ベンチャー冬の時代に設立した「ココナラVC」が続々投資。ファンド規模「2倍目指す」と発表

南氏

2022年1月に設立されたココナラスキルパートナーズ。会社のロゴを持つ南社長。

撮影:横山耕太郎

ココナラが2022年1月に始めたVC事業「ココナラスキルパートナーズ」が、積極的な投資を続けている。

ココナラ上場のわずか約1年後にVC事業に着手したことが話題となったが、その後はウクライナ侵攻や世界的なインフレ、大手テック系企業の株価の下落などの影響を受け、日本の株価も低迷。市況の悪化を受けてVCは消極姿勢に転じ、スタートアップは「冬の時代」を迎えている。

そんな中、ココナラVCでは1月からの約半年で、約10億円を調達し、11社に投資したと発表した。 次の目標を「2023年4月までに20億円」に引き上げ、攻めの姿勢を貫いている。

「価値のある協調投資」という立ち位置

リリース

ココナラスキルパートナーズは、出資だけでなく、一流のスキルを持つ人材に相談できる体制を作っている。

提供:ココナラスキルパートナーズ

「こんなにマーケットが崩れるとは思っていませんでした。金融機関にココナラVCへの出資をお願いしたら、『投資会社も損失を出していて余力がない』と言われたり、『ここ数年でVCにお金を入れたため、新しい出資を通せるタイミングじゃない』と言われたり。大きな額の調達が、すごく難しい状況が続いています」

ココナラ創業者で、現在はココナラスキルパートナーズ社長の南章行氏はそう話す。

ココナラスキルパートナーズは、ココナラの子会社だが、ココナラからの資金提供は受けておらず、すべて外部の投資機関などから資金調達している。

ココナラスキルパートナーズが、投資の元手となる資金調達ができているのは、そのビジネスモデルが評価されたためだと南氏はいう。

ココナラスキルパートナーズの大きな特徴は、資金調達において最も多くの資金を投資するリード投資家ではなく、より少額を投資する「協調投資」を専門としている点だ。

「リード投資家の役割は、他のVCにとってはライバルとみなされる。そうではなくて、スタートアップとVCをつなぐプラットフォームに徹しています。価値のある協調投資という珍しいポジションを作れた」

これまで投資した11社に加え、出資を合意している企業や出資を予定する企業は10社以上あるという。

「月平均5社は想定よりずっと早いペース。当初の予想よりもいい案件が集まってきています」

出資の基準のひとつ「トレンドに乗っているのか」

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注文から短時間で配達する「クイックコマース」の企業にも投資している(写真はイメージです)。

撮影:横山耕太郎

実際にココナラスキルパートナーズが出資したのは、どんな企業なのか?今回は南氏に、投資した2社についてその理由を聞いた。

まずはクイックコマース事業を展開する「QuickGet(クイックゲット)」。QuickGetは2022年6月29日、Spiral Capital、マネックスベンチャーズ、ココナラスキルパートナーズの3社などから計3億5000万円の調達を発表した。

「デリバリー限定の次世代コンビニ」をうたうQuickGetは、注文から10分以内に、自宅などへ商品を配送するサービス。現在は港区などで展開するが、2025年までに200店舗を目指すという。

南氏はクイックコマースの市場を、こう分析する。

「クイックコマースのマーケットが本当に立ち上がるかどうか、まだよく分からない状況です。ただフードデリバリーにしても、コロナ特需はなくなっても、家にいながらすぐに商品が受け取れるというトレンド自体は続くだろうなと思っています」

南氏はECを例に挙げ、「ECが出始めた頃は、日本は国土も狭いし、コンビニがあるから普及しないという見方もあったが、今や一大産業になった」と指摘する。

「僕は世の中を見るとき、人口動態や世代別の動態を頭に浮かべ、生活スタイルがどういう方向に向かっていくのかを考えるようにしています。そのトレンドに乗っているかどうか、可能性がありそうだと思ったら勝負することにしています」

「市場が立ち上がれば投資は失敗しない」

クイックゲットリリース

出典:クイックゲットのプレスリリース

ただ、クイックコマースの市場競争は激化している。

配送拠点から自宅に届ける「ダークストア型」と呼ばれるスタートアップでは、OniGO(オニゴー)や、Mesh(メッシュ)、日本から撤退したfoodpandaのダークストア事業を引き継いだたAMo(アモ)などがある。

「クイックコマースの領域は1社では立ち上がらないマーケットで、複数社がいるのはむしろ大事だと思っています。投資判断としては、マーケットさえ立ち上がってしまえば失敗しないと考えています。例え、2番手3番手でもあっても、一定の面を押さえられていれば事業売却もできる」

現在のマーケット総崩れとも言える状況では、資金力勝負とは違う戦い方になるのではないか、とも言う。

「スタートアップ的なアプローチでは、『お金をつぎ込んだ会社が勝つ』ような戦いになりがちですが、このマーケットはそうではないと思っています。

ダークストアは、店舗も商品の仕入れも必要なので、事業拡大には資金が必要になるマーケットですが、この状況では無尽蔵にお金は出てこない。例え入り口で遅れたとしても、しっかりと採算性と顧客満足度を上げ、収益につなげられるチームが勝てるのではと感じています」

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