医師や科学者は、妊婦以外の健康な人が病気の予防のために特定のビタミンを摂取することはやめたほうがよいと述べている。
Crystal Cox/Business Insider
- アメリカ予防医学専門委員会によると、栄養補助サプリメントには心臓病やがんを予防するという十分な証拠はないという。
- 同委員会は、ベータカロチンのサプリメントは体にいいことよりも悪いことを引き起こす可能性の方が高いと述べた。
- ある予防医学の医師は、病気を予防するための近道はなく、適切な食事と運動が重要だとしている。
栄養補助サプリメントの摂取で心疾患やがんを予防できるという証拠は十分ではないようだ。
予防医療に関する勧告を行うために、最新の研究やデータを調査するボランティアの科学者から成る独立したチームであるアメリカ予防医学専門委員会(USPSTF)は2022年6月21日、栄養補助サプリメントに関する勧告の改訂版を発表した。
USPSTFは、妊婦以外の健康なアメリカ人に対して、体内でビタミンAに変換される化合物であるベータカロチンのサプリメントを、心疾患やがんの予防として摂取しないよう勧告している。過剰摂取するとビタミンA中毒を引き起こし、筋肉や骨の痛み、吐き気、脱毛につながる可能性があるからだ。
また同委員会は、ビタミンEの摂取による「純粋な効用はない」とも述べている。マルチビタミンの摂取については、健康な人が心疾患やがんにかかるのを予防できるかどうかを判断するには「証拠が不十分」だとしている。
なお、この勧告は小児、妊婦、慢性疾患や入院中の人、栄養不足と診断されている人には適用されない。
「心疾患やがんの予防のために、マルチビタミンのサプリメント、または1種類か2種類の栄養素に特化したサプリメント(ベータカロチンおよびビタミンEを除く)を摂取することの効用とダメージについて評価するには、現在の証拠では不十分であると結論付けた」と同委員会は記している。
病気の予防に近道はない
ノースウェスタン大学医学部の科学者は、USPSTFの勧告を大きく取り上げて、妊婦以外の健康な人々が栄養補助のためにサプリメントを摂取するのは「お金の無駄」とする論説を米国医師会雑誌の2022年6月号に掲載した。
「お金が無駄になる以上に、サプリメントの摂取は体にダメージを与えることになるかもしれない」と論説には記されている。
ノースウェスタン大学の予防医学認定医であるジェニー・ジア(Jenny Jia)博士は、この論説が消費者のよりよい判断に役立ち、サプリメントをバランスの取れた食事や運動に置き換えるようになることを期待しているとInsiderに語った。
ジア博士によると、栄養補助のためのサプリメントはアメリカ食品医薬品局(FDA)の市販前審査を受けておらず、中には表示に記載されていない成分が含まれているものもあるという。
「今回の研究結果によって、残念ながら病気の予防には近道がないことが確認されたようだ」とジアは言う。
「健康を維持するためには、健康的な行動を取らなければならない」
とはいえ、健康的で高価な食材を購入することが難しく、素材から調理する時間もない低所得層のアメリカ人にとって、このアドバイスは「言うは易く、行うは難し」だとジアは言う。彼女は、フードバンクなどを通して低所得層のアメリカ人が健康的な食品を簡単に手に入れられるよう支援する方法を研究している。
「現在、我々の食料システムに関する政策や生産体制は、健康的な選択がデフォルトであったり、最も簡単な選択であったりするような構造にはなっていない」と彼女は述べていた。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)