日本おもちゃ大賞2022 ベーシック・トイ部門の優秀賞を受賞した「オコメイロ L」。
撮影:山﨑 拓実
おもちゃ業界でも、さまざまな企業がSDGsに配慮した取り組みを進めている。
ナノブロックやダイヤブロックを手がける日本の玩具メーカー・カワダもその1社だ。
カワダは5月24日にお米由来の原材料でできたダイヤブロック「OKOMEIRO(オコメイロ)」を発表。6月16日、東京ビッグサイトで開催された「東京おもちゃショー2022」で披露した。
ラインナップはブロックの内容量別に、「OKOMEIRO S」が1320円、「OKOMEIRO M」が4928円、「OKOMEIRO L」8228円(いずれも税込み)。直販サイトで8月27日から発売開始予定。
破砕米や廃棄米を使った新素材「ライスレジン」
オコメイロの特徴を動画でチェック。
撮影:山﨑 拓実
オコメイロは、古米や破砕米を原料にした「ライスレジン(Rice Resin)」という代替プラスチックが全体の50.1%、残りはポリプロピレンと着色材でできている。
ライスレジンとは、新潟のベンチャー・バイオマスレジン南魚沼が開発した日本発のバイオマスプラスチックだ。
オコメイロにはライスレジンが約50.1%以上使用されており、残りは着色材とプラスチックが使用されている。
撮影:山﨑 拓実
ライスレジン自体は、米菓の製造時に余った破砕米や廃棄予定の米を最大70%、残りはプラスチックを配合してつくられている。身近なところでは郵便局のレジ袋などに使用されている。
素材を生かして角を丸く、競合「レゴ」も意識
撮影:山﨑 拓実
現代のおもちゃにおいて、開発期間の短さ、製造コスト、安全基準の観点でプラスチックと関係を断つことは難しい。
だが、カワダのオリジナル事業本部開発部の兒玉遥氏は、SDGsへの取り組みに加え「日本ブランドとしてのアイデンティティーをアピールするため」と開発の経緯を明かした。
2022年に誕生60周年を迎えるダイヤブロック。
撮影:山﨑 拓実
従来のダイヤブロックとの大きな違いは「角」と「色」だ。
一般の保護者や子育てをする社員から「ブロックの角に手が当たると痛い」という意見が寄せられ、オコメイロでは角を丸く加工した。
そうすることで痛みが軽減されるだけではなく、ブロックを分解するときに指が入りやすくなったという。
また、兒玉氏は別の効果もあったと話す。
「側面の線が見やすくなり、写真を撮った時に丸いフォルムが強調されるので、SNSなどでも可愛らしく見えるようになりました」(兒玉氏)
左が従来のダイヤブロック。右がオコメイロ。ブロック同士の境目がはっきりしているのがわかる。このデザインはオコメイロ以外でも展開予定だという。
撮影:山﨑 拓実
フォルムに違いはあるものの、もちろん従来の製品と組み合わせて遊ぶこともできる。はめ心地も違和感は少ない。また、耐久性もおもちゃの安全基準である日本玩具協会の「ST基準」を満たしている。
「はめ込みの相性は従来の素材の方がいいですが、それに劣らないくらいの感覚ではめることができます。硬さなど試行錯誤しました」(兒玉氏)
ブロックの色は従来の単色系のはっきりした色ではなく、ライスレジン本来の薄茶色を生かしながら、日本の伝統色をイメージしたデザインとなっている。これには「レゴとの差別化の意図もある」と兒玉氏は明かす。
購入する親世代を意識したバケツの工夫も
オコメイロの収納容器。フタを開けた瞬間、容器からおせんべいのような匂いがした。 撮影:山﨑 拓実
撮影:山﨑 拓実
フタの裏にはブロックをつけられる突起があり、そのままプレイスペースになる。
撮影:山﨑 拓実
ブロックの収納容器にもこだわりがある。
特に意識をしたのは「デザイン」。通常のブロックの収納容器には直接シールが貼られているが、今回のオコメイロではシールの代わりに紙のスリーブを巻いている。
紙にすることで購入後にユーザーが外しやすくなり、収納容器が部屋に溶け込みやすくなる。兒玉氏は「子どもではなく、親を意識したデザイン」と説明する。
「お母さん、お父さんたちが買いたい、お家に置きたくなるようなものをコンセプトに、容器もブロックも色も考えました。
自然の色だからこそ、家に置いておいても馴染みやすい、違和感のないものにしました」(兒玉氏)
30代・40代の「レゴ世代」への浸透を狙う
そもそも米を原料にしたバイオマスプラスチックを使用したのも、日本の伝統、そして日本社会への貢献を意識したからこそだ。
カワダは、オコメイロの売り上げの一部を米に変換し、こども食堂に寄付するという取り組みも予定している。
こうした一連の取り組みにはグローバルで展開する大手ブロック玩具メーカーの「レゴ」が念頭にある。
「『ダイヤブロック世代』と言われる50代、60代には(ダイヤブロックの知名度)は浸透しているのですが、30代、40代にはレゴが有名なので、力を注ぎにくい。
いま、一気に全国展開を進めるのではなく、これからゆっくりと無料配布などで知名度を上げ、2023年春には販売環境を整えていきたいです」(兒玉氏)
(文、撮影・山﨑拓実)