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飲食店から顧客まで料理を運ぶための配達員を雇うと、フードデリバリー・サービスはほとんどの場合儲からない。
フードデリバリー市場が振るわない中、ウーバーイーツ(Uber Eats)やグラブハブ(Grubhub)などのアプリ、さらにはチェーン展開している飲食店などは、ドローンや自動走行型ローバーを使ってみるといった、より費用対効果の高い宅配方法を模索せざるをえなくなっている。
現在、アメリカのフードデリバリー業界最大手であるドアダッシュ(Doordash)は、自社の集荷拠点を利用し、受けた注文を自動走行車に伝えて宅配を行うことで、ラストマイル物流のプラットフォームを自動化しようとしている。
2022年6月28日に提出された連邦特許申請書によれば、ドアダッシュは「生鮮食料品のリアルタイム・オンデマンド注文のラストマイル・デリバリー改善のため」に自動走行車の実用特許出願を行った。
「ラストマイルの宅配ルート上のさまざまな機能を自動化することで、人為的に起こりうるミスを減らし、システムの信頼性、予測可能性、効率性を大きく向上させる」とその特許申請書には書かれている。
特許申請書の中で、ドアダッシュはラストマイル物流のシナリオをいくつか説明している。そのひとつが「業者用デポと顧客用デポといった配達拠点を1つ以上」設置するというものだ。これらの拠点はデリバリーの起点となるハブとしての役割を担う。
自動走行車、配達員、ドローンといった拠点に配置されている運び手が、業者用デポと顧客用デポの間の商品運搬を行う、と特許申請には記述されている。
申請書によれば、これらの拠点の何カ所かには注文商品の保存・回収用の自動ロッカーが装備されるという。注文商品はドライバーや自動走行車などにより出し入れが可能だ。
自動走行車には「生鮮食料品保存用コンパートメント」がついており、顧客は認証を行うことで商品を取り出すことができる。車体の高さはおよそ「3~5フィート(約0.9~1.5メートル)」で、ウーバーが支援するサーブ・ロボティクス(Serve Robotics)が運行するローバーに近いサイズとなるようだ。
ドアダッシュは自動走行車の分野ではウーバーに後れをとっている。2022年5月にウーバーイーツはカリフォルニア州のハリウッド地域の顧客向けに、サーブ・ロボティクス社の自動走行車両によるサービスの提供を始めている。
サーブ・ロボティクスの自動走行車両によるデリバリー。
Serve Robotics
ロサンゼルスとテキサス州の一部には、サーブ・ロボティクス社のロボットやロボット業界のスタートアップ企業、ココ(Coco)による遠隔操作ローバーが配備されている。サンフランシスコを拠点とするドアダッシュの特許申請書によれば、これらのローバーは歩道に沿って移動するが、ドアダッシュは、歩道だけでなく車道でも運行できる自動走行車両を検討している。
「自動走行車は、車道や歩道を走行するために必要なデータ処理を行うコンピューターシステムを搭載している」と特許申請書には記載されている。「自動走行車は生鮮食料品の保存・回収のための自動ロッカーと連動するように設定が可能」だという。
特許について尋ねると、ドアダッシュの広報担当者は「ドアダッシュ・ラボの目標は、ロボティクスソリューションの開発と実装により、ドアダッシュのコミュニティをサポートし、当社全体のネットワーク効率を上げ、結果としてドアダッシュの全てのお客様のユーザー経験が向上することです」と語った。
ドアダッシュが道路を走る自動走行車を作れば、同社はニューロ(Nuro)のような自動走行車の企業との直接競争を強いられることになるだろう。ニューロの自動運転ロボットについては、宅配ピザのドミノ(Domino’s)がすでにヒューストンで車道と歩道での走行試験を実施している。ニューロは、メキシコ料理レストランチェーンのチポトレ(Chipotle)の支援も受けている。
一方で、小売と物流の両業界における巨大企業は、このような自動運転技術から利益を生み出そうとしている。
ウォルマート(Walmart)の広報担当者が最近Insiderに語ったところによると、同社はニューロを含む自動運転企業4社と提携し、ミドルマイル(業者の店舗や倉庫間の配送)、ラストマイルのデリバリーオペレーションに注力しているという。
ウォールマートによると、フェニックスからマイアミまでの全国横断的な試運転で、自動走行車により、店舗や顧客へ極めて効率的に製品を配達することができたという。
このような考え方は小売りのライバル企業アマゾンにもあり、同社はカリフォルニア州を拠点とする自動走行車の企業、ズークス(Zoox)を2020年に12億ドル(約1600億円、1ドル=136円換算)で買収し、2021年には自動運転トラック運送のスタートアップ企業、プラス(Plus)から1000台の自動トラック運転システムを購入することに合意している。
配送最大手のフェデックス(FedEx)とUPSも自動化の将来に賭けており、それぞれオーロラ(Aurora)やウェイモ(Waymo)に投資している。
(編集・大門小百合)