神楽坂で「NFTシェアハウス」が始動。住まいの権利を3万円で買う…ガイアックスらが仕掛け人

Roopt神楽坂DAO

神楽坂に、DAO(分散型自律組織)で運営されるシェアハウスがオープンする。

提供:ガイアックス

ソーシャルメディア事業などを手がけるガイアックスは、空き家を活用したシェアハウス事業を運営する巻組と提携し、東京・神楽坂に「DAO(分散型自律組織)」のような仕組みに基づいて運営するシェアハウスを立ち上げる。6月28日、都内で開かれた記者会見で発表した。

このシェアハウスではNFTを活用し、物件の運営管理をオーナー(不動産事業者)だけではなく、入居者や出資者が担うという。一体どんな仕組みなのか?

そもそもDAO(分散型自律組織)とは何か

Roopt 神楽坂 DAO

DAO型シェアハウスの仕組みのモデル。運営会社「巻組」は中央集権的に運営ルールを決めるのではなく、コミュニティメンバーの一員としてルールの策定に関わる。

出所:ガイアックス

DAOとは「分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization)」の略称で、中央で意思決定をする人や機関が存在せず、組織内のメンバー一人ひとりによって自律的に運営される組織のことを指す。

ブロックチェーン上に書き込まれたプログラムに基づいて契約を自動的に執行する仕組み(スマートコントラクトと呼ばれる)を活用すれば、そうした組織の運営が可能だとされる。

今回の「DAO型シェアハウス」では、初期段階ではスマートコントラクトは実装されていない。しかし、運営ルールや予算の使い途などを運営会社である巻組がトップダウンで決めるのではなく、コミュニティ内で民主的に決定するという点では「DAO的」だといえる。

開始後にはスマートコントラクトのような仕組みも徐々に導入していきたいと、ガイアックス社長の上田祐司氏は語る。

家賃は1カ月あたり「1NFT、3万円」

Roopt神楽坂DAO

「Roopt 神楽坂 DAO」は空き家をリノベした物件で、コワーキングスペースも併設されている。

提供:ガイアックス

神楽坂にオープンするシェアハウス物件「Roopt 神楽坂 DAO」は、巻組が空き家からリノベーションした一軒家だ。2022年9月から、2年間の運営が予定されている。

シェアハウスは、4Kの木造2階建てで、4部屋に10ベッドが設置されている。つまり一度に10人が寝泊まりできるスペースがある。

シェアハウスの最大の特徴は、240個のNFT(ノン・ファンジブル・トークン、非代替性トークン)があらかじめ発行されること。NFTの最初の価格は1個につき3万円で、このNFTの購入者にはシェアハウスに「住む権利」が与えられる

Roopt神楽坂DAO

NFTの保有者は、2つのプランから泊まり方を選ぶことができる。

出所:Roopt公式サイト

NFTの保有者は、1カ月の「入居」プランか、7泊8日の「ワーケーション」プランのいずれかの選択肢から住み方を選べる。後者のワーケーションプランでは、タオルやリネンなどが貸し出され、清掃のサービスもあり、通常の宿泊施設のように泊まることができる。

一人当たり24トークンまで購入でき、最大で2年間住むことが可能だ。

またトークンの購入者は、Discordというチャットアプリに招待され、ここで物件の管理・運営についての議論に参加できる。

不動産を所有する巻組からは、このシェアハウスに2年間で100万円の運営予算が拠出される。コミュニティでの決定に応じて、例えば「空気清浄機を買う」「外部の清掃業者に掃除を頼む」など予算の活用方法を決めるという。

「住む権利」を転売できる

「DAO型シェアハウス」のさらにユニークなポイントとして、NFTの転売が可能だという点が挙げられる(ただし、2年以内に宿泊しなければその権利は失効する)。

なお、このNFTはポリゴンと呼ばれるパブリック・ブロックチェーン(誰でも参加できる、公開されたブロックチェーン)上で発行されており、価格は「仮想通貨の市況に影響を受けて上下する可能性もある」(ガイアックス社長 上田祐司氏)という。

Roopt 神楽坂 DAO

NFTの保有者は、任意の価格でそのNFTを譲渡できる。

出所:ガイアックス

また、入居者用のNFTとは別に、24個のNFTが「運営費」として発行される予定だ。

例えば、「ワーケーション宿泊者への掃除を自分が担う代わりに、NFTを1つもらう」などの議題も提案できる。つまり、運営に深く関わることで自分にもメリットがあるような設計がされているといえる。

DAOを運営する方法については、海外での先行事例も参考にしながら投票や議論のツールなどを決めていきたいと、ガイアックス技術本部開発部部長の峯荒夢氏は語った。

全国の空き家を「DAO化」したい

記者会見の様子。

左から、ガイアックス技術本部 開発部部長の峯荒夢氏、ガイアックス社長の上田祐司氏、巻組代表取締役の渡邊享子氏、巻組マーケティングアドバイザー 廣渡裕介氏。

撮影:西山里緒

巻組は2014年に創業。宮城県石巻市を中心に、空き家物件のリノベーションや、賃貸住宅の管理運営を手がけてきた。

その一方で、空き家のリノベーションやシェアハウスの運営にあたっては、改装をしたりルールを決定した後で利用者から「不便だ」と声が上がることもあり、不動産事業者として課題を感じてきたと、巻組代表取締役の渡邊享子(きょうこ)氏は語る。

「オンラインで内見して即日入居したい、施工もミニマルなデザインがいいなど、Z世代はニーズも多様化している。そういった若い世代が参加型で作っていく住宅を目指したい」(渡邊氏)

DAO型シェアハウスの基盤ともなっている「Roopt」は、シェアハウスと民泊を一体化した「1日から入居できる住まい」として、石巻市などで3軒が運営されている。

第1弾のDAO型シェアハウスの運営の知見も活かして、5年以内に全国で200棟の展開を目指すという。

(取材、文・西山里緒

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