小売業界では「実店舗+Eコマース」を革命レベルにまで昇華させるテクノロジーが次々登場している。
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小売業者にとって今回のパンデミックを乗り切るのは容易なことではなかった。
それでも、消費者が店舗やショッピングモールより安全な自宅での買い物を希望するなか、Eコマースに投資することで売り上げを伸ばすことに成功した企業は少なくない。
しかし、小売業界はいま新たな試練に直面している。
急拡大した巣ごもり需要の反動でEコマースの売り上げが伸び悩む一方で、記録的なインフレが進み、景気後退の足音まで迫ってきた。
そんな状況下にあっても、多くの消費者はパンデミックのさなかに身につけた(オンライン中心の)ショッピング習慣や迅速な配達サービスといった小売業者への期待を持ち続けている。
消費者のそうした期待は、小売業者がアマゾン(Amazon)のごとく手軽でスピーディな買い物体験を提供しなければならないことを意味している。
例えば、オンラインでの買い物と店舗での商品受け取りを可能にし、さらにはメタバースでの買い物体験の提供も検討する必要があるだろう。
大枚をはたいてフェイスブック(Facebook)に広告を出すより、ティックトック(TikTok)でライブコマース(映像の生配信を通じた販売)を行ったほうが、消費者には喜ばれるはずだ。
高まる期待に応えるために、小売業は今後どうすればいいのだろうか。
その問いに最も的確に回答できるであろう10人のビジネスリーダーたちの近未来予測を紹介する。
いずれも、人工知能やメタバース、顧客マーケティングなどリテール(小売り)テクノロジーの領域で業界をリードする革新的な経営者たちばかりだ。
【LEADER 1】グーグルクラウド(Google Cloud)/キャリー・タープ
リテール&コンシューマーソリューション担当バイスプレジデントのキャリー・タープ(Carrie Tharp)。
タープは、グーグルクラウドの小売業者向け検索テクノロジーと人工知能(AI)によるレコメンデーションを支える頭脳と言っていい。
彼女のチームは、ウォルマート、イケア(Ikea)、化粧品専門店チェーンのセフォラ(Sephora)などさまざまな小売業者が「検索離脱」(=検索した商品が簡単に見つからないために買い物客が小売業者のサイトを離脱すること)を回避できるよう支援を行っている。
タープのチームは、2021年に検索離脱に関する大規模な調査を実施し、一部の小売業のオンラインショッピング体験に大きな「穴」があることを発見した。
「グーグルクラウドは、小売業者が直面する真の課題を解決し、ビジネス成長の機会を獲得できるよう、業界特化型のAI、機械学習、データ分析ソリューションを提供し、小売業のデジタルトランスフォーメーションを支援していきます」(タープ)
タープ自身、少女時代に両親が経営する食料品店で働き、その後、高級百貨店のニーマン・マーカス(Neiman Marcus Group)と時計メーカーのフォシル(Fossil Group)でEコマースやデジタル体験、マーケティングを統括するなど、常に小売業とつながるキャリアを歩んできた。
そのほか、オンライン旅行代理店のトラベロシティ(Travelocity)ではイノベーションを、食品・飲料品メーカーのディーンフーズ(Dean Foods)では経営戦略も担当している。
【LEADER 2】アマゾン(Amazon)/ディリップ・クマール
店舗リテール・技術担当バイスプレジデントのディリップ・クマール(Dilip Kumar)。
Amazon
アマゾンはここ数年、レジなし決済システム「ジャスト・ウォーク・アウト(Just Walk Out)」を展開している。
このテクノロジーにより、買い物客はレジに並ぶことなく、欲しい商品を陳列棚から手に取って、そのまま店を出ることができる。出口のゲートを通過した時点で、アマゾンアカウントに登録したクレジットカードに自動的に代金が請求され、スマートフォンに電子レシートが届く。
この近未来的な技術を担当するのがクマール。アマゾンが近年力を入れているフィジカルストア(実店舗)向けのテクノロジー開発を担当するバイスプレジデントだ。
ジャスト・ウォーク・アウトは2018年初め、シアトルにある店舗面積160平方メートル超のレジなしコンビニエンスストア「アマゾンゴー(Amazon Go)」に初めて導入された。その後、さまざまな規模の店舗でも導入されている。
