1.2兆ドルの資産を運用するヌビーンの最高投資責任者、サイラ・マリク。
Nuveen Asset Management
2022年上半期が終わった。株式はここ何十年かで最悪の6カ月だったし、債券は混乱し、仮想通貨やその他の高リスク資産に至ってはもう悪夢としか言いようがなかった。市場参加者のほぼ全員が、早くこの嵐が過ぎ去ってくれるよう願ったことだろう。
しかし、上半期が終わって下半期になったからといって、魔法のような出来事が起こる訳ではないことは投資家も承知している。1.2兆ドル(約162兆円、1ドル=135円換算)の資産を運用するヌビーン(Nuveen)の最高投資責任者サイラ・マリク(Saira Malik)も、最近このように記している。
「高水準のインフレ、成長の鈍化、金利の上昇、FRB(米連邦準備理事会)による金融政策の不確実性、ウクライナ戦争の影響など、上半期に起きた深刻な逆風のほとんどはまだ残っている」
しかし同時に、マリクはこのようにも述べている。
「年後半にかけてはインフレが減速し、アメリカの消費者は支出を続け、FRBは最初の利上げラウンドを終えて金融政策に関してはより穏やかなアプローチを取る可能性がある。そうなれば、これらは全て経済と市場を下支えする要因となるだろう」
ヌビーンではこのことを念頭に置き、今後6カ月間は株式投資よりもクレジット投資の方が良い選択肢だと考えている。たとえ株価が割安に見えても、それは業績予想の下方修正リスクが十分に織り込まれていない可能性があるからだと言う。
では具体的にどんな投資先を同社は選んでいるのだろうか。
ハイイールド社債
「我々は公的債券クレジットセクターを通じてリスク志向のエクスポージャーを高める狙いだ。潜在的な下振れリスクの中で、単位当たりの短期的リターンがより魅力的であると考えるからだ」とマリクは記している。
マリクによれば、ヌビーンは特にハイイールド社債(信用格付が低い代わりに利回りが高い社債のこと)に強気であり、現在のリターン水準ならば、たとえ景気後退が訪れたとしても賢明な投資先だという。
ヌビーンのグローバル投資委員会のメンバーたちは、「ハイイールド社債は、BB格のものでも名目利回りは7%を超えており、特に魅力的と考えている」と記している。
「売られすぎた」地方債
しかし、彼らが最も信頼しているのは地方債だ。マリクによれば、地方債のファンダメンタルズは底堅く、今年上半期は売られすぎていたという。
「税収は増え続け、格上げ率のほうが格下げ率を上回っている。
この資産クラスは2022年、資金流出によって不当に痛めつけられており、長期志向の非課税投資家に機会を与えている」
投資家は、iシェアーズ米国地方債ETF(iShares National Muni Bond ETF)やJPモルガン地方債ETF(JPMorgan Municipal Bond ETF)などの上場投資信託を通じて、地方債をポートフォリオに組み入れることができる。
インフラ投資はディフェンシブな株式資産
マリクは、アメリカのインフレがピークに達するまでにはおそらくあと数カ月を要し、その後も高止まりするだろう、と記している。農地や商業用不動産などの実物資産は、いずれもインフレをヘッジしたり、インフレから利益を得たりするのに向いているが、今すぐすべき最良の投資はインフラ投資だと言う。
「インフラ投資は、高ボラティリティが続く環境下で恩恵を受ける、ディフェンシブな株式資産を提供してくれる」と彼女は記している。
「加えて、インフラ投資は多額のキャッシュフローが動き、規制もあることから、インフレ期にも強いことが歴史的に証明されている」
インフラはETFの分野としても人気が高まっており、AGFiQグローバル・インフラストラクチャーETF(AGFiQ Global Infrastructure ETF)やプロシェアーズDJブルックフィールド・グローバル・インフラストラクチャーETF(ProShares DJ Brookfield Global Infrastructure ETF)などが参入している。
マリクはまた、非公開市場よりも「打ちのめされた公開市場」から掘り出し物を探してそちらを優先することでこの下げ局面に対応すること、ポートフォリオのデュレーションを短期化した投資家はそろそろ正常なポジションに戻し始めたほうがよいことなどを提案している。
(編集・野田翔)