳しいスケジュール、顧客の満足度など、対処しなければならないこともいろいろと出てくるかもしれない。
誰かのもとで働くにせよ、路上に屋台を設けて自らレモネードを売るにせよ、親であるあなたが子どもに社会人への第一歩を踏み出すことを導けば、仕事の世界を実地で学べる大きなチャンスとなる。その始め方について説明しよう。
稼ぐことを学ぶ
自分のお金で何かを買うという経験は、どんな子どもにとってもその達成感とともに記憶に残るものだ。
一方で、働くことによってお金の価値を深く理解できるようになり、仕事で成功を収めるために必要な金融リテラシーを養う基盤が築かれる。お金の管理を学ぶ前に、まずは稼ぎ方を知る必要があるのだ。
子どもがお金を稼ぎ始めたら、せっかく稼いだそのお金を無駄遣いしないように親が使い方や貯め方を指導しよう。
これをきっかけに、大きな目標を達成する後押しをしたり、高い買い物や特別な買い物に向けた計画を立てさせてみたり、次の給料日までのやりくりの方法を考えさせるのもいいだろう。
「お金の教育に力を入れるということは、キャリアを築いて生涯にわたりお金を稼ぎ続けるための準備を若い人たちにさせるということです」と、若者の金融リテラシー向上に取り組む非営利団体ジャンプスタート・コーリション(Jump$tart Coalition)の代表兼CEOを務めるローラ・レヴィーン(Laura Levine)氏は言う。
「ただし、それは実際に練習することから始まるのです」
自分でお金を稼ぐことで、お金に関する教えが実生活に即したものになる。しかし、そのためには努力が必要だとレヴィーンは指摘する。
貯蓄、支出、寄付にお金を振り分ける方法について、親は子どもとしっかり話し合うべきだという。
クイックヒント:例えば、給料をもらったら、貯金、自分の買い物、寄付の3つにお金を分けるよう子どもに促そう。寄付は募金箱にお金を入れるなど簡単なものでもよい。
一生使えるスキルを身につける
子どもが仕事を通じて身につけたスキルは成長しても失われない。堅固な労働倫理、自信、人と協力する力がうまく育てば育つほど、将来的に質の高い仕事に就いて多くの収入を得る可能性が上がる。
ティーンが就く最初の仕事は、一生夢中になれるものを見つけたり、オフィスやショッピングモールよりも屋外で働くのが好きかどうかなどを知るのにも役立つと、『Beyond Piggy Banks and Lemonade Stands: How to Teach Young Kids about Finance(ブタの貯金箱とレモネード屋台の先へ:子どもに金融を教える方法)』の著者で、コパー・バンキング(Copper Banking)の金融リテラシー担当エグゼクティブディレクターであるリズ・フレイザー(Liz Frazier)氏は言う。
「大切なのは、本人の興味や才能に合った仕事をさせることです。いきなり憧れの仕事に就くのは難しいでしょうが、初めての仕事なら良い経験になることが理想です。時間を守る、客や同僚に敬意を払う、一生懸命働くなど、仕事をうまくやり遂げるための基本を教えましょう」
子どもの年齢や成熟度、家族のニーズ、働きやすさに応じて、若者にもできる仕事は数多くある。
クイックヒント:例えば、米国労働省が運営するウェブサイト「CareerOneStop」には検索機能があり、若者向けの仕事、キャリアアドバイス、就業支援などを自分の居住地域に絞って探すことができる。
幼い子どもは、家の中での手伝いや近所の人が関わる仕事から始めよう。10代前半の子どもには、芝生の手入れ、犬の散歩、手作りのものの販売などがよいだろう。それより上のティーンなら小売店やレストランなど一般的な仕事にも挑戦できる。
ここからは年齢別にアイデアを詳しく紹介していく。
14歳以上のティーン向けの仕事
米国では16歳になると多くのティーンが車を運転し、年下の子どもたちよりも長時間かつ遅い時刻まで働くことができる。ただし、14歳から17歳の若者が就けるのは労働省が危険でないとみなした仕事に限られる。
14歳と15歳に対しての制限は16歳と17歳よりも厳しい。しかし農作業には例外が認められる。責任が増え、自分でお金を稼ぐことによって自立度が高まるのは高校生にとってもプラスだろう。