「ジャスト・ウォーク・アウトは、小規模なコンビニからフルサイズの食品スーパー、さらには空港やスタジアム内の店舗のような短時間に数多くの顧客が訪れる場所でも機能しています」(クマール)
アマゾンが2017年に買収した米自然食品スーパー最大手ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)のワシントンDCにある店舗でも2022年2月、ジャスト・ウォーク・アウトが導入された。ホールフーズの店舗は、コンビニのアマゾンゴーに比べて10倍以上の面積があり、来店客数もはるかに多い。
クマールは、アマゾンが実店舗向けに開発したその他のテクノロジーも統括する。
スマホアプリの代わりに入店ゲートに手のひらをかざして入店し、支払いも済ませることができる「アマゾン・ワン(Amazon One)」や、カメラと重量センサーが装備された買い物カートに入れるだけで購入商品が自動的に登録され、レジに並ばずに支払いを済ませられるスマートショッピングカート「アマゾン・ダッシュ・カート(Amazon Dash Cart)」などがそれにあたる。
「これらのテクノロジーは買い物の時間を節約し、レジ待ち行列のストレスを取り除くことで、買い物体験を向上させることができます」(クマール)
クマールは未来を見通す水晶玉を持っているわけではないが、次のように予測する。
「小売業界では今後も機械学習やコンピュータビジョンなどの活用が進み、顧客に手軽さと利便性を提供していくことになるでしょう」
【LEADER 3】レーダー(Radar)/スペンサー・ヒューエット
創業者兼最高経営責任者(CEO)のスペンサー・ヒューエット(Spencer Hewett)。
Radar
在庫管理の失敗は小売業者にとって命とりになる。レーダーのヒューエットCEOはそのソリューションを提供する。
レーダーは無線自動認識技術(ICタグ)を使って、一つひとつの在庫をデジタルで追跡できるよう支援する。
同社のテクノロジーは、店舗内のすべての在庫数を瞬時に把握し、陳列・保管場所を特定できる。売り逃しを減らし、売れ残りによる値下げ処分を最小化することで、収益拡大に寄与する。また、オンライン注文の処理にかかる時間を短縮するのにも役立つ。
カジュアル衣料専門店大手アメリカンイーグル(American Eagle)のほか、全米企業の総収入ランキング「フォーチュン(Fotune)500」にランクインしている小売業2社でも試験的に導入されている。さらに80社の小売業者が待機リストに名を連ねる。
アメリカンイーグルと共同で行った最近のテストでは、レーダーのテクノロジーによって製品の99%が追跡可能であることが実証された。
ただし、小売業における在庫管理はレーダーのテクノロジーのユースケースの一つに過ぎない。ヒューエットは、物流業者や消費者による利用などさまざまな用途開発を考えている。
「街を歩いていて、とてもクールなジャケットを着ている人を見かけた場面を想像してください。将来的には、レーダーのテクノロジーは視覚的な情報からジャケットのブランドやスタイルを認識できるようになるでしょう。
そのジャケットを着ている人(またはブランド)がワードローブデータの共有を認めていれば、誰でもそれを購入するためのウェブサイトURLを知ることができ、ジャケット着用者はアフィリエイト収入を得ることができるようになります」
レーダーはこれまでにベンチャーキャピタルから3300万ドルの資金を調達。同社取締役会のメンバーには、アメリカンイーグルの最高執行責任者(COO)が含まれている。現在の従業員数は約40人だ。
ヒューエットはエアビーアンドビー(Airbnb)やドロップボックス(Dropbox)を輩出した著名なアクセラレータープログラム「Yコンビネーター(Y Combinator)」の同窓生であり、米フォーブス(Forbes)誌が選んだ世界を変える「30歳未満の30人(30 Under 30)」(2022年)の一人でもある。
また、決済大手ペイパル(PayPal)創業者で投資家のピーター・ティールが始めた若手起業家育成プログラム「ティール・フェローシップ」からの資金援助も受けている。
【LEADER 4】ナイキ(Nike)/エリック・レドモンド
メタバース・スタジオ(Metaverse Studio)代表のエリック・レドモンド(Eric Redmond) 。
Nike
