撮影:西山里緒
子育て支援政策について答弁していると「まずは自分が子どもを産んだら?」とやじを飛ばされる。選挙活動中、有権者から「投票するからさ、携帯番号教えてくれる?」と言い寄られたり、握手をしながら抱きつかれる……。
これは、実際に地方議会議員から内閣府に寄せられた、セクハラや票ハラ(有権者が投票への見返りにさまざまな要求をするハラスメント)の事例だ。
セクハラ・票ハラは女性の政治参画を阻む要因の1つだとも指摘される中、各党はこの問題にどのような対策を講じているのか。7月10日に投開票が迫る参院選を前に、Business Insider Japanでは主要9政党に一斉アンケートを実施した。
質問の概要は以下で、それぞれの設問ごとに回答をまとめた(全質問と回答は、記事末尾に添付している)。
- セクハラ・票ハラなどを防止するためにどのような取り組みをしているか。
- 所属議員や候補者から、セクハラや票ハラなどの被害が報告されたことはあるか。
- 報告を受けた場合、どのように対応したか、あるいはどのように対応することを定めているか。
有効な取り組み1位「相談窓口」あるのは…立憲、国民、共産
設問は「所属議員や候補者のセクハラ・票ハラなどを防ぐために、党としてどのような取り組みをしていますか」。回答から一部抜粋(クリックで拡大画像に遷移します)。
画像:アンケート結果を元にBusiness Insider Japanが作成
所属議員や候補者のセクハラ・票ハラを防ぐために党としてどのような取り組みをしているかという質問に対しては、回答がばらけた。
ハラスメントの相談機関(窓口)を設置していると回答したのは、立憲民主党、国民民主党、共産党の3党。また立憲民主党と社民党は、外部のカウンセラーや弁護士を確保していると回答した。
党独自にハラスメント防止のための指針や対策をまとめているとしたのは、立憲民主党と国民民主党。定期的な研修会や学習会に取り組んでいるとしたのは公明党と共産党だった。
れいわ新選組も、専門の講師によるセクハラ防止のためのワークショップを2022年に入ってから3度実施した、と答えた。
なお内閣府が実施した調査によると、ハラスメントをなくすために有効な取り組みとして最も多く挙げられたのが「(政党や議会事務局などでの)相談窓口の設置」だった。
2位は「有権者、支援者、議員への啓発や研修」、3位は「監視機関の設置」だった。
実際に被害の報告があったのは…立憲・共産・N党のみ
設問は「過去に所属議員や候補者からセクハラ・票ハラなどの被害事例について報告が上がったことはありますか」(クリックで拡大画像に遷移します)。
画像:アンケート結果を元にBusiness Insider Japanが作成
では、こうした対策はどの程度「機能」しているのだろうか?
議員や候補者から過去にセクハラ・票ハラなどの被害報告が上がったことがあるか、という質問に対して「報告があった」と回答したのは、立憲民主党と共産党だった。「セクハラはないが票ハラはあった」と回答したのは、NHK党という結果になった。
前出の内閣府調査によると、議員活動や選挙活動中に、有権者や支援者、議員などからハラスメントを受けたことがあると回答した女性は約6割(57.6%)。なお、男性でも約3割(32.5%)がハラスメントを経験しているという。
この結果について、女性議員や候補者へのハラスメント被害相談や支援などを行う団体「Stand by Women」の代表・濵田真里さんは「(内閣府データとの乖離に)率直に驚きました」と語る。
「被害報告が1件でもあったからダメだという話では全くありません。(相談窓口は)使いやすさが重要で、些細な悩みの段階で相談がある方が重大なハラスメントの予防にもつながります。(報告がないというのは)内部で起きていることを把握できていないということではないでしょうか」
「まだ対策を取り始めた段階だから、という理由もあるとは思いますが、今後はハラスメント被害を言い出しやすい空気を作っていくことも必要かと思います」
どう対応したか?4党が具体回答なし
設問は「(議員や候補者から)被害事例の報告があった際に、党としてどのような対応を取りましたか。または、どのような対応策をとることを定めていますか」。回答から一部抜粋。具体的な回答がなかったものはグレーアウトした(クリックで拡大画像に遷移します)。
画像:アンケート結果を元にBusiness Insider Japanが作成
アンケートではさらに、被害報告があった時にどのような対応を取ったか(また、どのような対応を取ることを定めているか)も尋ねた。
こちらも、具体的な対策を挙げたのは立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党、NHK党にとどまった。
前出の濵田さんは、「個々の事例により適切に対応という回答が目立つが、どのように仕組み化しているかも重要」と話す。
「例えば、あなたが相談したらこういうルートでこんな専門機関につながります、のようなフローチャートが公表されていると、被害者も相談しやすい。自分の意見(相談)が尊重される、とあらかじめ分かっていれば、安心ですよね」
また濵田さんは、そもそも党内にダイバーシティがあるかどうかでも、ハラスメントの被害について言い出しやすい空気かどうかは変わってくるという。
今回の参院選では、女性候補者比率が初めて3割を超えたことが報じられている。
一方で日本の国会議員の女性比率は14.3%(2022年3月時点、衆参合計)と世界で見ても低い水準(190カ国中149位)だ。女性議員の比率を増やすためにも、党の内外でハラスメントに対する意識を高めていく必要があるだろう。
(取材・文、西山里緒)