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- S&P500は1957年に導入されて以来、年平均で約10.7%の上昇率を記録している。
- 過去10年間はそれをわずかに上回り、年率約14.7%のリターンを記録しています。
- リターンは毎年大きく変動するが、長期にわたって投資を継続することが有効だ。
過去10年間、S&P500種株価指数の年率平均リターンは14.7%であり、65年前に指数算出が始まってからの長期平均である10.7%を上回っている。
だが、今日の株式市場のリターンは、過去10年間の株式市場の平均リターンとはまったく異なるかもしれない。ある年のリターンが、平均よりも大きかったり小さかったりするのにはいくつかの理由がある。
S&P500のリターンは年によって大きく変動することがある
米国の大手500企業で構成されるS&P500種株価指数をはじめ、市場にはさまざまな株式指数がある。市場のパフォーマンスを測るために、こうした指標を使う投資家もいる。
下の図表は、過去10年間のS&P500種株価指数の年率リターンを表したものだ(出所:バークシャー・ハサウェイ[Berkshire Hathaway]。配当金を含むリターン)。
バークシャー・ハサウェイは1965年からS&P500種株価指数のデータを追跡しているが、同社によると、1965~2021年までの指数の年率リターンは10.5%(複利)である。
リターン全体は良好に見えるが、どの年もこのようなリターンを示しているわけではない。
2018年のS&P500種株価指数のトータル・リターン(年初と年末の終値を比較)は4%以上下落しているが、2019年になると31.5%に急騰している。さらに、2020年の18.4%から2021年には28.7%へと、リターンが急上昇している。ただし、複数年のリターンをまとめて見てみるとブレは落ち着き始める。
こうしたリターンが、実際の投資傾向を表していない可能性があることに注意が必要だ。これらは年末と年始のデータを比べて計算しているが、典型的な投資家は年初に買って年末に売ることはない。この数字はその年の投資成長率の参考に過ぎず、1年という期間であっても実際の投資家のリターンを表すとは限らない。
また、投資家は株式を買うときに、必ずしも指数全体を買うわけではない。指数に組み入れられている個別銘柄を購入する投資家もいれば、投資信託を通じて、複数の異なる株式や債券の一部をまとめて買うことを選択する投資家もいる。これらの個別銘柄や個々の投資信託の年平均リターンをそれぞれ計算しても、S&P500種株価指数のリターンと一致しないかもしれない。
加えて、S&P500に連動するインデックスファンドに投資した場合でも、経費率(保有にかかるコスト)が高く、指数の平均リターンを下回ることがある。もちろん、過去のパフォーマンスは将来のリターンの予測ではない。S&P500種株価指数の平均リターンを見て、それを将来の拠り所にするわけにはいかないのだ。
買い持ち戦略は相場変動による影響を抑える
バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏や、投資のバイブル『証券分析(原題:Security Analysis) 』の著者でエコノミストのベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham)氏は、買い持ち戦略と呼ばれる長期投資が最善の資産形成手段だと説く。
買い持ち戦略が有効な理由はシンプルだ。投資は時間とともに上がったり下がったりするが、長期間保有することでこうした変動の影響を抑えられる。上述のとおりS&P500種株価指数のリターンは単年度では変動するが、長期保有によりリターンを平均に近づけられるだろう。
[原文:The average stock market return over the past 10 years]
(翻訳・中山桂、編集・長田真)