7月10日投開票の参院選に向けて、女性候補者の比率とクオータ制への意見を各政党に尋ねた。
撮影:西山里緒
7月10日に投開票される今回の参院選には545人が立候補し、このうち女性候補者数は過去最多の181人となったことが報じられています。全候補者に占める女性候補者の割合も過去最高の33.2%となりました。
一方で、国会において女性がまだマイノリティであることも事実です。
2018年には、男女の候補者の数をできる限り均等にすることを各政党に求める「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)が施行されました。
さらに2020年12月、政府は「第五次男女共同参画基本計画」を閣議決定。「2025年までに国政選挙の候補者に占める女性割合を35%」とする目標を掲げています。
しかしながら、参議院は3年ごとに半数が改選されるとはいえ、今回の参院選ではその目標に達しませんでした。
こうした男女の格差を是正するために今議論されているのが、クオータ制の導入です。クオータ制とは、ポジティブ・アクションの手法の一つで、性別などを基準にし、一定の人数や比率を割り当てる制度です。
Business Insider Japanでは、参院選に候補者を擁立している主要9政党にアンケートを実施。クオータ制の賛否について尋ねました。以下はその回答結果をまとめたものです。
クオータ制の賛否と今回の参院選での全候補者に占める女性候補者の数と比率。女性候補者比率は小数第2位以下切り捨て。
画像:アンケート結果を元にBusiness insider Japan作成。
アンケートの結果、クオータ制に「賛成」と回答したのは立憲民主党、公明党、共産党、れいわ新選組、社民党。一方で「反対」と回答したのは自民党、日本維新の会、NHK党でした。
回答した政党のうち、政府が2025年までの女性候補者比率の目標「35%」に満たなかったのは、自民党、日本維新の会、NHK党。いずれもクオータ制には反対の立場です。
以下、全政党の回答を記載します(太字と見出しは編集部によるもの。また党名は略称)。
自民:「男性議員が男性を代表、女性議員が女性を代表する」考えは採らない
クオータ制については党内でも様々な議論がありますが、議員は等しく全ての国民(都道府県民、市町村民)の代表であり、わが党は「男性議員が男性を代表し、女性議員が女性を代表する」という考え方や、「男性か女性かが、他の全ての資質に優先する」という考え方は採っていません。
女性も男性も政治に参加する機会は平等であるべきという考えのもと、性別を問わずに候補者を募り、その中で最も相応しい者を総合的に判断して擁立するべきであり、始めから性別で枠を設定するという人選の仕方は適当ではないと考えています。
他方、わが党では女性候補者が増えるよう女性が出馬し易い環境づくりに精力的に取り組んでいます。
人材育成に関しても、即戦力となる女性候補者を養成するための講座「女性未来塾 特別講座 女性候補者育成コース」を令和2年に開講し、今回、修了生からも比例候補者を輩出しています。
立憲:男女半々の議会「パリテ」の実現を目指す
政治分野でのジェンダー平等実現にむけて国政選挙においてクオータ制を導入し、男女半々の議会「パリテ」の実現を目指します。
人口の半分を占める女性が政策を立案し、決定する政治の場に参画し、より多様な声が公平に反映され、だれもが生きやすい社会を実現します。
政治分野のジェンダー・ギャップを解消するために、IPU(列国議会同盟)「ジェンダーに配慮した議会のための行動計画」に基づく監査の導入を検討します。
「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」に基づき、男女が政治の政策・方針決定過程に参画し、ともに責任を担うとともに、多様な意思が政治や社会の政策・方針決定過程に公平・公正に反映されるようにします。
公明:政治分野のジェンダーギャップ、是正する必要ある
賛成。政治分野における男女共同参画の推進は、政治に多様な民意を反映させる観点から極めて重要であると考えています。
