ユニコーン(評価額10億ドル以上)に到達したスタートアップが苦境に追いやられている。世界のミレニアル世代、Z世代に支持されるあのアプリを傘下に置く中国の有望株も……。
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ベンチャーキャピタル(VC)にとって2021年は多くのユニコーン(=評価額10億ドル以上の非上場スタートアップ)が生まれた記録的豊作の年だった。
ところが、2022年の年明けに状況は一変、VC市場とその支援先のスタートアップの「蜜月期」は急速に終えんを迎えつつある。
ベンチャー投資支援会社ネクスト・ラウンド・キャピタル(Next Round Capital)の最新データ、およびセカンダリー(非公開株式流通)市場の複数の投資家を通じて入手したデータによると、2021年第4四半期(10〜12月)以降、レイターステージの最有力ユニコーンの多くが評価額を減らしている実態が明らかになった。
特に注目すべき企業名としては、米フードデリバリー大手のインスタカート(Instacart)、動画共有アプリ「ティックトック(TikTok)」の中国親会社バイトダンス(Bytedance)、スウェーデンの後払い決済クラーナ(Klarna)を挙げておきたい。
インスタカートは170億ドル(約2兆3000億円)、バイトダンスは450億ドル(約6兆円)、クラーナは150億ドル(約2兆円)と、いずれも巨額の評価額ダウンとなった。
Insiderがデータを確認できた範囲では、評価額アップはイーロン・マスク率いる宇宙開発企業スペースX(SpaceX)1社だけだった。
こうした評価額の一斉下落にはさまざまな要因が考えられる。(資本コストを上昇させる)金利上昇、断続的なサプライチェーン障害、記録的なインフレはいずれも、投資家がベンチャーキャピタルのようなリスクの高い投資を避ける要因となり、それは市場全般の低迷につながる。
これから市場が景気後退入りに至った場合、過去の例から考えて、最初に最も厳しい影響にさらされるのは成長途上のスタートアップだ。
スタートアップ投資家は(上場企業の経営者など)より公開市場に近い立場であるのが普通で、長期化する株式市場低迷のダメージは(投資の手控えという形で)すでに顕在化しつつある。
また、インスタカートに代表される一部のスタートアップの評価額下落には別の理由がある。
同社のようなデリバリーサービスは、パンデミック発生後の行動制限による需要増を追い風に急成長を遂げた。
しかし、オフィスなど経済活動がほぼ正常化されたいま、(配達人件費に相当する)追加料金を支払ってまでデリバリー注文する需要はなくなっており、すでに業績の低下が顕著になっている。
Insiderは上位ユニコーン15社の評価額の変動状況を以下の図表にまとめた。
【図表】スタートアップ(レイターステージ)の評価額の変化額(2021年と22年の比較)。世界最大級のバトルロワイヤルゲーム『フォートナイト』を開発提供するエピック・ゲームズ(Epic Games)も評価額減が著しい(画像をクリックすると拡大表示します)。
Tien Le/Insider
(翻訳・編集:川村力)