13インチMacBook Pro(2022年モデル)。6月24日発売で、価格は17万8800円(税込)から。
撮影:西田宗千佳
アップルが自社設計のプロセッサーとして、新たに「Apple M2」を発表した。そのM2を搭載して6月24日から発売される最初のMac「13インチMacBook Pro(2022年モデル)」の先行レビューをお届けする。
気になるのはやはり、他のAppleシリコンとの速度差だろう。
今回はそこに注力し、M1搭載の「13インチMacBook Pro(2020年モデル)」、M1 Pro搭載の「14インチMacBook Pro(2021年モデル)」と速度などを比較して考察してみよう。
デザイン・設計は「2020年モデル」と同様
まず、今回評価用に貸し出されたモデルを確認しよう。
評価機の「13インチMacBook Pro(2022年モデル)」
- 直販価格:26万2800円(税込)
- プロセッサー:Apple M2
- メモリー:16GB
- ストレージ:1TB SSD
- カラー:スペースグレイ
- 発売日:6月24日
また、筆者の手元には、2020年モデルと2021年モデルのMacBook Proがあり、どちらもメモリーは16GB。
左が2020年モデル、右が2022年モデルの13インチMacBook Pro。デザインはほぼ同じだ。
撮影:西田宗千佳
左が14インチMacBook Pro、右が2022年モデルの13インチMacBook Pro。ディスプレイサイズだけでなくデザインがけっこう違うのがわかる。
撮影:西田宗千佳
2022年モデルとはいえ、13インチMacBook Proの場合、デザインは「2020年モデル」と同じだ。
2021年に14インチ・16インチのMacBook Proがデザインを含めて設計を一新しているが、そちらとはちょっと違う。
左が2020年モデル、右が2022年モデルの13インチMacBook Pro。キーボードはまったく同じだ。
撮影:西田宗千佳
左が14インチMacBook Pro、右が13インチMacBook Pro。14インチモデルでキーボードが変更されたので、印象はかなり異なる。
撮影:西田宗千佳
左が14インチMacBook Pro、右が13インチMacBook Pro。底面デザインの違いがわかるだろうか。
撮影:西田宗千佳
左が14インチMacBook Pro、右が13インチMacBook Pro。14インチにはMagSafe 3があるが、13インチモデルにはない。どちらにもUSB Type-C端子が2つあるが、14インチはThunderbolt 4/USB4仕様なのに対し、13インチはThunderbolt 3/USB4仕様。
撮影:西田宗千佳
キーボードも「Touch Bar」のついたもの。インターフェースも左側にUSB Type-Cが2つあるだけだ。充電専用の「MagSafe 3」はない。
同梱の電源は67Wのもの。MagSafe 3はないので、電源ケーブルはUSB Type-Cだ。
撮影:西田宗千佳
今回はたまたま色が異なっているのですぐわかるが、同じ色だったら、2020年モデルと外観だけで見分けるのは難しい。
逆に言えば、変更点は「搭載プロセッサーだけ」といっていい状態なので、プロセッサーを比較するにはちょうどいい。
M2はシングルコアでは若干の性能向上。性能差は「コア数」で決まる
では、テストを見ていこう。今回は5つのテストを行なっている。
・Geekbench 5(CPU)
Geekbench。
画像:筆者によるスクリーンショット
まず、ベンチマークテストとして定番の「Geekbench 5」。シンプルにプロセッサーの性能を見られるもの、と考えていい
Geekbench 5ではCPUとGPUのテストがあるが、まずはCPUのテストを見てみよう。
筆者によるベンチマーク結果。
図版作成:Business Insider Japan
結果は以下の通り。M2はM1よりも性能が上がっているのだが、意外とその幅は小さい。
マルチコア性能で27%、シングルコア性能で17%程度だ。数字こそ「M1とM2」だが、M1 Proの方が性能はさらに高く、マルチコア性能ではM2の方が28%遅いのがわかる。
ただし、シングルコア性能では、M1 ProよりM2の方が9%速い。
この点を考えると、「M2は世代が新しいプロセッサーなのでCPUコア性能は上がっている」。
一方で、M1 Proとは「CPUコアの数」の分性能が高い、と考えられる。
テストに使っているプロセッサーの性能を以下に並べてみた。
プロセッサーのコア数などを比較。M2はGPUコアが2つ増えたが、M1 Pro/Maxの方が依然コア数は多い。
出典:アップル
比較対象の14インチMacBook Proが採用するM1 Proには複数の仕様があるが、今回テストしているのはCPUコアが10(パフォーマンス8、高効率2)という組み合わせ。
M2のCPUコアは8(パフォーマンス4、高効率4)という組み合わせだから、その差が出た……と考えていいだろう。
・Cinebench R23
Cinebench R23。
画像:筆者によるスクリーンショット
同じくCPU性能が主に反映されるベンチマークである「Cinebench R23」ではどうか。
こちらは主に性能の高いパフォーマンス・コアの性能を比較することになるが、傾向は似ている。
筆者によるベンチマーク結果。
図版作成:Business Insider Japan
シングルコア性能ではM2がM1/M1 Proを4%から5%上回っている。
M1対M2のマルチコア性能では約10%M2が速く、M1 Pro対M2では3割ほどM1 Proが速い。
