AIによる契約書の審査・管理システムを手掛けるLegalForce(リーガルフォース)が6月に約137億円を調達したと発表し、経済が悪化する中での大型調達に注目が集まっている。著名海外VCも参加した本ラウンド。投資家とは一体どのような交渉があったのだろうか。
難航したのも、最優先したのも「バリュエーション」
大型調達が話題を呼ぶ、リーガルフォースの角田望CEO。写真は過去のBusiness Insider Japan取材時に撮影。
撮影:今村拓馬
リーガルフォースにとってシリーズDとなる今回はソフトバンク・ビジョン・ファンド2をリード投資家に迎え、アメリカの著名VCセコイア・キャピタルの中国法人セコイア・チャイナや、ゴールドマンサックスが新規投資家として参加している。
第三者割当増資による調達額は約137億円だ。
28日、リーガルフォースは「137億円調達の裏側を解説!~なぜスタートアップ冬の時代に大型調達ができたのか~」と題したメディア向け講座を開いた。登壇した大木晃氏(リーガルフォース執行役員・経営企画担当)によると、同社が資金調達の準備を始めたのは2021年の夏頃だ。
それから現在までの経済状況の悪化は周知の通りだろう。大木氏は調達の過程をこう振り返る。
「当初はここまでの大型調達をする予定はありませんでした。2桁台後半、90億円ほどの予定だったんです。
ところが市場環境が変化していく中で、投資家とのバリュエーション(株式の値決め)のすり合わせに難航したんですね。見直しを迫られ、想定より低いバリュエーションでの調達になりました。
なので今後に備えて調達額を増やすことにしたんです。市況は厳しくなる一方ですし、バッファとしての資金が必要だと」(大木さん)
今後はアメリカに進出
出典:リーガルフォースHP
投資家とはバリュエーションの交渉を最優先し、その落とし所が見えたところで金額の調整に入った。株価が前回の調達時を下回る「ダウンラウンド」ではないという。
「初めは感触がよかったものの、市況の悪化などもあり、途中で手を引いた投資家の方もいました。反応が変化していったのは2021年12月頃でしょうか。海外の投資家が特にシビアでした」(大木さん)
AIで契約書を審査するサービスについて、政府のグレーゾーン解消制度で「違法と評価される可能性がある」という回答が出た(2022年6月6日)が、この点についても「投資家からデューデリジェンスを受けている」そうだ。
気になる出口戦略(Exit)については、
「投資家と具体的な話はしていません。合併買収(M&A)か新規上場(IPO)か、どちらにしてもオープンに議論していきたいです」(大木さん)
今回の調達資金を元手に、アメリカに進出する予定だ。
「アメリカの契約書レビューを行う会社で、我々ほどの規模のところはほとんどないという認識です。円安の懸念もありますが、これからさらに進む可能性もありますし、あまりそこに引っ張られないほうがいいと思っています」
(文・竹下郁子)