Slack CEOのスチュワート・バターフィールド(Stewart Butterfield)氏。
出典:Slack
Slack(スラック)は6月22日(現地時間)、年次イベント「Slack Frontiers」をアメリカ・ニューヨークとオンライン上で開催した。
Slack Frontiersでは、現在提供している音声通話機能「Slackハドルミーティング」に追加される新機能など、複数の新機能や取り組みが紹介された。
発表内容を3つのポイントに分けて解説しよう。
1. ハドルがZoomやMeetのようにビデオ通話をサポート
Slackハドルミーティングはビデオ通話をサポートする。
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ハドルは2021年6月に追加された機能で、同じワークスペース内にいる同僚と音声と画面共有で気軽にリアルタイムに対話する機能だ。
提供開始以降、日本では利用時間が平均20分となっており、これは「世界平均の2倍」(Slack広報)に相当するほど人気の機能だ。
そんなハドルに以下の新機能が追加される。提供時期は2022年秋以降。
- ビデオ通話のサポート
- 複数人での画面共有
- 共有された画面にメモやカーソルを表示する機能
- 絵文字やステッカーなどでのリアクション機能
- ハドル内でのメッセージスレッド機能(ハドル終了後は該当チャンネルに自動保存)
Frontiersのデモの様子。複数人でビデオ会議をしながら、画面共有をし、スレッドでのテキストチャットも行われている。
出典:Slack
Slack Frontiersでは、ニューヨークの発表会場と自宅にいる参加者と新しいハドルミーティングをするデモが披露された。
前述の通り、ハドルはZoomやGoogle Meetのように事前にURLなどを発行することなく、既存のチャンネルやグループDMなどをベースに、通話が始められる。
共有された画面には、書き込みやカーソルを表示できる。
出典:Slack
その即時性はビデオ通話機能がついても変わらないようだった。
当然、カメラありで通話をしたくない/できない場合はカメラをオフにしたままでも参加できる(その場合はSlackに設定されたプロフィール画像が表示される)。
また、参加者をクリックするとSlackに登録されたプロフィールも表示できるため、比較的多人数のチャンネルでハドルをしたとしても、その人の所属部署や拠点はどこかなどの情報を確認できるのも便利だ。
参加者のプロフィールも確認できる。
出典:Slack
なお、ハドルがビデオ通話をサポートすればSlack利用者はZoomやGoogle Meetなどのサードパーティー製Web会議サービスを使わなくなるかと言われると、そうでもない。
その最もたる理由は、ハドルがSlack非利用者との利用を想定していないからだ。
「Slackコネクト」でつながっている取引先などの社外の相手であればハドルは利用できるが、そうでない場合はURLで招待などができないため、URL等で共有できる別のツールが必要になる。
また、月額無料のフリープランを利用している場合も注意。フリープランでもハドルは使えるが、1対1(最大2名)の対応のみとなっており、3名以上の打ち合わせをするのには向いていない。
これまで通り、ハドルは社内やSlackコネクトでつながった社外の相手と「今ちょっと空いている?」と手軽に打ち合わせをするのに使える、という理解でいいだろう。
2. 行政機関向けエディション「GovSlack」が正式登場
アメリカ政府向けの「GovSlack」。
出典:Slack
Slackはツールを提供する業界を着々と広げている。
その一環としてSlack Frontiersでは、行政機関向けの「GovSlack」を2022年7月に提供するとアナウンスした(プレビュー版は2021年9月)。
GovSlackは主に行政機関向けセキュリティが強化されており、アメリカ政府の「FedRAMP High(取得見込み)」「DoD IL4(取得見込み)」「ITAR」をサポートする。
また、Slackと言えば、外部ツールとの豊富な連携機能(インテグレーション)も魅力の1つ。GovSlackでは一般向けSlackとは別に、厳選されたアプリディレクトリが用意されており、ユーザー認証サービスの「okta」やクラウドストレージの「Box」などが登録されている。
なお、GovSlackは現状ではアメリカのみの展開となるが、Slackは日本の政府機関への導入に必須な「ISMAP」の認定を取得しており、デジタル庁や農林水産省、文部科学省での導入が始まっている。
3. ワークフロービルダーの刷新は2023年へ
新しくなる「ワークフロービルダー」。
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最後に、Slack内で決まった処理の定型化や簡単なアプリをつくれる「ワークフロービルダー(Workflow Builder)」についても触れておきたい。
ワークフロービルダーは現在でも、プロプラン以上のユーザーや組織が利用できる機能で、例えばいわゆる「判子リレー」のような、複数名にまたがる承認プロセスや、定時連絡などの自動化が可能だ。
また、ワークフローをカスタマイズする際に、特定のプログラミング言語を使用せずに、ダイアログなどの指示に従っていれば、作成から公開までできる点も特徴の1つ。
ワークフロービルダーに関する新機能一覧。
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そんなワークフロービルダーだが、2021年11月の「Slack Frontiers 2021」で、さらに再利用可能な「ブロック」ベースでのワークフローの構築、Slack外の別サービスとの連携が可能になる。
例えば、今回のSlack Frontiers 2022では、外部の取引先との見積もり承認のフローの作成・実行についてのデモが披露された。
ワークフロービルダーでは、ボタンの実装も可能。
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例えば、「承認」「非承認」のボタンを実装した場合、それぞれを押したときに別のアクションを実行できる。デモでは「承認ボタンが押されれば、DocuSignから契約書が発行される」様子がわかる。
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特にこのデモでは、外部の取引先とのやり取りにクラウド署名サービス「DocuSign」を利用。
社内では見積り内容が自動的にSlack内で回覧・承認されるだけではなく、すべての担当者の承認後、DocuSign上であらかじめ用意されていたテンプレートから契約書を生成、取引先に送付、取引先が署名してそのフローの完了通知が担当者に届く、といった流れが実現できていた。
注目のポイントとしては、これらのフローの実現と外部ツールの連携がSlackのワークフロービルダー内でノーコード(言語によるプログラミング)なしで構築できる点になる。
さて、このワークフロービルダーが一新される時期についてだが、初出であるSlack Frontiers 2021では2022年に向けての展開と告知されていた。
だが、Frontiers 2022では、デモを担当したSlcakのプロダクトマネージメント担当ディレクターのマーワン・ハデ(Merwan Hade)氏が「来年早々(Early next year)」と発言。どうやら提供時期は2023年まで伸びたようだ。
現在は、Slackは開発者向けベータ版の提供を始めており、専用サイトのフォームから申請できる。
(文・小林優多郎)