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アメリカ最高裁は、これまでにも多くの判決を覆してきた

2022年6月24日、ワシントンDCの連邦最高裁判所前で、「ロー対ウェイド」判決を覆した「ドブス対ジャクソン女性保健機構」判決に抗議する人々。

2022年6月24日、ワシントンD.C.の連邦最高裁判所前で「ロー対ウェイド」判決を覆した「ドブス対ジャクソン女性保健機構」判決に抗議する人々。

Brandon Bell/Getty Images

  • アメリカ連邦最高裁判所は6月24日、約半世紀前に中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド」判決を覆した。
  • 最高裁が自らの判決を覆すことは、珍しいことではあるが、前例がないわけではない。これまで何百件もの判決を覆してきた。
  • 最高裁の歴史の中で最も有名な判決のいくつかは、過去の判例を覆している。

アメリカ最高裁判所は2022年6月24日、50年近く中絶の権利を守ってきた「ロー対ウェイド」判決を覆し、判断を各州に委ねることになった。

このような動きは極めてまれではあるものの、前例がないわけではない。1789年に最高裁が設立されて以来、判事たちは何百もの判決を覆し、中には最高裁の歴史上、称賛される判決も生み出してきた。

最高裁が覆した判決の正確な数は、法的解釈の余地があることから特定は困難だ。例えば、判事は過去の判決を正式に覆すことなく、否定することもある。しかし、アメリカ議会図書館は、これまでの233年の歴史を通して最高裁で覆された判例を追跡しており、その数は235件近くに上ると推定している。

この現象は近年より一般的になっていると、ミネソタ大学の法学部教授で『Constitutional Precedent in US Supreme Court Reasoning』の著者であるデビッド・シュルツ(David Schultz)はワシントン・ポストに述べている。その一因として彼は、現在最高裁の長官を務めるジョン・ロバーツ(John Roberts)判事とその前任者であるウィリアム・レンキスト(William Rehnquist)が、1960年代から1970年代のよりリベラルな判例を問題視してきたことを挙げている。彼らはともに、共和党によって任命されている。

最高裁の歴史において過去の判決が覆された裁判の中でも、特に有名なものを紹介する。

「ブラウン対教育委員会」裁判

公立学校における人種隔離を禁じたこの1954年の裁判によって、その60年ほど前の最高裁判決が部分的に覆された。

1896年の「プレッシー対ファーガソン」裁判では、人種的に分離された公共施設が「平等」である限り、それを認めるという判決を出していた。それが「ブラウン対教育委員会」裁判では満場一致で覆され、後の公民権運動の重要な柱となった。

この裁判で、原告のオリバー・ブラウン(Oliver Brown)はカンザス州トピカ市内の白人だけが通う小学校に娘の通学が許可されなかったため、同市の教育委員会を訴えた。ブラウンは、黒人の子どもたちが通う学校は不平等であり、憲法修正第14条の「平等保護条項」に違反していると主張した。

この裁判は上訴を重ね、最終的には連邦最高裁で争われることになった。原告側を代表して弁論を行ったサーグッド・マーシャル(Thurgood Marshall)は、その13年後に連邦最高裁初の黒人判事となった。

裁判の結果、「公教育の分野では『分離すれど平等』は通用しないと結論付けた」と、当時のアール・ウォーレン(Earl Warren)最高裁長官は述べ、プレッシー判決を正式に覆した。判決文には「人種が分離された教育施設は、本質的に不平等である」と記された。

「ミランダ対アリゾナ」裁判

警察官が犯罪容疑者を逮捕する際、「ミランダ警告」という告知をすることが義務付けられるきっかけとなった1966年のこの判決は、その8年前に下された2つの判決を覆した。

警察は、誘拐と強姦を行ったとして逮捕したアーネスト・ミランダ(Ernesto Miranda)に対し、黙秘することや弁護士の立会いを求めることができることを告げることなく尋問し、自白書を提出させた。裁判ではこれがミランダの権利侵害に当たるとの判決が5対4で下された。

連邦最高裁は最終的に、警察当局は犯罪の容疑者を拘束する際に、彼らが有する権利について告知する義務があることが憲法修正第5条によって定められていると判断したのだ。第5条とは「何人も、刑事訴訟において自己に不利益な証人となることを強要されない」ことを定めた「自己負罪条項」のことである。

この判決により、1958年の「クルーカー対カリフォルニア」と「シセニア対ラゲイ」の2つの判例は、いずれも覆された。これらは弁護権の侵害を訴えたが退けられたという裁判だった。

しかし2022年6月、この「ミランダ警告」を揺るがす判決が下された。警察官のカルロス・ベガ(Carlos Vega)に、第5条の権利を侵害されたとするテレンス・テコ(Terence Tekoh)の訴えが、最高裁において6対3で退けられたのだ。つまり、「ミランダ警告」をせずに犯罪容疑者から証言を得たとしても、警察当局がそれによって非を問われ、賠償金の支払いといったリスクを負うことはないという判決だ。

ワシントンにある連邦最高裁判所。

ワシントンにある連邦最高裁判所。

Bill Clark/CQ-Roll Call, Inc via Getty Images

「シチズンズ・ユナイテッド対連邦選挙管理委員会(FEC)」裁判

組合、営利団体、非営利団体に対して、憲法修正第1条が定める表現の自由の権利を認めたことで悪名高いこの裁判は、政治資金を巡る「オースティン対ミシガン商工会議所」裁判や「マコーネル対FEC」裁判の一部などの判例を覆した。

前者は選挙で候補者を支援あるいは反対する場合の企業の支出を制限することを支持し、後者は企業による選挙資金支出を強固に制限したものだった(もともと「マケイン-フェインゴールド選挙資金改革法」に含まれていた考え方)。

5対4で多数派となった意見の中で、アンソニー・ケネディ(Anthony Kennedy)判事は「シチズンズ・ユナイテッド」判決は、議会が「単に政治的発言をしただけで市民や市民団体を投獄する」ことを禁止していると記した。

「オバーゲフェル対ホッジス」裁判

2015年に行われたこの裁判では、1972年に同性婚を否定した「ベイカー対ネルソン」裁判の判決を覆し、全米で同性婚が認められるようになった。

中道派のスタンスを取るケネディ判事が、5対4の多数派を率い、「婚姻関係にある同性カップルは、異性カップルと同様の法的扱いを受けることが憲法によって認められる」とし、その権利を否定することは「人間らしさを奪うことだ」と述べた。

しかし、6月24日に「ロー対ウェイド」判決が覆されたことを受け、民主党とLGBTQ擁護者は、次は「オバーゲフェル」が覆されるのではないかと危機感を強めている。この可能性は、クラレンス・トーマス(Clarence Thomas)判事が同意意見の中で明確に提起している。

[原文:The Supreme Court has overturned hundreds of its own decisions. Here are some of the most consequential reversals.

(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)

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