今回の調査で再エネ電力プラン利用率が最も高かったのは、環境意識は高いが実際の行動には結びつきにくいとも言われていた若手だった。
出所:シナネンホールディングス、画像:Shutterstock.com
再生可能エネルギーの電力プランに切り替える20代が急増しているーー。
総合エネルギー企業・シナネンホールディングス(シナネンHD)が6月20日に発表した調査結果から、そんな傾向が明らかになった。
シナネンHDは2022年4月、20歳以上の社会人1112人を対象に電力プランの利用に関する実態調査を実施。再エネ由来の電力プランを利用しているのが全体の3割弱(図1)、その約7割がこの1年で切り替えていた(図2)。
【図1】全体の3割弱が再エネ電力プランを利用。分からないという回答が3割超だったことについて、シナネンは「再エネ由来かどうかを意識せず電力プランを選んでいる人も少なくない」としている。
出所:シナネンHD
【図2】1年以内に再エネ電力プランに切り替えたとの回答が7割を超えた。
出所:シナネンHD
再エネ電力プランの利用者が最も多かった世代は、意外なことに20代だった。
若年層はSDGsなどに対する知識はあるものの、収入が関係しているのか、中・高齢層に比べてSDGs消費やエシカル消費といった実際の消費行動には結びつきにくいという調査もある。ただ、今回の実態調査ではその他の世代を押しのけ、全体の34.9%を占めた(図3)。
【図3】世代別の再エネ電力プラン利用者(上)と利用者の世帯収入(下)。利用者のうち、20代が34.9%、30代26.0%、40代16.4%、50代9.5%、60代以上が13.2%と、20代が最多。世帯収入の多寡に関係なく切り替えが行われているようだ。
出所:シナネンHD
さらに、20代全体(222人)だけで見ると、再エネの利用率は5割弱(図4)。
その9割がこの1年以内に切り替えており、「20代の人たちの環境意識が急激に高まり、しかもそれが具体的な行動につながっているようだ」(シナネンHD)。
【図4】20代の再エネ電力プラン利用率(上)と切り替え時期(下)。切り替え時期については、4〜6カ月以内が最も多く、45.3%、次いで3カ月以内29.2%、1年以内が16.0%だった。
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その他の世代別の再エネの利用率は、30代が35.4%、40代が22.5%、50代が13.0%、60代以上は18.0%。20代と比較すると低い。
再エネ利用者の7割が勤務先から電気代支給
シナネンHDの調査結果で面白いのが、再エネ電力プランの利用者と在宅勤務との関連性を調べたデータだ。
【図5】を見てほしい。再エネ電力プラン利用者のうち、在宅勤務をしていると回答したのは全体の7割以上。さらにそのうちの約75%が勤務先から電気代の支給を受けていた。
【図5】再エネ電力プラン利用者の在宅勤務状況と勤務先からの電気代支給額。再エネ電力利用者の7割超が、勤務先から電気代の支給を受けていることが分かった。
出所:シナネンHD
勤務先から電気代を支給されることで、通常の電気料金プランと比較して割高な印象の再エネ電力に対する心理的なハードルが下がっていると考えることもできそうだ。
実際、6月20日に電通が発表したエシカル消費 意識調査2022では、再生可能エネルギーについて「共感度は高いが実施意向が低く、導入ハードルの引き下げが課題」と分析されている。電気代の支給はハードル引き下げの一つの選択肢になり得るだろう。
シナネンHDは今回の調査結果について、
「(コロナ禍による)在宅勤務によって家で過ごすことが多くなり、電気の利用や環境について考えることが増えたと推測される。そうした点も含めて、ある程度の仮説を立てて調査を行ったが、この1年で(切り替え)の動きが予想以上に加速していることが分かった」
としている。
なお、今回の調査では、再エネ電力プラン利用者に「勤務先が環境に配慮した事業や環境保全につながる取り組みを実施しているかどうか」についても聞き、70.7%が実施していると回答したという。
それらの結果を踏まえ、シナネンHDでは、「脱炭素社会を見据えた勤務先の取り組みや就業環境が、生活者の環境意識にも影響することがうかがえる」と分析している。
(文・湯田陽子)