すなわちM2は、M1世代に対してシングルコア性能は「若干の向上」がみられ、マルチコア性能は「M1に比べればはっきり速くなったが、コア数が多いM1 Proには敵わない」と考えていい。
GPUコア増加でグラフィック性能アップ、でもM1 Proには届かず
・Geekbench 5(GPUテスト)
ではGPU性能はどうだろう。 同じくGeekbench 5のテストを比較してみよう。
筆者によるベンチマーク結果。
図版作成:Business Insider Japan
こちらはGPUよりもわかりやすい。M2はM1に対して35%と大幅に上がっている。一方、やはりGPUコアが多いM1 Proよりは23%遅い。
3DMark Wild Life Extreme。
画像:筆者によるスクリーンショット
GPUをチェックするベンチマークである「3DMark Wild Life Extreme」でのテスト結果も傾向は同様だ。M1とM2ではM2が3割速く、M1 ProとM2ではM1 Proが4割弱速い。
筆者によるベンチマーク結果。
図版作成:Business Insider Japan
GPUコアの数は、M1は8でM2は10。M1 Proは16コアなので、結局数の多いM1 Proが一番速くなる。
結局ここでも、「M1 Pro>M2>M1」という性能の序列は変わらない。
動画で効果的なMedia Engine、M2は大幅に高速化
Adobe Photoshop Lightroom。
画像:筆者によるスクリーンショット
ではもう少し、実作業に近いテストをしてみる。
アドビの写真現像ソフト「Lightroom」で、50枚のRAW画像(4000×3000ドット程度)に同じ色補正をかけてJPEGへと書き出す速度を比較してみた。
筆者によるベンチマーク結果。
図版作成:Business Insider Japan
こちらの場合、M2ではM1よりも2割程度速く作業が終わり、M1 ProはM1より7割、M2より4割速く作業が終わる。ほぼCPUのマルチコア性能の差、と見て良さそうだ。
アップルの「iMovie」。
画像:筆者によるスクリーンショット
一方、動画編集になるとちょっと様相が変わる。
iMovieで4K動画7分12秒分を、4KのProRes形式動画へと書き出す速度をチェックしてみた。
筆者によるベンチマーク結果。
図版作成:Business Insider Japan
こちらもM1 Proが最も速いことに変わりはないのだが、M1 ProとM2の差は縮まる。というよりも、他の2つがM1を引き離すのだ。
M1はM1 Proの3.8倍もの時間がかかる一方、M1 ProとM2の差は8割。一方、M1からM2に変えるとかかる時間は半分以下に縮まる。
これは、M2になって、ProResなどの動画圧縮に有利な「Media Engine」というコアがプロセッサーに追加されたことの効果だろう。
Media EngineはM1 Pro/Maxにも搭載されているが、M2では1つ、M1 Pro/Maxでは2つになっている。
ここから考えると、動画を編集する人にとって、M1からM2への性能アップは非常に有用、と言えそうだ。
M2は「マス向けのM1後継」、価格の違いが性能の差
Apple M2。
撮影:西田宗千佳
一連のテストをした結論は「M2はM1の後継プロセッサーである。けれども『M1 Pro』などのプロ向け製品に向けたものではない」。
だから、M1 ProはM2よりも速い。
一方で、M1からM1 Pro世代へと進化する中で登場したMedia EngineがM2に取り入れられたことで、M2はM1よりも高速になった部分がある。
CPUコアの若干の性能向上、GPUコアの増加なども魅力だろう。
ただ、シングルコア性能はM2世代でもそこまで大きく進化しておらず、少なくとも2022年は、性能向上が「コア数増加と専用コア追加」で進むのだろう、とも予測できる。
結局、違いは「価格」だ。
M1搭載の2020年モデルのMacBook Proはもう購入できないが、M2搭載の13インチモデルと、M1 Pro搭載の14インチモデルの価格差は最低でも10万円。
今回比較したモデルの場合、M2搭載版が26万2800円、M1 Pro搭載版が34万4800円だから、8万2000円の違いとなる。
動画編集をしない人がM1からM2へ移行するのはコストに見合わないかもしれない。
だが、M1を買わずに様子見していた人には最適なプロセッサーだ。
少しでも時間を節約したいプロは、やはり14インチや16インチのモデル、つまりM1 ProやM1 Maxを選ぶべきで、そこに変化はない。
今後発売のM2版MacBook Airとは「待つか待たないか」
Apple M2搭載MacBook Air。6月6日(現地時間)の発表会場にて撮影した実機。
撮影:西田宗千佳
最後に残るのは、「このあと登場するAirか13インチProか」だろう。
新しいMacBook Airの発売日は現時点では7月という以外不明だが、Airをテストするまで答えは保留としたい。
だが、M1版での経験からいえば、「高負荷な作業をするなら、ファンのあるProの方がいい」ということになる。
ただ、そこまでの負荷をかける仕事をするならM1 ProやM1 Maxのモデルの方が向いており、この新しい13インチMacBook Proは「予算を抑えつつ負荷の高い作業をする」という、比較的ニッチなところに落ち着く印象を持つ。
結局のところ、最大のポイントは「来月のAirまで待つか待たないか」かもしれない。
製造ラインや半導体調達の混乱が伝えられる今、新製品も買いそびれると納期が長くなる可能性は高い。「Airが出てから両方を天秤にかけて比較を」と考えていたら、Proの納期が長くなっている……という可能性も考えられる。いずれにせよ、この辺はちょっと難しい選択だ。