中国の火星探査機が撮影した、標高5万9055フィート(約18キロメートル)の火山アスクレウス山の上から見下ろした画像。
CNSA/Handout via Reuters
- 中国の火星探査機が火星の全体を撮影したと中国国営メディアが伝えた。
- それによると、探査機と探査車から構成される天問1号は、その科学的な目標を達成したという。
- 探査機の写真からは、火星上に広大なクレーター、アメリカの横幅と同じ深さの峡谷、火山の姿が確認された。
中国の火星探査機が、火星の最も際立った特徴を捉えた驚くべき画像を送ってきた。そしてこれらの画像は新しいフォトライブラリーの一部に過ぎない。
中国航天科技集団有限公司が2022年6月29日にWeiboで発表したところによると、火星探査機「天問1号」が火星全体を撮影したという。中国は今回の発表と同時に、火星表面の複数の画像を公開した。
火星のアラビア大陸の高地を埋め尽くす衝突で出来たクレーター。
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2021年2月、探査機は火星の軌道に入ってから、1300回以上火星を周回していると中国国営メディアは報じている。天問1号は、火星に探査車を運んでユートピア平原に降ろした。ユートピア平原は古代の火山岩が広がる広大な地域であり、地表下に大量の水が凍結している可能性がある場所だ。この探査車は、古代中国神話の火の神にちなみ「祝融号」と名付けられ、地中レーダーを使ってこの地域を探索し、水の氷を探すことを目的としている。
2022年6月29日に中国国家航天局(CNSA)が発表した、探査車「祝融」による画像。
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NASAや中国国航天局などの宇宙機関が、いずれ火星に人類を送るようになれば、水は極めて重要な資源となるだろう。水は宇宙飛行士の生命を支えると同時に、水素と酸素に分解されてロケットの燃料にもなる。火星に向かう宇宙船に、往復分の水、酸素、水素を十分に積み込めるとは思えないので、火星で採掘する必要がありそうだ。
火星の南極にある氷冠。火星のほぼすべての水がここに蓄えられている。
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国営メディアによると、探査車の祝融号は、火星の極寒の冬の間、エネルギーを節約するための冬眠に入る前に約2キロメートル移動したという。探査車は火星に春が到来する2022年12月に再び稼働する予定だ。
これは、火星の軌道に探査機を送り込み、火星表面へ着陸し、探査車も投入するという一連の作業を一度に行った初の火星探査ミッションだった。
着陸カプセルに着陸船と探査車を搭載し、火星へ向かう探査機「天問1号」。2020年12月16日に公開された写真
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クレーターはもちろん画像の中でも目立つ特徴だ。下の画像は、太古のマウンダー・クレーターの縁を示すもので、幅は約56マイル(90キロメートル)、部分的に塵や砂、そのほかの火星の物質で満たされている。
火星にあるマウンダー・クレーターの縁。
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画像の1枚は、アメリカの横幅とほぼ同じ長さのマリネリス渓谷(Valles Marineris)の絶景をとらえたものである。この渓谷の深さは最大4マイル(約6.4キロメートル)にも及ぶ。ちなみに地球上のグランドキャニオンの深さはわずか1マイル(約1.6キロメートル)だ。
火星にある全長2485マイル(約4000キロメートル)のマリネリス峡谷。
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中国国営メディアは、火星の地上の探査車と軌道上の探査機で構成される天問1号の科学的任務が完了したと報じている。CNSAによると、探査機は1040ギガバイトの生データを地球に送信しており、最終的にはこれを一般公開する予定だという。
今のところ、この任務で何が得られたのかは明らかにされていない。
[原文:China's Mars spacecraft has photographed the entire red planet, state media says]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)
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