行動科学に基づきリーダーシップの指導を行うMindGym社が行った調査によると、企業経営陣の70%が、従業員と足並みをそろえ、彼らのやる気を高め、彼らのことを深く理解しようと苦心し、燃え尽きたと感じているという。
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- アメリカでは、2022年第1四半期に離職したCEOは、前年同期比で29%増加し、パンデミックの初期以来最多を記録した。
- 市場の不安定さと社会的圧力の増大が、CEOを疲弊させている。
- 企業は今年の展望に自信を持ち、経営陣の交代を進めている。
アメリカでは、「大退職(Great Resignation)」に加わっているのは、現場の従業員だけではない。最高経営責任者(CEO)もそれに加わっていることが、世界的なビジネス・コーチング企業であるChallenger, Gray & Christmasの調査で明らかになった。
全米の企業を対象としたこの調査によると、2022年第1四半期に離職したCEOは395名で、前年同期比29%増となっている。四半期ベースでは、COVID-19のパンデミック初期にあたる2020年第1四半期に441名が離職したとき以来の高い水準となる。専門家によると、緊張感の高まりが主な原因だという。
脱出するCEO
この2年間、アメリカのCEOたちはパンデミック、従業員の大量離職、急激な景気後退、社会問題への対応を迫る圧力、ロシアのウクライナ侵攻などに伴うサプライチェーン問題などに取り組んできた。このような圧力の高まりにより、過去最多のCEOが「大退職」に加わることになったのだ。
2022年になって、スターバックス(Starbucks)のケビン・ジョンソン(Kevin Johnson)、ドキュサイン(DocuSign)のダン・スプリンガー(Dan Springer)、レッドロブスター(Red Lobster)のケリー・ヴァレード(Kelli Valade)などを始めとする何百人ものCEOが離職した。
この離職傾向は今も衰える気配がない。
5月には、エミリー・ワイス(Emily Weiss)がECサイト、グロシエ(Glossier)のCEOを退任した。6月上旬には、ライアン・ピーターソン(Ryan Peterson)が物流会社フレックスポート(Flexport)のCEOを間もなく辞任するとツイートした。ライアン・ウィリアムズ(Ryan Williams)も2014年に創業した不動産投資プラットフォーム、カドレ(Cadre)のCEOを辞任することを6月下旬に発表した。
アメリカの人材紹介会社ハイドリック・アンド・ストラグルズ(Heidrick & Struggles:H&S)は、アメリカ、中国、ドイツ、アラブ首長国連邦、南アフリカ、メキシコ、シンガポールなど20数カ国の上場している大企業の情報を分析した結果を毎年発表している。それによると2021年上半期は、調査した約1000社のうち、103社が新しいCEOを指名していた。2020年下半期の49社と比べると、2倍以上になっている。
デロイトコンサルティング(Deloitte Consulting)のダン・ヘルフリッチ(Dan Helfrich)CEOは、「Fortune 500(全米企業の総収入ランキング)」にランクインするような企業のCEOの多くがこれまでになく燃え尽きていると、以前Insiderに語っている。
「彼らは自身のメンタルヘルスと向き合うことを余儀なくされている」
行動科学に基づきリーダーシップの指導を行うMindGymが行った新たな調査によると、企業経営陣の70%が、従業員と足並みをそろえ、彼らのやる気を高め、彼らのことを深く理解しようと苦心し、燃え尽きたと感じているという。
新たなタイプの経営陣
インテル(Intel)のグローバル・ベネフィット担当バイスプレジデントであるアンバー・ワイズリー(Amber Wiseley)が、2022年1月のインタビューでInsiderに語ったところによると、企業のトップの交代は、すべてが辞職によって引き起こされるわけではないが、その交代によって、10年分に値するような変化が数カ月に圧縮されるという。
H&Sの調査によると、2021年上半期に任命された新CEOのうち、女性は13%で、2020年下半期の6%から倍増している。また、新CEOは外国人であったり、他産業での経験があったりする可能性が高い。
現在は退任していくリーダーたちが就任した当時とは違う世界になっている。「過去に任命されたCEOが、後任のCEOとかけ離れていることは、おそらく驚くべきことではない」と、H&Sは調査レポートに記している。
MindGymの共同設立者兼CEOのオクタビウス・ブラック(Octavius Black)によると、大退職に加わらずにすむように、新たなCEOは今最も重要なスキルを身につけている必要があるという。すなわち判断力、意思決定力、リーダーとしての思考力を身に着け、リモートでも多くの従業員と足並みをそろえ、彼らのやる気を高め、統率していくというスキルだ。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
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