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完売続出「チーズワンダー」のユートピアアグリカルチャーが描く「農業の未来」

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写真左からユートピアアグリカルチャーの長沼真太郎さん、聞き手の三ツ村崇志 。

撮影:小林優多郎

“変化の兆し”を捉えて動き出している人や企業にスポットを当てるオンライン番組「BEYOND」。

第6回は、北海道で「放牧の実験」をテーマに酪農やお菓子事業を展開する「ユートピアアグリカルチャー」の代表、長沼真太郎さんが登場。

6月15日(水)に放映した番組の抄録を、一部編集して掲載する。

配信アーカイブはYouTubeでご覧いただけます。

撮影:Business Insider Japan


——ユートピアアグリカルチャー(以下、UA社)について教えてください。

長沼真太郎さん(以下、長沼):3つの事業を行っています。

1つは放牧酪農や平飼いの養鶏を行う牧場の運営です。もう1つは、牧場で採れた牛乳や卵を使ったチーズケーキ「チーズワンダー」のオンライン販売をしています。

2022年5月からは新規事業として、UA社の商品や活動報告、「リジェネレイティブアグリカルチャー(再生循環型農業)」に関する情報を届けるサブスクリプション「GRAZE GATHERING(グレイズギャザリング)」を始めています。

アメリカで得た牧場運営の考え方

長沼さんと三ツ村さん

撮影:小林優多郎

——長沼さんは、UA社創業前にはチーズケーキの「BAKE」を立ち上げています。UA社で農業や素材の販売まで事業を広げた理由は何でしょうか。

長沼:BAKEの時代から牧場を運営したいという思いがありました。

おいしいお菓子をつくるには多くの原則があります。その中で私が重要だと思っているのは「どこよりも良い原材料を使うこと」です。

そこで、私が目を付けたのが「青草を中心に食べ、放牧で育ったウシから採れる牛乳」です。

卵と牛乳

ユートピアアグリカルチャーの卵と牛乳。

撮影:小林優多郎

——放牧酪農のウシの牛乳は、牛舎で育ったウシの牛乳と比べて栄養価や風味が大きく違うのですか。

長沼:はい。しかし、放牧酪農の牛乳を仕入れるには制約も多くて難しい。ならば、自分たちで牧場をつくろうと考えました。

自分たちが家畜を飼育することで生産者の気持ちにもなれます。さらに、そのストーリーをお客さまへ伝えられます。そういった「伝える」こともやりたかったことです。

——長沼さんは、BAKE退社からUS社の立ち上げの間にアメリカに滞在されています。牧場に関する勉強をされたのですか?

長沼:農業の具体的な手法を学ぶことはしませんでした。

フェイクミートや植物性ミルク、本当にリアルのウシを飼うべきなのかなど、最先端のアグリテックを学びました。

——アメリカでの経験もあって改めて「ウシを自ら飼って牧場を開こう」となったわけですね。

長沼:そうですね。

加えて、環境負荷が低いやり方で酪農を行う「リジェネラティブ農業」の考え方にも出会えたため、日本で実践しようと思ったことが事業を展開した経緯です。

より良い土壌をつくる「リジェネラティブ農業」

リジェネラティブ農業について

リジェネラティブ農業について、「ユートピアアグリカルチャー」の代表、長沼真太郎さんが説明する。

番組よりキャプチャ

——「リジェネラティブ農業」は、日本ではまだ聞き慣れない言葉です。どのような農業なのでしょうか?

長沼:研究途中の概念で、正式な定義はまだありません。

いわゆるSDGsは「持続させること」ですが、リジェエラティブは「より良くしよう」「より再生していこう」という考え方です。

農業においては、土壌をより健康度の高いものにして、「炭素貯蔵量」「吸収量」「蓄積力」を増やし、温室効果ガスを低減することを目指します。

——ウシのゲップにはメタンガスが含まれているから温暖化の原因になる、と言われます。「リジェネラティブ農業」であれば、そういう要素も含めても環境負荷が低くなるということでしょうか?

長沼:リジェネラティブの立場では「ウシが悪い」ではなく「ウシの飼い方が悪い」としています。

つまり牧場単位で見ると、ウシによる影響は悪いと捉えていません。「リジェネラティブ農業」によって(メタンガスが)抑えられるかは、まだ分かりません。

少なくとも「リジェネラティブ農業」で土壌の健康度を高め、(環境負荷が)改善される可能性があるため、今はデータを取り、数値化するという研究段階です。

循環図

ユートピアグリカルチャーの目指す循環の形。

番組よりキャプチャ

——UA社の取り組みの中に「リジェネラティブ農業」はどう取り入れられているのでしょうか?

