『鬼滅の刃』で革新的だったのは、制作サイドの「流通戦略」でした。
撮影:吉川慧
社会現象になった大ヒット作品『鬼滅の刃』は、多くのファンを惹きつけた内容もさることながら、アニメ業界のビジネスにも大きなパラダイムシフトを起こした。
そう指摘するのは、バンダイナムコスタジオやブシロードなどで国内・海外のコンテンツ展開に従事してきたエンタメ社会学者の中山淳雄氏だ。著書『推しエコノミー』では、メガヒットしたコンテンツを題材に、世界のエンタメ経済圏の現状と未来を分析している。
1クールのテレビ放送でも2〜3億円の費用がかかり、赤字になることもザラなアニメ業界で、『鬼滅の刃』はなぜここまでヒットしたのか。コロナ禍はどう影響したのか。制作サイドの戦略や、いまアニメ業界に起きている“変化”を中山氏に聞いた。
『鬼滅の刃』はアニメ流通のパラダイム・シフトを起こした
インタビューに応じる中山淳雄さん。
撮影:今村拓馬
──著書『推しエコノミー』では、アニメ『鬼滅の刃』の大ヒットをきっかけに「アニメの届け方」にパラダイムシフトが起きていると指摘していました。具体的にはどういうことでしょうか。
『鬼滅の刃』で革新的だったのは、制作サイドの「流通戦略」でした。
2019年4月からアニメ1期をテレビで放送する際、全国21局での放送に加えて、AbemaTV、dTV、Amazonプライムなど14もの動画配信プラットフォームでも無料配信したんです。
その結果、日本中の人が『鬼滅』を見られるようになりました。
──テレビと同時にネットで無料配信するアニメ作品は過去にもありました。それらとの違いは。
まず「テレビで放送する」と一口に言っても、いくつかのパターンがあります。
テレビ放送用のアニメ作品を作るには、1話あたり約2000〜3000万円、1クール(3ヶ月)で2〜3億円の費用がかかります。全国に放送網を持つキー局で放映するとしても、採算が合わないことが頻繁にあるんです。
キー局で放映するとなると、制作サイドはテレビ局に「放送関連費」と呼ばれる費用を支払わなければなりません。
具体的には「波代」(30分枠を押さえる電波料)+「CM枠代」(番組の合間のCM料)+「局印税」(アニメの宣伝に貢献したテレビ局に支払われるロイヤリティ)で、数千万円にものぼります。
──作品がヒットすれば費用を回収できるが、そうでなければ赤字になる。
複数の会社が共同出資する「製作委員会方式」のアニメ作品では、テレビ局や広告代理店が参加していたら放送関連費用を負担する場合が多いですが、そうでない場合もままあります。
最近では放送関連費を節約するために、全国キー局ではなくあえて全国ネット局としては弱めなテレビ東京や、首都圏のローカル局TOKYO MXなどを選ぶことが増えてきました。
──『鬼滅』1期もTOKYO MXで放送されましたが、たしかにローカル局でキー局ではありません。それでも全国21局で放映された。どういう仕組みだったのでしょうか。
この21局というのは「キー局と系列局」という構成ではありません。21の地方局が、独自の判断で『鬼滅』という番組を買っている、もしくは製作側のアニプレックスが売りに行っている形になっています。
そのため、系列が異なる関西圏の読売テレビ(日テレ系)や中京圏のメ~テレ(テレ朝系)から独立U局(非キー局)のとちぎテレビや群馬テレビまで、系列を問わずに放送していました。
全国各地で放送される場合に、東京キー局経由で系列局に一元的に流されたと思われがちなのですが、むしろアニメ製作側が「選択して」さまざまな放送・配信メディアに広げていったように思えました。
テレビと同時にネットで無料配信、その狙いは?