多くの消費者ブランドが、メタバースと呼ばれる新しい没入型デジタル空間のビジネス活用に挑戦している。ナイキもそうしたブランドの一つであり、その取り組みをリードしているのが、レドモンドだ。
入社7年目のレドモンドは、2021年11月にナイキのメタバース・スタジオの責任者に抜擢(ばってき)された。
それ以降、ナイキはゲームプラットフォームのロブロックス(Roblox)上に「ナイキランド(Nikeland)」と呼ばれる仮想世界をつくり、人気のアメフトゲーム「マッデン(Madden)」と提携し、バーチャルスニーカーを制作するNFTスタジオの「アーティファクト(Rtfkt)」を買収した。
ナイキの特許を調べれば、同社がメタバースを長期的な事業と位置づけていることが分かる。
ナイキは2022年4月、アーティファクトを通じて同社初となるバーチャルスニーカー「クリプトキックス(CryptoKicks)」を発売した。すでに二次流通市場では(発売時より高い)プレミアム価格で販売されている。
レドモンドはリンクトイン(LinkedIn)の投稿で、彼自身が個人的に所有しているクリプトキックスの一足を高額で購入したいという申し出を受けたものの、それを断ったことを明らかにしている。
「私のNFTに対して13万ドル(約1780万円)の買い取りオファーがありましたが、断りました。入力する金額のケタ数を間違えたに違いないからです。そのミスに乗じて利益を得ることはできましたが、それは私が望むメタバースではありません。
メタバースの世界では、ちょっとしたミスで財産を失う可能性があります。メタバースには技術的、制度的な改善が必要であり、それまでは参加する人々がそれぞれに良心的にふるまうことが求められます」
なお、レドモンドは作家でもあり、仮想現実から人工知能まで最新テクノロジーの入門書である『ディープテック(Deep Tech)』など数冊の著書を発表している。
【LEADER 5】フォックストロット(Foxtrot)/テイラー・ブルーム
共同創業者兼最高技術責任者(CTO)のテイラー・ブルーム(Taylor Bloom)。
Foxtrot
米フォックストロットはコロナ禍で大きく存在感を高めた高級コンビニエンスストア。同社は2014年、配送アプリのスタートアップとして創業、翌2015年にシカゴで実店舗1号店をオープンさせた。
洗練されたデザインの店舗には、健康志向やサステナビリティを切り口とした商品が並び、一般のコンビニや食品スーパーで販売される商品はほとんど見当たらない。自社のソムリエがセレクトしたワインの品揃えは、専門店顔負けのこだわりと豊富さを誇る。
店舗にはカフェとバーカウンターが備えられ、店頭で購入した商品をゆっくりと味わったり、リモートワークのためのスペースとして活用したりする客もいる。
現在、アメリカで19店舗を展開しているが、2022年初めには新規株式公開(IPO)を視野に入れたシリーズCラウンドで1億ドルの資金を調達。2023年末までにさらに50店舗をオープンする計画だ。
自社開発したアプリでオンライン注文を受けつけており、商品は原則として30分以内に配達する。客が店舗で商品を受け取る場合は5分以内に用意する。オンラインでの注文に対応するため、店舗には商品倉庫も併設されている。
フォックストロットでは、新興ブランドの食品や自家製コーヒーなども積極的に取り扱う。品揃えの独自性を高めると同時に、新たな製品サプライヤーを育成する目的もある。
「当社では、テクノロジーと同じくらい小売りにも力を入れています。その二つを融合させることで、顧客のオムニチャネル体験をつくり上げることができるからです」(ブルーム)
ブルームは、レジなし決済やコンテンツ豊富なプラットフォームなどのイノベーションが、今後も業界を前進させ続けるだろうと予測する。
「食品・飲料の分野でも、さらなるイノベーションが期待されます。消費者は新しいブランドを発見することにますます高い関心を持つようになるでしょう」(同)
【LEADER 6】ウォルマート(Walmart)/トム・ウォード
エグゼクティブバイスプレジデント兼最高Eコマース責任者(CeCO)のトム・ウォード(Tom Ward)。
Walmart
ウォードがウォルマートの最高Eコマース責任者に就任したのは、ほんの数カ月前のことだ。しかし、ウォルマートの顧客は彼のチームが成し遂げた仕事の影響を何年も前から実感しているはずだ。
