「ハゲ」をネタにしても実は傷ついている…ユニ・チャーム「みんなの生理研修」に見る自己開示の効用【入山章栄・音声付】

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。

男女や国籍の違い、LGBTQなど、真のダイバーシティはどのように育まれるのでしょうか。フェムテックについて無知だったと反省しきりの入山先生は「知識」「自己開示」「共感」がキーワードだと話します。

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:20分05秒)※クリックすると音声が流れます


男性は知らない生理の話

こんにちは、入山章栄です。

今回はちょっと微妙な話題なので、言葉に気をつけて話そうと思います。


BIJ編集部・小倉

どうしたんですか、入山先生。いつもと感じが違いますね。


今回は僕と小倉さんの男性2人がたじろぐ回になるかもしれませんよ。というのも最近僕はフェムテック (女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決する商品・サービス)に携わる方とお話しする機会が重なって、いろいろと思うところがあったんです。今日はその話ができればと思います。

最初は1年くらい前に、僕の「浜松町イノベーションカルチャーカフェ」という文化放送のラジオ番組で、フェムテックについて特集したときのことです。

ゲストにお呼びしたのがJ-CASTの蜷川聡子さんと、オンラインピル診療サービスmederiの坂梨亜里咲さんの2人。坂梨さんは、ピルを簡単に処方してもらえるアプリなど、女性の健康をサポートするサービスを立ち上げた方です。

このときの収録はゲスト2人が女性で、番組レギュラーの田ケ原恵美さんも女性。女性3人対男1人で語った結果、「入山先生、何も知らないんですね」とため息をつかれ、僕はずっと「何も知らなくてすみません」と謝りっぱなしでした。

このとき、いかに男性が女性の体調について無知であるか、まざまざと思い知らされたんですよ。


BIJ編集部・常盤

具体的には、どんなことをご存じなかったんですか?


例えばピル。小倉さんは僕より若いので違うかもしれませんが、僕にとってピルといえば、「不実な関係で女性が妊娠しそうになったときに飲むもの」というような古い認識しかなかった。

でも坂梨さんによれば、いまはピルを医療目的で飲むこともよくあるそうなんです。


BIJ編集部・常盤

そうですね。ピルにはいろいろな種類がありますから。緊急の避妊用もあれば、生理痛などをコントロールするために飲む低用量ピルもあります。


そうらしいですね。でも「ピル」という言葉を聞いただけで、もう思考停止に陥ってしまう男性も多いはずです。


BIJ編集部・小倉

僕も入山先生とまったく同じです。女性が医療目的でピルを飲むようになったと男性の間で認識され出したのは、ここ数年のことじゃないですか。


ほかにも聞けば聞くほど驚くことばかりでした。それで僕が驚いていると、番組のアシスタントスタッフの女性に、「入山先生、こんなの常識ですからね」と言われ、反省するしかなかった。

でも自己弁護するわけではありませんが、これは僕に限ったことではなく、おそらく一般の日本人の中高年男性も、僕と同程度の知識しかない人が多いのではないでしょうか。いわば、小中学校の保健体育の時間で止まっているんですよね。

女性用ショーツの問題点とは

このときのショックがかなり大きかったのですが、さらに追い討ちをかけたのが、少し前に津田塾大学の現役の学生でありながら起業した江連千佳さんという方と対談したことです。

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