連日の猛暑、熱中症対策で「日傘男子」が増殖中。「シェア傘」も日傘需要で利用拡大

7月1日、渋谷の様子。

7月1日、渋谷の様子。街を見渡すと、男女問わず日傘を差している人を見かける。

撮影:三ツ村崇志

「すごい日差しを防いでくれて、暑くない。やばいっす。

日に当たりながら歩いている人は、正直馬鹿なんじゃないかなって思ってしまうくらいです。日陰って涼しいじゃないですか。常に自分の上に日陰があるんですよ?

最近話題の「日傘男子」、都内在住の会社員・ゆうやさん(仮名・29)は、日傘の良さをこう熱弁する。

季節外れの猛暑が続く中、熱中症対策としての日傘の需要が高まっている。「日傘は女性のもの」というイメージも、崩れ始めている。

日傘、差さない理由がない

ゆうやさんが日傘を使い始めたのは、約2年ほど前。昔から日傘を使いたいとは思っていたというが、市販されていた日傘は女性向けのかわいいデザインのものが大半。買う気にはなれなかった。

「そんなときに、mont.bellの日傘を見つけて、このデザインなら男性が持っていても違和感がないなと思って買ったんです。身を守るための『装備品』みたいな感覚です」(ゆうやさん)

ゆうやさんは、日差しが強い日には日常的に日傘を使っている。

日差しが弱いときには一般的な折りたたみ傘のように畳んで収納しておき、ゲリラ豪雨などの突然の雨に降られたときには、普通の傘としても利用できる。

コンビニなどで販売されている数百円程度のビニール傘と比べると、ゆうやさんが持っている日傘は4950円(税込)と少し高い。「確かに傘としてはちょっと良い値段の出費ですが、むしろ『その価格で良いんですか?』という印象です」と、ゆうやさんは使い勝手に満足しているという。

日傘を差す男性が増えてきている…とはいえ、まだ数は少ない。ゆうやさん自身、少数派であるということは認識しているというが「それは気にしない方が楽です。みんな差した方が良いですよ」と平然と語り、「日傘を差さない理由はない」とまで言い切る。

「日本では、『日傘は女性が差すもの』という認識が世間に浸透しすぎているんだと思います。社会的なトレンドもユニセックスになっていますし、デザイン面も解消されつつあります」(ゆうやさん)

日傘男子「シェアリング」でじわり増加

公共交通機関の駅構内などに、アイカサのスポットが設置されているケースが多い。

公共交通機関の駅構内などに、傘のシェアリングサービス「アイカサ」のスポットを見かけることは多い。

撮影:三ツ村崇志

「ここ数日の酷暑で、晴れている時間帯での傘のシェアリングの利用が明らかに増えています」

傘のシェアリングサービス「アイカサ」の広報担当は、Business Insider Japanの取材に対してこう語る。

アイカサは、全国13都道府県で1000スポット以上に設置した「置き傘」をアプリを通じて利用できる「傘のシェアリングサービス」だ。東京には約700スポット存在し、1スポットあたり20本前後の傘が設置されている。ユーザーは使いたいときに傘を借りて、好きなスポットに返却することができる。

利用料金は、1度傘を借りると24時間以内であれば何回借りても70円(税込)だ(一度に借りられる傘の本数は2本まで)。同月内の利用料金は420円(税込)が上限で、それ以上は何度利用しても料金は変わらない。280円(税込)で月に何度でも利用できるサブスクリプションプランもある。

実は、アイカサが設置している傘の2〜3割が90%以上の遮光・遮熱性能を持つ「日傘」としても活用できる(当然、雨用にも使える)。また、全天候型の通常の傘でも、色が濃く遮光性の高いデザインのものであれば、「十分日傘として使えます」(アイカサ・広報)と言う。

アイカサで提供している全天候型の通常の傘(デザインはいくつかある)。普通の傘だが、黒いため日傘としても活用できそうだ。

アイカサで提供している傘(デザインは複数ある)。裏地が薄いため、この傘は一般的な傘だ。ただ、色が黒いため日傘としても利用もできそうだ。

撮影:三ツ村崇志

広報によれば、雨の日と比べると利用数は少ないとはいえ、4月頃から徐々に日傘としての利用(晴れている時間帯での利用)が増え、ここ数日の酷暑の中でも利用が加速している。

アイカサでは2020年から環境省と連携して、熱中症警戒アラートが発令された場合に傘を無料で提供するキャンペーンなども実施している。環境省に今年の取り組みを尋ねると「2022年についても引き続き取組を進めたいと考えておりますが、調整・検討の状況です」と回答があった。

こういった背景もあり、アイカサとしても今後、遮光性の高い日傘として使えるタイプの傘の拡充を検討しているという。

また、この夏の使われ方について聞いてみると、やはり「日傘男子」は増えているようだ。

「SNSなどを見ていると、男性のユーザーが日傘として私たちのサービスを利用しているケースが多くみられています」(アイカサ・広報)

アイカサでユーザー調査を実施したところ「日傘を購入するのは恥ずかしいし、自分の日傘を持ちたいというほどではない」というユーザーが、あまりの暑さに思わずアイカサを日傘として利用しているケースがみられているという。

常に携帯し続けなくてもよい、シェアリングサービスならではの利用の手軽さから好まれているようだ。

環境省「男女問わず日傘使って」

7月1日15時の東京各地の予想気温。

7月1日15時の東京各地の予想気温。

画像:気象庁

7月1日には、関東から関西、九州地方に至るまで、広い範囲に熱中症警戒アラートが発令されている。

日傘の利用は、一般的な熱中症防止策として、男女問わず推奨されている。

熱中症予防サイトを運営する環境省環境安全課の担当者も

「環境省としましては、日傘の活用は熱中症の防止に有効と考えておりますので、男女関係なく活用いただきたいと考えています。熱中症環境保健マニュアル2022においても随所で日傘の有効性について記載しています」

と、Business Insider Japanの取材に答えた。

環境省では、熱中症予防情報サイトを運営しており、熱中症対策に関するさまざまな情報発信を進めている。

(文・三ツ村崇志

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