マイクロソフトが7月1日にローンチさせるサイバーセキュリティ重視の新部門に、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の元幹部たちが結集しつつある。
pio3/Shutterstock.com(AWS)tanuha2001/Shutterstock.com(Microsoft)
アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)設立の立役者で、「エンジニア部門の魂」と呼ばれるアマゾンの最重要人物のひとりだったチャーリー・ベル。
同僚すら「まったくの寝耳に水」だったという2021年8月の突然の退社から、マイクロソフト(Microsoft)への電撃移籍発表を経て、ついに(7月1日付で)ベルをトップとする新たなサイバーセキュリティ部門が発足する。
2021年9月にベルのジョインを発表したマイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は社内メールでその意義をこう強調している。
「当社ひいてはテクノロジー業界が向き合うべき次なる課題は、デジタルプラットフォーム、デバイス、クラウド、それぞれのセキュリティです。私たちはいまこの課題に大きな意欲をもって取り組んでおり、チャーリー(・ベル)もそのことを認識しているからこそ、マイクロソフトへの移籍を望んだのだと思っています」
そうした文字通り「鳴り物入り」の新部門ローンチを前に、マイクロソフトがアマゾンの元経営幹部をもうひとり獲得したことが分かった。
Insiderが確認した社内メールによれば、AWSのバイスプレジデント(データベース担当)を務めたショーン・バイスがコーポレートバイスプレジデント(クラウドセキュリティ担当)に就任した。
マイクロソフトにコメントを求めたが返答は得られなかった。なお、バイスのバイスプレジデント就任は本人のリンクトイン(LinkedIn)投稿で確認された。
「絶対無理だと思う人もいるかもしれませんが、私はマイクロソフトのチームメイトと一緒に、世界からランサムウェアを一掃し、攻撃者の動きを完全に封じたいと考えています。それは(実現できれば)社会に計り知れない価値をもたらすと私たちは確信しています」(6月21日深夜の投稿)
Insiderが確認した社内メール(5月11日付)では、23年間在籍したアマゾンを離れて新天地をマイクロソフトに求めたベルが、自ら率いる新たなサイバーセキュリティ部門のビジョンを示している。
「2021年10月、セキュリティ、コンプライアンス、アイデンティティ、マネジメントを一手に引き受ける新たな部門を立ち上げるため、私たちは結集しました。この先に待ち受ける信じられないほど大きなチャンスをつかみ取るためであり、皆さんが長年にわたって積み重ねてきた素晴らしい仕事の数々が認められたからでもあります。
この部門立ち上げは非常に重要な第一歩です」(ベルを発信元とする社内メール)
今回マイクロソフトにジョインしたショーン・バイスは、アマゾンのバイスプレジデントとして5年間、マネージド型リレーショナルデータベースサービス「アマゾン・オーロラ(Amazon Aurora)」やフルマネージド型非リレーショナル(NoSQL)データベースサービス「アマゾン・ダイナモDB(Amazon DynamoDB)」などを管轄し、2021年6月に退社。
直後、ログデータ収集分析プラットフォームのスプランク(Splunk)に、CEO直下のプレジデント(プロダクト・テクノロジー担当)として移籍した。
アマゾン時代は、同社のITインフラを競合するオラクル(Oracle)のデータベースソフトウェアを廃止し、AWSが提供するデータウェアハウスサービス「アマゾン・レッドシフト(Amazon Redshift)」に移行させる取り組みで中心的な役割を担った。
バイスのジョインは、10年以上にわたってAWSのバイスプレジデント(ワールドワイド・パブリックセクターおよびインダストリー担当)を務め、それ以前はマイクロソフトのバイスプレジデントも9年務めたテレサ・カールソンが、5月にスプランク(バイスと同じくプレジデント職)からマイクロソフトに移籍したのに続く動きだ。
カールソンは現在、コーポレートバイスプレジデント兼エグゼクティブ・イン・レジデンス(新規事業経営者候補)を務める。テクノロジー専門メディア「インフォメーション(The Information)」によると、直属の上司はエグゼクティブバイスプレジデント(ビジネス開発担当)のクリストファー・ヤング。
なお、前出のベルを発信元とする社内メールでは、マイクロソフト勤務33年のベテランでコーポレートバイスプレジデント(アジュール・クラウドセキュリティ担当)を務めるバーラット・シャーが退社することも明らかにされている。
シャーは当初、他のコーポレートバイスプレジデント3人とともに、ベルが統括する新部門に加入する予定だった。
(翻訳・編集:川村力)