とりわけ、生活に根差した女性の持つ視点を政治に取り入れるとともに、国際的にも大きいと指摘される政治分野におけるジェンダーギャップを是正する必要があると考えています。
維新:保育費用の一部を党が負担
クオータ制の導入など単純に数値目標を設定するべきなのかどうかは、検討すべき論点で、現時点で慎重である。
女性候補者・女性議員が活動しやすい環境を整えることが極めて重要であり、数値目標だけが先走ることになれば、本人にとっても組織にとっても不幸なミスマッチが起こる可能性がある。
我が党は、女性候補・政治家が活躍できる環境整備のため、ベビーシッターや一時保育の利用料など、保育にかかわる費用の一部を党が負担する制度を開始した。
国民:先輩議員が併走する「メンター制度」導入
賛成。男女の候補者数をできる限り均等にするという目標の下、党として、女性候補者比率35%目標を実現します。
立候補から議会活動までを先輩議員などが伴走するメンター制度を導入するとともに、介護や育児の負担を軽減するためベビーシッター代支援などのメニューを自由に選べる「カフェテリア方式」を導入します。
共産:クオータ制を含め、差別是正に取り組む
賛成です。日本の国会議員の女性比率は、世界の水準から大きく遅れ、世界185カ国中の162位(列国議会同盟2022年5月、衆議院)という低さです。
この数十年間、各国はクオータ制の導入を含む積極的な取り組みで改善を進めてきました。日本でもこうした遅れを打開するために、クオータ制を含む積極的な差別是正の取り組みを進めること、同時に、民意を公正に反映する比例代表制度を中心とした選挙制度への改革などが必要です。
れいわ:公的機関、大企業でもクオータ制を法制化
賛成です。制度やルールを決定する場に女性を増やすことで、ジェンダーによって不公平が生まれる構造をなくし、男女共に働きやすい環境整備を整えます。
政党は候補者及び役員の、公的機関は各種委員会や審議会委員の、大企業は管理職や役員の50%を女性に割り当てるクオータ制を法制化します。
社民:女性議員の多い国、コロナ対応に迅速だった
賛成。現在の硬直化し、行き詰まった政治を変えていくには女性議員を増やすことが肝要。新型コロナウイルスによるパンデミックへの対応を見ていても、女性の首相、女性議員の多い国々が、迅速、適切に対応し効果を挙げた。
また、その国に住むすべての人、特に、子どもやマイノリティ、エッセンシャルワーカーなどへの配慮をしていた。
世界経済フォーラムの男女平等ランキング(2021年3月発表)で日本は対象156カ国中120位。政治分野は146位。これを引き上げるには政党へ義務付けるくらいのことをしないと改善が望めない。
N党:男性の政治参加を阻む恐れもある
反対。議席や候補者の一定割合を義務付けすると、本質的な課題解決を目指さずに無理に女性を擁立する恐れがあるため。
無理に女性を擁立させる動きがあると、女性自身が望まない環境で政治に参加することとなるなど、女性が被害に遭う恐れがあります。
自然と女性自身が政治参加したいと思えるような仕組みづくりを整えることが重要と考えます。また、女性の割合を義務付けることで男性の政治参加を阻む恐れもあります。
今の政治では男女問わず誠実で優秀な政治家不足が深刻な課題であり、男女問わず様々な人が積極的に政治に参加する事が重要だと考えます。
女性国会議員の比率は190カ国中168位
出典:内閣府男女共同参画局(令和4年3月10日「男女共同参画の最近の動き」)※赤枠は編集部による。
内閣府男女共同参画局が2022年3月に発表した「男女共同参画の最近の動き」によると、女性議員の比率は衆議院で9.7%、参議院で23.1%。両院合計で14.3%という結果です。
衆議院の女性議員比率(9.7%)は世界190か国中168位という水準で、仮に衆議院と参議院の合計で比較したとしても、日本の順位は149位にとどまっています。
出典:内閣府男女共同参画局(令和4年3月10日「男女共同参画の最近の動き」)
(文・西山里緒)