米電気自動車大手テスラ(Tesla)は景気低迷の中で10%の人員削減方針を明らかにした。
Nadezda Murmakova/Shutterstock.com
テスラ(Tesla)のリクルーターとして2カ月間働いたのち、6月17日にレイオフ(一時解雇)されました。
私だけではありません。テスラは目下、時間給労働者を除く従業員の10%を削減するリストラの最中なのです。
事前通告はありませんでした。これからの経営計画に私は組み込まれていない、ただそれだけのことです。勤務したのはわずかな時間ですが、フィードバックはポジティブな内容だったのに。
何のためにレイオフの必要が?
億万長者たちがいくらか支出を抑えて商売をうまくつなごうという話です。何千人もの生活を犠牲にして。
テスラは私の夢だった
テスラから最近レイオフ(一時解雇)され、今回の取材に応じたクイッション・ウォーカーさん。
Quishon Walker
アップル(Apple)とグーグル(Google)でも働いたことがあり、自分は完全なテックマニアと思っています。
だから、テスラで働けることになってひどく興奮しました。ずっと夢見ていた会社ですから。
私のテスラでの仕事は、先進運転支援システム「オートパイロット」部門とディープラーニング(深層学習)部門の人材候補を探すことでした。
自宅は米テキサス州オースティンにあって、リモートで仕事をしていました。
自分用にテスラ車を2台注文するくらい仕事を愛していましたが、レイオフが決まってそれもキャンセルしました。
4月の最終日、私たち従業員はイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)からオフィスに復帰するよう求めるメールを受けとりました。
自分が所属する(リクルート担当)チームは全員リモート勤務だったので、私もフルリモート勤務が続くと考えていました。
採用されたときから上司にリモートでの勤務意思を明確に伝えていたことはもちろんですが、オフィスに出て誰かと協業したりサポートしてもらったりする内容の職務でもなかったので、そう考えたのです。
他のチームメンバーも、懸念は私と同じでした。
6月2日、採用凍結を伝えるメールが届いた
採用凍結を知らせるメールを受けとったのは、カリフォルニア州で開かれたオートパイロット部門のリクルートイベントに参加していた日でした。衝撃を受けました。それまでのキャリア人生で初めての経験でした。
ただ、同僚たちは口々に「心配ないさ」「オートパイロットはイーロンにとって優先度が高く、個人的にお気に入りのプロジェクトだから大丈夫」と言っていたので、私も安心しました。
チームはリクルートの手を緩めることなく、それまでより高いハードルを設定して本当に優秀な候補だけを採用しようと気を取り直しました。
その翌日、従業員の10%削減方針が明らかに
それからは毎日がまさに背水の陣でした。同僚たちは少しピリピリしていましたが、それでもまだ不安は感じていなかったようです。
私は正直心配でしたが、私より長く会社にいる同僚たちの知識や経験を信じていました。一方でそれは不安のタネでもありました。会社に入ったばかりの私には、チームにおける自分の価値を証し立てる業務実績が何もなかったからです。
そして2週間後の6月17日、ある採用候補者と電話をしていると突然、チームメンバーがレイオフされたことを知らせるメッセージが同僚から届きました。
その直後、「ミーティング・テスラ」とだけ書かれたスケジュールが設定された
ミーティングが表示されたとき、テスラでの時間が終わりに近づいていることに気づきました。
およそ45分後、バーチャルミーティングに参加しました。そこには上司と人事の担当者がいて、即時解雇を告げられました。基本的にはあらかじめ用意されたペーパーを読み上げるだけの通告でした。
彼らのせいではないと分かっていたのですが、それでも二人を前に冷静さを保ち、嗚咽を我慢するのは大変でした。
ミーティングを終えて数分は身動きできず、間もなくショックでその場に崩れ落ちました。そして、泣きました。
何人かの友人に電話をして、自分の身に起きたことを伝えました。そのうちの一人の部屋を訪ねると、集まってくれた友人たちが食事を用意してくれました。
話しているうち、私たちはリンクトイン(LinkedIn)に投稿すべき内容を思いついたのでした。
30分後、PCにログインしようとすると、メールは無効になっていた
すでにあらゆる(テスラへの)アクセスは遮断されていました。
同僚にメールを送ることすらできなくなりましたが、逆にリンクトインを通じて皆からメッセージが届きました。次のチャンスが見つかるようにと、いまも全面的にサポートしてくれています。
でも、結局のところ、あらゆる面で状況は最悪なままです。景気後退入りが現実味を帯びるなか、週を追うごとに何もかもが大変になっていく気がしています。
仕事探しが大変すぎて、レイオフされた他の人たちの苦労も想像がつく
レイオフされた他の何千人もの人たちと同じように、私もいま次の仕事を探している最中です。私は他の人よりは経済的に恵まれていると思いますが、それでも厳しいです。
レイオフされずにテスラに残ることができた従業員の人たちも、同じくらい大変だと思います。仕事量は倍増する勢いですし、全社的に(1割という)大規模な人員削減が進むなか、効率的に仕事をこなし結果を残さなくてはならないプレッシャーも大きいでしょう。
リンクトインの投稿を読んでいると、同じようにレイオフの犠牲になった多くの人たちの姿が目に浮かび、落胆させられます。そんななかでも、テスラは別の分野では採用を続けており、そういう現実にも傷つけられます。
皆さんに言いたいのは、新しい仕事を始める前には、その会社のカルチャーをしっかり調べてほしいということです。現役従業員とコンタクトを取り、厳しい質問を投げかけてみてください。身近な人を頼りにしてください。そして、自身の心の健康を保つために必要なことをやってください。
(Insiderはテスラに本記事の内容についてコメントを求めたが、公開までに返答はなかった)
(翻訳・編集:川村力)