クイックヒント:10代のための求人情報サイト「Hireteen」は多くの雇用主情報を掲載し、12歳から19歳向けの仕事に関するアイデアを紹介している。
1. インターンシップ
インターンシップとは実際の就労体験の提供を目的とした短期間の仕事で、有給のものも無給のものもある。学校、非営利団体、地元の企業、市役所などに問い合わせるか、インターンシップ情報サイトを利用してみよう。
2. キャンプ指導員
あなたの子どもは、スポーツ、アウトドアレジャー、演劇、学問などに情熱を持っているだろうか。
それなら、そうした関心に沿ったテーマのサマーキャンプを探してみよう。それらキャンプがハイティーンの若者を雇って、子どもたちのアクティビティの計画を手伝わせたり監督させたりすることは多い。
3. レストランでの仕事
飲食店には、受付、ホールでの接客、食器の片付け、皿洗いなど、ティーンにもできる仕事がいくつもある。OJT研修があって無理のないスケジュールを組める店を探そう。
4. コーヒーのバリスタ
これはテンポの速い仕事だ。同僚や客とうまく接する対人スキルに加え、細部にまで気を配る要領の良さが求められる。
5. ベビーシッター
ベビーシッターは幅広い年齢のティーンに適した仕事だが、10代後半なら長時間かつ遅い時刻まで子どもの世話ができる。基本的な応急処置などを教えるアメリカ赤十字のベビーシッター・クラスを修了すれば、この仕事にふさわしい資質の証明にもなる。
6. 芝生の手入れ
ティーンにとって芝生の手入れは、初めは家族や近所の人のために行い、経験と信頼を得たら規模を広げていくことのできる仕事だ。仕事ごとに報酬を交渉するやり方を学び、個人事業のやりがいも経験できる。屋外で働けることも特徴だ。
11歳から13歳までの子ども向けの仕事
10代前半の子どもが一般的な雇用形態で働ける選択肢は限られているかもしれない。それでも、創造力と少しの努力をもってすれば有意義な機会が見つかるだろう。米国では、州法と連邦法により、就労時間や時間帯、就ける仕事の種類は制限されている。
1. 家庭教師
特定の教科がとても得意だったり、楽器の才能があったりするなら、クラスメイトや年下の子どもたちの家庭教師をさせることを検討してみよう。すでに備わっているスキルをさらに伸ばせるうえ、そのノウハウを必要としている人に手を貸せる仕事だ。
2. ペットの世話
犬の散歩代行、ペットシッター、地元の動物保護施設での手伝いなどは、動物に関わるのが好きな若者にはうってつけの選択肢だ。
忙しい飼い主にとって、飼い犬に運動をさせてくれる人がいるのはありがたいものだ。近所の人に声をかけたりチラシを配るなどして、こうしたサービスを提供できるという情報を広めよう。
3. 芝生の手入れ
落ち葉かきや草むしりなど、きれいで清潔な庭を保つ仕事に休みはない。自宅や近所の家の庭仕事をすることで、子どもは自分のビジネスを構築できる。
前もって報酬を交渉することが重要だが、時間通りに現場に来てすばらしい仕事をすることも当然ながら大切だ。懸命な働きは、リピート依頼が来たり他の人に紹介してもらえるなどの形で報われる。
4. ベビーシッター
ベビーシッターへの需要は常にあり、10代前半の子どもたちも有力な働き手となる。親が家で他の仕事をしている間に世話をするのでも、短時間なら1人だけで面倒を見るのでも、ベビーシッティングはお金を稼ぐのにとてもよい手段となる。
5. Etsyでストアを開く
誰でもハンドメイド作品を販売できるウェブサイト「Etsy(エッツィ)」で自分が作ったものを販売することで、子どもは起業家としてのスキルを発揮できるかもしれない。
13歳から17歳がこのサイトを利用するには保護者の監督と指導が必要だが、アクセサリー、衣類、アート作品、石鹸など、自分でものを作る情熱と才能を小さなビジネスに変える、楽しくて実りある方法となりうる。
6. 手作りお菓子の販売
