今やマーケティング担当者の半数が、年間約680万〜6800万円をインフルエンサー・マーケティングに費やしている。
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2022年はインフルエンサー・マーケティングにとって、重要な年になると予想されていた。1月にInsider Intelligenceは、インフルエンサー・マーケティングの支出額(ソーシャルメディア上で商品をサポートするためにクリエイターに支払われる費用)が41億4000万ドル(約5630億円、1ドル=136円換算)に達すると予測した。
しかし、経済全体が逆風にさらされる中、この見通しは少し楽観的かもしれない。
とはいえ、経済的に不透明感がある中でも、インフルエンサー・マーケティングはマーケティングの中核的な手法として定着してきている。
インフルエンサー・マーケティングのプラットフォーム企業であるトラッカー(Traackr)は、2022年5月に約1000人の消費者と500人のマーケティング担当者を対象に調査し、「インフルエンサー・マーケティングの影響」というレポートを公表した。このレポートは、業界の一般的なトレンドに加え、消費者やマーケティング担当者がどのプラットフォームをどのような目的で利用しているかを調査している。
調査によると、70%の消費者が、購買の決定にインフルエンサーが一役買っていると回答した。また59%の消費者は、おすすめの商品を探すためにインフルエンサーに頼っていると答えている。
本稿では、トラッカーの2022年のレポートから5つのポイントを紹介する。
1. 消費者が好むソーシャルコマースのプラットフォームは InstagramとFacebook
Metaが所有するInstagramとFacebookで最も人気のある商品は、ファッション、ビューティ&パーソナルケア、電子機器だ。
また、この2つに次いでよく利用されているプラットフォームとしては、YouTube、TikTok、Pinterestが順番に上がる。
消費者がどのような商品を購入する可能性が高いかは、どのプラットフォームを利用しているかによって異なる。例えば、YouTubeでは電子機器を、TikTokのユーザーはファッションを購入する傾向がある。
ソーシャルコマースは今や業界のバズワードとなっており、各プラットフォームはこの分野での優位性を競って、新しいツールや機能を展開している。例えば、Instagramではユーザーが投稿に商品をタグ付けできるようになり、インフルエンサーが利用できるネイティブ・アフィリエイト・マーケティング機能をテスト中だ。
2. 最も日常的に利用されているのはYouTube
買い物をする際によく使うのはInstagramやFacebookだとしても、最も日常的に利用されているのはYouTubeだ。2位はInstagram、3位はFacebook、4位はTikTokと続く。
こうしたユーザー動向にもかかわらず、マーケティング担当者たちは、インフルエンサー・マーケティングにはFacebookとInstagramを最もよく使うと回答し、YouTubeは3位となっている。
3. 2022年はスポンサー付き投稿が増加
トラッカーがさまざまなプラットフォーム上で4万人以上のインフルエンサーのコンテンツを分析した結果、スポンサードコンテンツと明記された投稿が前年比で23%増加していたという。
多くのクリエイターがフルタイムのインフルエンサーとして生計を立てられるのは、こうしたブランドコンテンツのおかげだ。
これらのブランドコンテンツは、企業にとっても効果があるとみられている。82%のマーケティング担当者が、インフルエンサー・マーケティングによって売上が伸びたと回答している。
4. マーケティング担当者の51%が、インフルエンサー・マーケティングに年間5万〜50万ドル(約680万〜6800万円)を費やす
調査では、約15%のマーケティング担当者が100万ドル(約1億3600万円)以上をマーケティングに費やしたと回答している。インフルエンサー・マーケティングはまだ比較的新しく、この分野で4年以上の実績があるマーケティング担当者は20%に過ぎないにもかかわらず、これだけの金額を投じているのだ。
Insider Intelligenceは、2023年までにインフルエンサー・マーケティングの支出額は50億ドル(約6800億円)に達すると予測しているが、景気後退の可能性がこのペースをどのように乱すかはまだ不透明だ。
5. 6カ月以上の長期にわたるブランドパートナーシップはほとんどない
インフルエンサー・マーケティングの施策期間については、82%のマーケティング担当者が6カ月未満と回答した。
しかしトラッカーは、それでは最善の戦略とはいえないと考えている。同社のプロフェッショナル・サービス部門のグローバル・ディレクターを務めるホリー・ジャクソン(Holly Jackson)は言う。
「ブランド全体で考えれば、インフルエンサーと長期的なパートナーシップを築くほどインパクトは大きくなります。信頼できるインフルエンサーと長く良好な関係を築けていることが消費者に伝われば、インフルエンサーの勧めに従って消費者は行動してくれる可能性が高まります」
(編集・大門小百合)