6月17日、猪瀬直樹氏が応援演説中に候補予定者の女性の体を触ったことが「セクハラだ」と批判を集めた。
政党に女性候補者へのセクハラ防止策を求める「改正候補者男女均等法」が施行されて1年。党の対策や対応は万全だったのか? 参院選の公示を6月22日に控えた今、社会はこの問題にどう向き合うべきか? 専門家と考えた。
当事者と党代表の見解は
セクハラ問題で注目を集めた猪瀬氏だが、問題は根深い。候補者を守るために何ができるか? 専門家と考えた。
出典:猪瀬直樹氏ホームページ
夏の参院選で日本維新の会の全国比例区から出馬予定の猪瀬直樹・元東京都知事が、同じく日本維新の会の公認候補として出馬予定の女性の体を応援演説中に複数回触ったとみられる件については、既報の通りだ。(参考記事:維新・猪瀬氏の応援演説が「セクハラ」と批判殺到、本人は「軽率だった」。松井代表「慎むべき」)
日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は記者会見で「慎むべき」と述べ、猪瀬氏本人も「軽率だった」とTwitterでコメントした。
一方の女性は「特に当たっていない」「全く気にしてない」「猪瀬さんと私の関係では全く問題が無かった」とツイートしている。
維新は「再発防止に努める」
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日本維新の会はBusiness Insider Japanの取材に対し、
「猪瀬直樹氏本人がすでにTweetをしている通り、仲間を紹介する下りで発生した場面ですが、身体に触れることは軽率な面があったと考えています。本人も今後は十分に認識を改めて注意して行動していくとのことで、党としても再発防止に務めてまいります」
とコメントした。
投票や選挙運動の支援につけ込んでハラスメント行為をする「票ハラ」など、議員や候補者へのハラスメントは近年、社会問題になっている。内閣府が2021年3月に公表した調査によると、有権者や支援者、議員らからハラスメントを受けた女性議員は実に6割にのぼる(内閣府男女共同参画局「女性の政治参画への障壁等に関する調査研究報告書」)。
こうした背景もあり、同年6月には女性議員や議員を目指す候補者へのセクハラやマタハラについて、政党や国、自治体などに対策を求める改正候補者男女均等法が公布と同時に施行された。
日本維新の会はこうしたハラスメント対策として、党本部に担当者を置き、個別に相談の受け付けや指導を行っているという。
気にしていたらやっていけない
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女性議員や候補者へのハラスメント被害相談や支援、また議員への研修などを行う団体「Stand by Women」の代表・濵田真里さんは言う。
「選挙期間中のハラスメントはとても多く、有権者や応援に来てくれる支援者、ボランティアや議員からもハラスメントを受けやすくなります。なぜなら選挙期間中は一票の重みが特に大きくなり、議員は『応援してもらう立場』である以上、相手に強く出られない状況が生まれがちだからです」(濵田さん)
女性の「まったく気にしていない」というコメントには、「同じような被害にあっても声を上げづらくなる」など批判の声が上がっていた。
濵田さんは、
「議員の場合は『公人なんだからこれくらい我慢しろ』というプレッシャーをさまざまな場面で与えられがちなため、ハラスメントが当たり前の環境の中にいると『これくらい普通だ』『気にしていたらやっていけない』という考えになっても不思議ではありません」
第三者がハラスメントを指摘すべき
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そう一定の理解を示した上で、問題提起する。
「ただ、こういった状況を残し続けることが未来にとって本当に良いのか、考える必要があります。ハラスメントをされてもそれを受け流したり、気にせずにいられる人だけが議員として活動できる環境である限り、議員や議員を目指す人にとっての壁は存在し続けます」
当事者以外の人には何ができるのだろう。大切なのは「第三者介入」だ。
「被害者が声を上げることは非常にハードルが高いので、周りにいる第三者がハラスメント行為を指摘することも重要です。ハラスメントは権力関係のもとに行われるため、被害を受けた本人が声を上げることが難しいという構造があります。たとえ声を上げたとしても、二次被害を受けたり被害そのものを疑われたりする可能性もあります。だからこそ、第三者が一緒に問題を指摘することが力になります」(濵田さん)
猪瀬氏の一件は、街頭活動中に他の議員がいる前で起きた。これから始まる参院選。政策のみならず、候補者や所属議員の振る舞いも投票先選びの基準になるだろう。