景気後退入りが差し迫っているとの予測から、米企業の軒並み業績予想下方修正が懸念される昨今だが、米金融大手ゴールドマン・サックスはそんな厳しい投資環境に抜け道を見出す。
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株式価値を評価する上で最も基本的な指標となるのは、ある企業がどれだけの収益を上げるのか、投資家はその収益に対していくら支払う気があるのか、という2点だ。
ここ数週間の株価急落は、企業の利益1ドルに対しそれまで支払ってきた金額は多すぎると、投資家たちが一斉に判断した結果だ。
米ウォール街の専門用語を使えば、S&P500種構成銘柄の利益1ドルを買うのにかかる「マルチプル(倍率)」が急低下したとも表現できる。
しかし、(もうひとつの評価指標である)企業がどれだけの収益を上げるのか、その見通しには現時点で大きな変化は見られない。
したがって、これ以上の株価下落があるのかどうかは、企業の収益見通しが低下するかどうか次第ということになる。
米金融大手ゴールドマン・サックス米国株チーフストラテジストのデービッド・コスティンは、アナリストら専門家が間もなく業績予想を下方修正すると考えている。
ただ、たとえそうした展開になったとしても、米企業の業績はその後徐々に成長軌道を取り戻して、S&P500種株価指数を4300まで押し上げるとコスティンは最近の顧客向けレポートで予測している。
6月第3週の終値(6月17日)3674との比較では、17%上昇する計算だ。
ここで重要なのは、これだけの下落を経たあとにもかかわらず、現在の株価はまだ安いとは言えないとコスティンが指摘していることだ。
ゴールドマン・サックスの予想によれば、株価マルチプルが現在の水準を維持したまま、企業の業績予想だけが下方修正された場合、2023年にはもっと悪い数字が待ち受けているという。
「年末までに2023年の1株あたり純利益(EPS)予想コンセンサスが当社のトップダウン予測である239ドルの半分にとどまり(編集部注:2021年末は208ドルなので223ドル前後か)、株価収益率(PER)が17倍で変わらないとすると、予想されるS&P500種指数は4165。
また、景気後退入りしてEPS予想コンセンサスが200ドル、PERは14倍だとすると、S&P500種指数は3150まで低下するでしょう」
この景気後退入りシナリオだと、年初来の急落を経た終値3674(前出)から、さらに14%超の株価下落が想定されることになる。
ただし、株式市場全体としてはそうした業績予想の下方修正が想定されるとしても、なかには健全な財務体質を備え業績も堅調にもかかわらず、(トレンドに巻き込まれて)かなりの割安価格で取引されている個別銘柄もあるとコスティンは指摘する。
それが以下にリストアップした企業群だ。16銘柄すべてが少なくとも時価総額100億ドル以上、堅固なバランスシートを備えている。
驚くべきことに、アナリストが軒並み業績(1株あたり純利益)予想を20%下方修正したとしても、この16銘柄のバリュエーションは低く割安感が失われないとコスティンは評価する。
リストアップされた銘柄の(株価収益率の)中央値は、コンセンサス予想が20%下方修正された場合でも、2023年予想業績の12倍。同じ条件下におけるS&P500種の中央値は20倍と割高感がある。
業績下方修正後の株価収益率をベースに、16銘柄を割安の度合いが高い順にランキングした(以下ではランキングの低いほうから紹介)。
【第16位】ネットフリックス(Netflix)
Markets Insider
[セクター]通信サービス[業績20%下方修正後の株価収益率]20倍
【第15位】アナログ・デバイセズ(Analog Devices)
[セクター]情報テクノロジー[業績20%下方修正後の株価収益率]20倍
【第14位】シェブロン(Chevron)
Markets Insider
[セクター]エネルギー[業績20%下方修正後の株価収益率]15倍
【第13位】エクソンモービル(Exxon Mobil)
Markets Insider
[セクター]エネルギー[業績20%下方修正後の株価収益率]15倍
【第12位】ティー・ロウ・プライス(T. Rowe Price)
[セクター]金融[業績20%下方修正後の株価収益率]13倍
【第11位】クアルコム(Qualcomm)
Markets Insider
[セクター]情報テクノロジー[業績20%下方修正後の株価収益率]13倍
【第10位】タイソン・フーズ(Tyson Foods)
[セクター]生活必需品[業績20%下方修正後の株価収益率]13倍
【第9位】イーオージー・リソーシズ(EOG Resources)
[セクター]エネルギー[業績20%下方修正後の株価収益率]12倍
【第8位】パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(Pioneer Natural Resources)
[セクター]エネルギー[業績20%下方修正後の株価収益率]12倍
【第7位】コノコフィリップス(ConocoPhillips)
Markets Insider
[セクター]エネルギー[業績20%下方修正後の株価収益率]12倍
【第6位】カーボ(Qorvo)
[セクター]情報テクノロジー[業績20%下方修正後の株価収益率]11倍
【第5位】コーテラー・エナジー(Coterra Energy)
[セクター]エネルギー[業績20%下方修正後の株価収益率]11倍
【第4位】スカイワークス・ソリューションズ(Skyworks Solutions)
[セクター]情報テクノロジー[業績20%下方修正後の株価収益率]10倍
【第3位】ベストバイ(Best Buy)
Markets Insider
[セクター]一般消費財[業績20%下方修正後の株価収益率]9倍
【第2位】フランクリン・リソーシズ(Franklin Resources)
[セクター]金融[業績20%下方修正後の株価収益率]9倍
【第1位】マイクロン・テクノロジー(Micron Technology)
Markets Insider
[セクター]情報テクノロジー[業績20%下方修正後の株価収益率]6倍
(翻訳・編集:川村力)