記録的な猛暑で、熱中症に特化した保険が注目を集めている。一体どのような仕組みなのか?
出典:PayPay保険サービス
記録的な猛暑で「熱中症保険」の加入件数が急増している。
一方で、思い出すのはコロナ禍で一躍注目を浴びた「コロナ保険」だ。想定を上回る申し込みがあったため、保険金を10分の1に減額したり、保険料の改定を行った事業者がいたことは記憶に新しい。今回はそうしたリスクはないのだろうか?保険会社に尋ねてみた。
熱中症保険の加入件数が6倍に
「熱中症お見舞い金」のプラン一覧。200円からの月額プランもある。
出典:PayPay保険サービス
Zホールディングス傘下のPayPay保険サービスが提供するのが、「熱中症お見舞い金」だ。
保険期間中にいわゆる熱中症(日射病、熱射病)で、医師から点滴治療を受けた場合には治療保険金が、1泊2日以上の入院をした場合には入院保険金が支払われる。
1日100円の保険料から加入でき、屋外での活動を予定している日や暑さが厳しい日など、当日の午前9時までに申し込むと午前10時から保障が開始される。キャッシュレス決済のPayPayアプリ内で手続きが完結する手軽さと柔軟さがウリだ。
PayPay保険サービス社によると、国内複数の地域で最高気温30℃以上の真夏日を記録した6月25日(土)、26日(日)の加入件数は、前週比で約6倍になったという。
被保険者の約25%は子どもで、保護者が子どもの熱中症リスクに備えて加入するケースが多いそうだ。
コロナ保険では保険金や保険料の改定も
PayPay保険サービスは「コロナお見舞い金」も提供している。
出典:PayPay保険サービス
熱中症に特化した保険の存在は心強いが、思い出すのは新型コロナウイルス感染症に備えたコロナ保険だ。
PayPay保険サービスが2021年12月から開始した医療従事者や飲食・物流などで働く人を対象にした「コロナお見舞い金」は、2022年2月に保険料を3カ月500円から3倍の1500円に引き上げ、6月には医師に新型コロナだと診断された際の保険金を5万円から2万円に減額していた。
コロナお見舞い金の引受保険会社である損害保険ジャパンはこうした改定について、「感染状況を踏まえた」判断だと説明している。
他にも保険ベンチャーjustInCase(ジャストインケース)は、新型コロナに感染した場合に入院一時金を支払う「コロナ助け合い保険」の保険金を10分の1に減額したとして、関東財務局から2022年6月に業務改善命令を受けた。同社は「新型コロナ感染症の感染拡大により、保険金支払いが当初の想定をはるかに上回る金額となり、保障内容の維持が困難となった」と説明している。
熱中症は過去のデータから予測できる
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加入が急増する熱中症保険にも、保険料引き上げや保険金の減額など、コロナ保険同様のリスクはないのだろうか?
「熱中症お見舞い金」の引受保険会社である、住友生命子会社のアイアル少額短期保険の担当者は言う。
「熱中症は新型コロナのように、人類が経験したことのない変異を繰り返すウイルスに起因する疾病ではありません。熱中症保険は過去の統計データおよび一定の予測に基づいた商品設計を行っています」(住友生命保険相互会社・調査広報部)
コロナ保険よりは安定した設計になっているという熱中症保険。ただ、保険金の支払いが想定を上回れば当然見直しもありうる。
「保険金の支払いが想定よりも大幅に増加した場合は、保険料改定などの検討をする可能性があります。現在どの程度の加入者を想定した設計になっているのかについては、回答を差し控えさせていただきます」(住友生命保険相互会社・調査広報部)
日によって気軽に利用できる、まるで日傘のような存在の熱中症保険。連日の猛暑で利用者はどこまで拡大するだろうか。
(文・竹下郁子)