長沼:例えば、養鶏している鶏から出る糞を牧場へ持っていき肥料にしています。

糞を利用することでより良い草ができ、それを食べたウシから採れる牛乳はよりおいしくなります。

おいしい牛乳を使えば、お菓子はさらにおいしくなり、お菓子で出た利益で土地を買い、土壌を増やしていきます。

このサイクルを毎年繰り返すことで、徐々にクオリティーが上がる循環システムが特徴です。

——循環システムによって「良くなっていく過程」はどのように調べるのでしょうか?

長沼:北海道大学と協力をして、「土壌の活性度」や「炭素量」「窒素量」「窒素の循環のバランス」などの数値データを取っていただいています。

数年単位で数値を取ることで、より良くなっていくかどうかを見ていきます。

森を牧場として再生させる「Forest Regenerative Project」

Forest Regenerative Project

北海道・盤渓(ばんけい)に設立予定の施設イメージ。

出典:ユートピアアグリカルチャー (C)DOMINO ARCHITECTS

——UA社では「Forest Regenerative Project」として、札幌市内に牧場を新設しています。牧場を増やす理由は何でしょうか?

長沼:「リジェネラティブ」に関係しています。今回、牧場を建てる土地は何十年間もメンテナンスがされていない森です。

そのような森は一部では「死んだ森」とも言われ、そこにウシなどの動物を入れることで活性化に期待が持てますし、研究としての価値も見い出せます。

具体的には、平らな土地は、最初から土壌が健康であることが多いんです。一方で、メンテナンスがされていない森であれば、より良くしたときの度合いが測りやすいというメリットがあります。

——この森で、どのような取り組みをされるのでしょうか?

長沼:9月頃からウマを入れる予定です。

森は笹で覆われているため、日光が入りません。そこで、まずはウマに笹を食べ尽くしてもらい、日光が入ることで森が変わっていくかをデータとして取っていきます。

——UA社としては、データを取ることで、土壌が良くなることを証明する。その後、そこで得られた原材料を使ったお菓子を販売してビジネスを広げていく、というイメージでしょうか。

長沼:ビジネス面では、当然お菓子をはじめとした商品が多く売れたらと思います。

ですが、一番は放牧された牛乳や平飼いの卵などの価値自体を上げていきたい。

放牧酪農の牛乳はおいしいのに、現時点では他の牛乳と同じ価格で取引されています。我々がデータを取り、それを軸にして活動することで、誰もが納得する形で価値を上げていきたいです。

「放牧のサブスク」でコミュニティー拡大を目指す

GRAZE GATHERING

サブスク事業「GRAZE GATHERING」で届くセットの例。

番組よりキャプチャ

——サブスクリプション「GRAZE GATHERING」について詳しく教えてください。

長沼:牧場で採れた牛乳や卵、牛乳を加工した飲むヨーグルトを定期便でお客様に届けています。

一番の特徴は、商品と合わせてプロジェクトの実験の状況や関係といった活動報告やリジェネレイティブアグリカルチャーに関する情報もお届けして、お客様にも「体験」してもらうことです。

——商品だけでなく、「体験」も提供する狙いは何でしょうか。

長沼:日本ではこういった情報の発信が足りないと思っています。情報が広まれば、その分、放牧酪農の価値も上がると考えます。

そのため、我々は情報を届けたいという思いが強く、お客様にも体験を通して研究にも一緒に参加してもらいたいと思っています。

——体験を届けることで、「仲間」を広げていく事業のように思いました。

長沼:まさにそうですね。

研究結果を出すには何年もかかるため長期的な関係になります。ですが、そんな未来を見据えて、コミュニティーをつくり、広げていきたいです。

(聞き手・三ツ村崇志、構成・紅野一鶴


アクセンチュア BEYOND 8

6月29日(水)19時からは、アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部の井谷有寿さんと、大塚未宇さんをゲストに迎えて「多様性を活かす「最強チーム」の作り方 Sponsored by アクセンチュア」をお送りします。

「BEYOND」とは

毎週水曜日19時から配信予定。ビジネス、テクノロジー、SDGs、働き方……それぞれのテーマで、既成概念にとらわれず新しい未来を作ろうとチャレンジする人にBusiness Insider Japanの記者/編集者がインタビュー。記者との対話を通して、チャレンジの原点、現在の取り組みやつくりたい未来を深堀りします。

アーカイブはYouTubeチャンネルのプレイリストで公開します。

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