「南昌級駆逐艦(055型)」(左)とUSSズムウォルト(右)。
Sun Zifa/China News Service/U.S. Navy/General Dynamics Bath Iron Works/Getty Images
- 中国人民解放軍海軍が有する艦艇の数は、世界でもっとも多い。
- 「南昌級駆逐艦(055型)」は中国海軍で最大クラスの駆逐艦だ。
- 中国メディアは、「USSズムウォルト」に次ぐ世界最強クラスの艦と喧伝している。
中国は、艦艇の総数から見ると世界最大の海軍を有している。「055型」は中国人民解放軍海軍最大級の駆逐艦だ
南昌級駆逐艦(055型)。
Sun Zifa/China News Service/Getty Images
中国海軍が有する艦艇数は355隻で、アメリカ海軍の297隻を上回っている。
中国船舶工業集団公司は、2014年に同社最大の艦艇となる「南昌級駆逐艦」(通称「055型」)の建造を開始した。同艦は2020年から就役している。
NATOコードネームは「レンハイ型巡洋艦」だ。サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)によると、マルチロール(多用途)軍艦として、ミサイル、艦船、潜水艦に対抗する武器を装備しているという。
現在、055型の同型艦は6隻が就役しており、中国海軍は16隻にまで増やす計画だと述べている。
複数の軍事専門家が中国国営メディアの環球時報に語ったところによると、同艦の役割は、中国が台湾に軍事攻撃を行った場合に、外国の介入を抑止することだという。
中国メディアは「055型」をUSSズムウォルトに次ぐ強力な駆逐艦と喧伝
中国の誘導弾駆逐艦「南昌(055型)」。
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ズムウォルトは世界最大の駆逐艦で、満載排水量は1万5995トンだ。055型は1万2000トンから1万3000トンとズムウォルトよりも若干軽量だ。
SCMPによると、陸上攻撃に特化したアメリカ製のUSSズムウォルトとは異なり、055型は水陸両用の攻撃艦だという。
ズムウォルト級は装備の問題に悩まされ、「コンセプトを間違った駆逐艦」と呼ばれているが、055型は複数の軍事誌から「世界最強の駆逐艦」と称されている。
China Dailyによると055型はレールガン(電磁投射砲)も搭載しているという。
「055型」の同型艦は6隻
2019年4月に撮影された南昌級駆逐艦の1番艦「南昌」。
REUTERS/Jason Lee
南昌級駆逐艦の1番艦である「南昌」(ペナント番号101)は、2017年6月に進水し、2020年1月に就役した。その後、拉薩(102)、鞍山(103)、無錫(104)、大連(105)、延安(106)の5隻が配備されていると、地政学的インテリジェンスの分析プラットフォームSpecialEurasiaが報じている。
これらの駆逐艦が配備されているのは、中国人民解放軍の北部戦区(モンゴル、ロシア・シベリア、韓国)と、南部戦区(南シナ海、東南アジア)だという。
6基のタービン発電機で駆動する
南昌級駆逐艦の1番艦である「南昌(055型)」。
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055型は4基のガスタービンエンジンを搭載し、合計13万馬力を発生する。最大速力は約30ノット(時速56キロ)。300人以上の乗組員を収容できる。
同型艦の2番艦である「拉薩」は、2022年6月に日本海まで航行する姿が目撃されたと環球時報が報じている。
055型の1隻あたりの建造費は60億中国元(約1200億円)で、USSズムウォルトよりもはるかに安価だ
2019年4月に撮影された南昌級駆逐艦の1番艦「南昌」。
REUTERS/Jason Lee
ズムウォルト級1隻あたりの建造費は70億ドル(約9400億円)だとForeign Policyが報じている。
055型は、アメリカのライバル艦よりは安価だが、中国の他の重要な艦船よりは高価だ。SCMPによると、かつて中国海軍が誇った昆明級駆逐艦(054D型)の建造費は、055型の半分だったという。055型は一流の水上戦闘艦の開発という点で、中国にとって「大きな質的飛躍」になったと、アメリカ海軍大学校による2020年の報告書に記されている。
高度なステルス性能を有する055型
2019年4月に撮影された南昌級駆逐艦の1番艦「南昌」。
REUTERS/Jason Lee
055型は「346B型ドラゴンアイ」というデュアルバンドレーダーシステムを搭載している。一方、ズムウォルト級はコストを抑えるためにレーダー技術に関しては「ダウングレード」せざるを得なかったとNational Interestが報じている。
055型は先進的なレーダーに加えて、魚雷発射管を備え、ハルビンZ-9と昌河Z-18の2機のヘリコプターを搭載できる。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
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