あなたの子どもに料理への愛やお菓子作りの才能があるなら、その腕でちょっとした収入を得ることもできる。少量を作って友達や家族に売ってもいいし、地元のファーマーズマーケットに出店してみてもいいだろう。注意すべき制限や得なければならない許可などがあるかどうか、地元の役所に確認しておこう。
10歳以下の子ども向けの仕事
小さな子どもでも、家庭内の雑用や近所の人の手伝いなどができる。年上の子たちよりも指導や監督は必要だが、責任を持って仕事をし、それでお金を稼ぐという経験は子どもにとってプラスになる。
1. レモネード屋台
子どもが自宅の前に屋台を開いてレモネードを売るというのは、アメリカで古くから続く伝統だ。親からの指導のもと、材料費はいくらかかるのか、利益を出すためにはいくらで売るべきか、客への接し方やおつりの計算などを学ぶことができる。許可が必要かなどの規制については地元の役所に確認しよう。
2. 家事
やらなければならない家事は残っていないだろうか。お金を稼ぐ手段としてそれらを子どもに与えてはどうだろう。靴下を両足分そろえる、食器の整理、窓拭きなど、子どもが家周りで取り組める仕事を探し、働きに応じた報酬を支払おう。
3. 芝生の手入れ
草むしりや落ち葉かきは年齢の低い子どもにもできることだ。子どもが屋外で過ごすきっかけになるうえ、庭もきれいに保たれる。親はサポートと褒め伸ばしをしよう。
4. ガーデニング
子どもに家庭菜園を作らせて世話をさせよう。収穫できるまで育ったら、サラダの材料としてその野菜を子どもから買ってあげよう。
花畑を作る場合、切っていいほど大きく花が咲いたら花束を買ってあげよう。植物の成長について知るとともに、何かの世話をして育てるという責任も学ぶことができるだろう。
青少年雇用のルールと規制
アメリカの州法と連邦法は、各年齢の青少年が働ける時間の長さ、時間帯、仕事の種類を定めている。
これら規制の目的は彼らをさまざまな危険や搾取から守ることであり、14歳以上の未成年に適用される。
ただし農作業は例外とされ、12歳と13歳の子どもでも親の許可があれば農業に従事できる。11歳以下の子どもも家族が経営する農場でなら働ける。
幼い子どもが正式に「雇用」されることはできないが、ベビーシッター、家庭教師、ペットシッター、庭仕事などをして働くことは可能だ。
クイックヒント:アメリカの労働省のウェブサイト「YouthRules!」を通じて、若年労働者の保護について詳しく知ることができる。
稼いだお金を子どもに無駄遣いさせない
子どもがお金を稼ぐようになったら、次にお金が入るまで使い切らず管理するやり方について大切な教訓を教えられる。
「大人になったら、もっとたくさんの給料をもらってそれを長い期間やりくりし、もっと大事なことに使わなければなりません」とレヴィーン氏は言う。
「それでも変わらないのは、『自分の手元にあるお金はこの額で、これでこの期間をやっていく必要があるから、それに応じた決定を下そう』という将来に備えた考え方です」
もしあなたの子どもに電話代や車のガソリン代など自分で払っている費用があるなら、入ってくる予定と支払う予定のお金をリストアップさせてみよう。
このプロセスでは子どもに主導権を渡すことが重要だと、フィグ・ローンズ(Fig Loans)の共同創設者で最高技術責任者のジョン・リー(John Li)氏は言う。
「本人に出費の内容を聞き、手助けは必要最小限にしましょう」とリー氏は助言する。
「ティーンは講義や説教でなく経験を通してこそ最も効果的に学ぶものです。自分で貯蓄の目標を設定させ、支出を見直させ、欲しいものが変わったらそれに応じて予算を調整できるよう支えましょう」
仕事を通して子どもは、成長して自立した大人になったときにうまくお金を稼ぐために必要なスキルを身につけることができる。
親としてもぜひそこに関わって、子どもが働き始めたら予算、支出、貯蓄、寄付について教えよう。そうすることで子どもたちは、もっと報酬が高く責任の大きい仕事に就いたとき経済的に安定した生活を送るための準備ができるだろう。
[原文:16 jobs for kids to put them on the path to financial literacy]
(翻訳・長尾莉紗/LIBER、編集・長田真)