2022年3月4日にロケットのブースターが月に衝突し、二重のクレーターを形成した。この画像は5月25日にNASAの月周回無人衛星ルナー・リコネサンス・オービターが撮影した。
NASA/GSFC/Arizona State University
- 2022年3月4日、ロケットのブースターが月に衝突し、二重のクレーターを形成した。
- NASAの月周回無人衛星ルナ・リコネサンス・オービターが、その普通とは異なる二重クレーターを月の裏側で発見した。
- 今のところ、このロケットや衝突の責任を認めている国はない。
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、2022年3月に月の裏側に衝突し、二重のクレーターを形成した謎のロケットの墜落現場を発見した。
NASAの月周回無人衛星ルナ・リコネサンス・オービター(LRO)が5月25日に撮影して6月24日に公開された画像にこの珍しいクレーターが写っていた。2つの衝突地点が重なり、東側のクレーターは幅18メートル、西側のクレーターは幅16メートルだ。
2021年末の時点で、正体不明の宇宙ゴミが月に向かう軌道を進んでいることが発見され、衝突すると予想されていた。しかし「二重のクレーターになるとは予想外だった」とNASAは6月24日のプレスリリースで述べている。
「これまで月に衝突したロケットで、二重のクレーターを形成したものはなかった」
NASAは、ロケットの両端が重くなっていたため、二重のクレーターになった可能性があるとしている。だが、使用済みロケットは片方の端に重いモーター、もう片方に軽い空の燃料タンクがあることが多いため、通常はあまり起こらないことだ。
アリゾナ州立大学の2016年のデータによると、少なくとも47機のNASAのロケットが月面に「宇宙船衝突」を起こしている。
アポロ計画で月に打ち上げられたロケット「サターンV」の第3段ステージにあたるS-IVBの衝突によって形成されたクレーター。NASAが打ち上げた少なくとも47のロケットが月面に「衝突」しているが、これまで二重のクレーターが生じることはなかった。
NASA/GSFC/Arizona State University
謎の物体を最初に発見し、それが月に衝突する恐れがあるとNASAに警告した天文学者のビル・グレイ(Bill Gray)は、ソフトウェアを用いて地球近傍天体を追跡し、そうして得た情報を「Project Pluto」と題したブログに掲載している。その中で彼は「正直なところ、衝突が起きればすぐにその場所を特定できるだろうと簡単に考えていた」と記している。
グレイによると、1972年に月震(月で発生する地震)を研究するために打ち上げられたアポロ16号のブースターは、月に衝突する前にNASAとの通信が途絶えてしまったため、衝突地点は何年もつかめないままだったという。
「数えきれないほどのクレーターの中から、たった1つの小さなクレーターを見つけ出すのは、それほど簡単ではない。アポロ16号のブースターによるクレーターは、衝突から6年も経ってから見つかった」とグレイは記している。「それに比べれば、3カ月程度で見つかったというのは早い方だろう」
今のところ、どの宇宙船保有国も、この謎のロケットの責任を取ろうとしていないと、Universe Todayが報じている。NASAは「ロケットの正体はまだ分かっていないが、二重クレーターを調べることでそれを明らかにするヒントが得られるかもしれない」とプレスリリースで述べている。
[原文:A mystery rocket crashed into moon and left a 'double crater,' NASA says]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
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