ウォルマートのEコマースチームは、ウォードのリーダーシップのもと、受注データと配送ドライバーのマッチングを行う同社独自のSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)プラットフォーム「スパークドライバー(Spark Driver)」を開発した。
ウォードはラストワンマイルの配送を他の小売業者から請け負う物流代行サービス「ウォルマート・ゴーローカル(Walmart GoLocal)」の責任者でもあり、さらに、自動運転車両やドローンを使った宅配の試験運用や、注文から2時間以内に顧客の自宅に商品を届けるエクスプレス配送も統括する。
こうしたテクノロジーは「ラストワンマイル配送のスピードに関する顧客の定義を塗り替えるものです」とウォードは語る。
「小売業の未来がその品揃えによって決まる時代は終わりました。
消費者がいつ、どこから、どんな方法で購入しようとしたときでもあらゆる商品にアクセスでき、それが配送される。そんなユビキタス(=同時にいたるとこに存在する)な方向に、小売業の未来は進化すると見ています。
お客さまに最も近いウォルマートは、お客さまのポケットの中にある私たちのアプリなのです」(ウォード)
【LEADER 7】ゴーパフ(Gopuff)/ナヴィーン・シンハル
エンジニアリング担当バイスプレジデントのナヴィーン・シンハル(Naveen Singhal)。
Gopuff
食品即配サービスのゴーパフ(Gopuff)のアプリやウェブサイトを通じて顧客が注文できる商品の数は、ここ数年で爆発的に増えた。現在は独自のプライベートブランド商品まで追加されている。
シンハルは次のように語る。
「私たちはユーザーが何千もの商品をスマートフォンの画面で簡単に検索し、欲しい商品をすぐに見つけられる最適な方法を見出しました。
当社が持つデータと消費者インサイトを活用し、ユーザーがこれまで出会っていなかった商品を発見しやすいようにアプリ体験を最適化することもできます」
シンハルはさらに、「小売業者は消費者の物理的な要求とデジタルな要求の両方に対応する必要があり、それはデジタルと店舗のギャップを埋めるテクノロジーに投資することで実現できます」と指摘する。
そのような両輪の対応を実現することは、会員のリテンション(定着)率や客単価、顧客ロイヤルティの向上につながるという。
ゴーパフのアプリには、数多くの商品だけでなく、広告も表示される。同社は1年前から、食品メーカーがデジタル広告を出稿できるソリューションを提供している。
また、ゴーパフは2020年、酒類販売免許を持つ専門店チェーン「ベブモ(BevMo)」を3億5000万ドルで買収。それ以降、ベブモの実店舗とゴーパフのテクノロジーを統合し、商品の保管と出荷のための超小型配送拠点とそれに付随するシステムを追加導入した。
「テクノロジーとデータにより、ゴーパフはベブモの店舗でオンラインとオフラインのショッピングの境界線をなくす買い物体験をつくり出しました」(シンハル)
【LEADER 8】ショッピファイ(Shopify)/キャシー・ポリンスキー
マーチャントサービス部門エンジニアリング担当バイスプレジデントのキャシー・ポリンスキー(Cathy Polinsky)。
Shopify
中小の小売業者が自前のEコマースサイトを簡単に立ち上げられるプラットフォームを提供するカナダのショッピファイ。ポリンスキーはマーチャントサービス部門のエンジニアリングチームを率いる。
彼女のチームが開発したツールには、配送や売上税計算、リテールPOS(販売時点情報管理)、越境Eコマースなどがある。
ポリンスキーは、人工知能(AI)を駆使したスタイリング提案に強みを持つファッションEコマースのスティッチ・フィックス(Stitch Fix)で最高技術責任者(CTO)を4年間務めたあと、2021年1月にショッピファイに入社した。
彼女がショッピファイで優先的に取り組む仕事の一つは、小売業者が自社のオンラインストアに加え、インスタグラム(Instagram)やティックトック、ショッピファイなど、さまざまなチャネルで販売できるようにすることだ。
「顧客がどこにいても対応でき、パーソナライズされた体験を提供できる小売業者が、今後5年間で大きな勝者になるでしょう」(ポリンスキー)
ショッピファイは最近、「リンクポップ(Linkpop)」と呼ばれる新たなツールを発売した。これは、小売業者やインフルエンサーが自身のSNSのプロフィールから直接商品を販売できるようにするものだ。
