トルコのエルドアン大統領(左)とアメリカのバイデン大統領。
Photo by Turkish Presidency /Murat Cetinmuhurdar /Handout/Anadolu Agency via Getty Images
- バイデン大統領はトルコのエルドアン大統領がNATOの拡張に最終的に譲歩したことを受け、同大統領を賞賛した。
- エルドアンが抱える人権問題にもかかわらず、バイデンは好意的な態度を示している。
- ホワイトハウスは、2021年12月の「民主主義サミット」にトルコを招待しなかった。
アメリカのジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は2022年6月29日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdoğan)大統領がようやくスウェーデンとフィンランドのNATO加盟に同意したことを受けて、彼を賞賛した。これはエルドアンが自国での権力をますます拡大し、人権侵害が広く報告される中でのことだった。
バイデンは、マドリードで開かれたNATO首脳会議に合わせたエルドアンとの会談の前に、「フィンランドとスウェーデンに関する状況をまとめてくれたことに、特に感謝したい」と記者団に語った。
バイデンは、ロシアの侵攻時にトルコがウクライナを支援したことについて触れた後で、「あなたはすばらしい仕事をしている」とエルドアン大統領を褒め称えた。
エルドアン大統領は、数十年間中立を保ってきたフィンランドとスウェーデンが同盟への加盟を申請したことで、実質的にNATOを人質にとっていた。このトルコの指導者は6月28日、スウェーデンとフィンランドが以前から行っていた武器禁輸について両国が大きな譲歩をしたため、彼も譲歩した。NATOはトルコの承認なしには両国の加盟を進められないため、エルドアンは大きな力を持っていた。
バイデンは、エルドアンがますます強権的な人物になりつつある中で、今回の抱擁を行った。トルコの人権状況が悲惨なものであることは、ホワイトハウスが2021年12月に開催されたアメリカ主導の「民主主義サミット」にNATOの同盟国であるトルコを招待しなかったことでもわかる。2021年には、超党派の54人の上院議員が、トルコの人権状況を改善させるためにもっと努力するようバイデンに要請している。
「アメリカは同盟国やパートナーに対してより高い基準を求め、人権や民主主義の後退の問題について率直に話をしなければならない」と上院議員たちは2021年2月に書いている。
「我々は、エルドアン大統領とその政権に対し、国内外での反対意見への弾圧を直ちにやめ、政治犯や良心の囚人を解放し、権威主義的な路線を転換すべきことを強く求める」
アメリカとトルコの関係で最近最も悪名高いエピソードのひとつは、トランプ政権時代にエルドアンが訪米した際、ワシントンD.C.で護衛と支持者が抗議者と衝突したことだ。
2017年にトルコ大使公邸の外で起きた乱闘で負傷したのは、抗議者だけではない。ガーディアンによると、機密解除された国務省の文書には、6人のシークレットサービスも負傷したと記されている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、エルドアン政権が「トルコの人権状況を数十年後退させた」と述べている。
歴史にはアメリカや西欧民主主義の価値観を共有していない指導者をアメリカ大統領が受け入れた例が数多くある。アメリカは、30年近く権力を握っていたエジプトのホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)のように、自国民をひどい目に遭わせながらアメリカの利益に沿う指導者を優遇する外交政策を実践しているとしばしば批判されている。
そして、バイデン大統領がエルドアン大統領とサウジアラビアに好意を示したのは、大統領が人権問題を外交政策の「中心に据える」と強調した後のことだった。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)