個人や中小事業者がデジタルコンテンツの制作・販売によって収入を得るクリエイターエコノミーを支援するため、ショッピファイは今後投資を強化していく方針だ。
NFT(非代替性トークン)などWeb3(ウェブスリー)関連の技術開発にも力を入れるのは、「販売者が顧客に提供できる体験を変えることができる」からだ。
こうしたイノベーションは、ショッピファイのエンジニアチームが買い物客によりスピーディで信頼性の高い体験を提供することを追求する過程で生まれてきたもので、ショッピファイが提供するEコマースのインフラをいっそう強化することにもつながっている。
ポリンスキーは2021年の(小売業者が大規模なセールを行う)ブラックフライデーとサイバーマンデーの期間中、ショッピファイのプラットフォームが1分間に最大300万ドルを超える売り上げを処理したことを明らかにした上で、こうつけ加えた。
「この2021年の実績は、小売業者がセールを通じてどれだけ大きなトラフィック(サイト訪問者)を集めたとしても、当社のプラットフォームはその需要に十分応えることができることを示しています」
【LEADER 9】ドアダッシュ(DoorDash)/ケーシー・ノース
ドアダッシュドライブ(DoorDash Drive)担当バイスプレジデントのケーシー・ノース(Casey North)。
DoorDash
ノースは米ドアダッシュの中核事業であるマーケットプレイスおよびデリバリーサービスの拡大に尽力してきた。
ドアダッシュの20人の創業メンバーの1人であり、2014年にロサンゼルスでオペレーションマネージャーとしてキャリアをスタートし、すぐに昇進していった。
2017年にはマーケットプレイスの責任者となり、ドアダッシュのアプリで料理を注文できるレストランの数を大幅に増やした。
現在は「ドアダッシュドライブ(DoorDash Drive)」担当のバイスプレジデントとして、同社のデリバリープラットフォームを担当している。
2016年から提供されているこのサービスでは、加盟店が自社のオンラインチャネルで販売した料理や商品の配達を代行している。
ドアダッシュは、ライバルであるグラブハブ(Grubhub)やウーバーイーツ(Uber Eats)より数年早くこのサービスをスタートし、フードデリバリーサービス最大手の地位を築いた。
サービス開始初期にドアダッシュドライブを採用した顧客は、メキシコ料理レストランチェーンのチポトレ(Chipotle)や、チキンウイング(手羽先料理)専門店のウイングストップ(Wingstop)。いまでは食品スーパーやコンビニなど多様な小売店舗のラストマイル配送を請け負っている。
ドアダッシュドライブは同社の主要事業であり、提携先の加盟店が顧客との接点を広げる上で重要な役割を果たしているとノースは語る。
「加盟店パートナーが、(自社の店舗だけでなく)実際に顧客がいる場所で接点を持つことをドアダッシュドライブが可能にします」(ノース)
【LEADER 10】インスタカート(Instacart)/アシャ・シャルマ
最高執行責任者(COO)のアシャ・シャルマ(Asha Sharma)。
Instacart
2022年初頭に買い物代行大手インスタカートの最高執行責任者(COO)に就任するまで、シャルマはフェイスブックの製品担当バイスプレジデントを務めていた。メッセンジャーなど、ユーザー同士の直接対話を可能にするチャット製品の責任者だった。
そして現在のシャルマの仕事は、インスタカートと提携先の食品スーパーが顧客と親密な関係を築けるようにすることだ。
シャルマと彼女のチームは、インスタカートアプリの機能を拡張してユーザー同士でギフトを贈ることができるようにしたほか、インスタカートで注文できる惣菜の品揃えを強化した。
「インスタカートはフードテクノロジー企業です。
買い物のあり方が変化し続けるなか、実店舗とオンラインの隔たりをなくし、消費者一人ひとりにとってより使いやすく、手ごろで、どこからでもアクセス可能な『コネクテッド・コマース』のプラットフォームを小売業者向けに開発しています」
シャルマは目下、インスタカートのユーザーが特定の健康ニーズに合った食品を簡単に見つけられるようにすること、料理レシピのアイデアを集めたコンテンツを作成すること、必要な食品と栄養素へのアクセスを改善することなど、複数の課題に取り組もうとしている。
「今後数年は、テクノロジーが業界の未来を左右することになるでしょう」
(翻訳:田原寛、編集:川村力)