撮影:吉川慧
──テレビと同時に動画配信プラットフォームでも無料配信したのは、なぜだと考えられますか。
まずは1カ所の「独占配信」ではなく、複数プラットフォームかつ無料で配信したことがポイントです。
しかも、テレビ放送と同じ週に最新話が配信されていた。テレビ放送を見逃した人やテレビが自宅にない人でも、日本全国でほぼ同時に内容を追いかけることができたんです。
通常、配信プラットフォームが他社制作のコンテンツを配信するには、「配信権」という権利を購入します。ただ、『鬼滅』1期の配信権は比較的安価だったはずです。
──それはなぜでしょうか。
配信プラットフォームにしてみれば、「独占配信」や「先行配信」のコンテンツであれば、自社サービスの新規会員を獲得するチャンスになります。
たとえ高額でも、ヒット作であれば配信権の購入を決断するでしょう。
でも、他社でも流れているコンテンツであれば、わざわざ高い値段で買おうとは思いませんよね。
『鬼滅』の制作サイドは、各テレビ局と同時に配信サイトにも「無料ほぼ同時公開」を許した。放送権や配信権での利益はあまり得られなかったはずです。
これは『鬼滅』の制作サイドが、ネットでの「配信権」で利益を出すことよりも「別のこと」を優先させたということだと思います。
──「別のこと」とは?
ネットでの配信は「お金を稼ぐため」ではなく「ユーザーに認知してもらうため」。そう割り切ったんですね。
通常の製作委員会の考え方では、「無料配信」は忌避されてきました。せっかく作った映像が、1.5倍速で見られてしまう。
劇場を訪れたり、テレビでその時間を楽しみに待ったり、「ユーザーがメディアに足を運んで集中してみる」という半世紀培った習慣を壊してしまうのではないか、と。でももはや「メディアがユーザーの便利なところに足を運ぶ」時代ですよね。
そうしたラディカルな意思決定をできたのも、『鬼滅』の製作委員会の構成の仕方そのものに秘密があります。メンバーはアニメ企画会社のアニプレックス、制作会社のufotable、原作漫画を出版する集英社、この3社だけなんです。
特にアニプレックスは、課金型スマホゲームなどの「運営型コンテンツ」をファンに継続利用してもらうノウハウを持っています。『鬼滅』にはその戦略が活かされていると思います。
興味や熱気の継続こそ、成功の秘訣?
──アニプレックスが得意とする「継続利用」の戦略とは?
ファンの熱や作品の話題を途切れさせないようにすることです。
例えば、お客さんの興味や熱気を継続させるため、さまざまな商品やゲーム、サービスとのコラボや、劇場版の発表などを続々と投入したりですね。
──途切れること無く話題を提供し続けることで、ファンに『鬼滅』への興味・関心を寄せ続けてもらう努力をしていた。
こちらを御覧ください。これはTwitterでの『鬼滅の刃』に関するつぶやき数とコミックスの売り上げの関連を示したグラフです。
【P93 図表17】
図:『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』より』
第一の波は2019年4〜9月。これはアニメの放送・配信期間と重なります。1期最終話で劇場版『無限列車編』の制作が発表され、告知PVも公開されました。
その後、2019年10月には原作コミックス17巻の発売。年末には主題歌「紅蓮花」を歌うLISAさんがNHK『紅白歌合戦』に出場し、大きな話題となりました。
2020年1〜4月には爆発的な第二の波が来ています。2020年1月には「一挙放送」という形でテレビ再放送がありました。この時期、原作コミックスの第1巻購入者が激増。原作を読んだことがない新規層にリーチしたと考えられます。
それ以降もコラボカフェ、アプリゲーム『モンスターストライク』(2020年2月14日)や『白猫プロジェクト』(2020年4月28日)とのコラボ、大手コンビニ「ローソン」とのコラボ……と、どんどん話題を提供し続けています。
そして第三の波が2020年5月。これは同年4月の劇場版『無限列車編』の予告編第一弾の発表を受けてからです。ここでまたTwitterのツイート数が伸びました。
この時期は、ちょうど1回目の「緊急事態宣言」の時期(2020年4月)と合致しています。
──コロナ禍で「おうち時間」が増えたことも『鬼滅』に触れる人が増え、認知度を高める後押しになった、と。
2020年は4月に予告編第一弾を公開し、5〜9月にさまざまなコラボで話題を供給。そして10月、満を持して劇場版『無限列車編』の公開を迎えます。
この時期は緊急事態宣言がなく、映画館を開けることもできたタイミングでした。結果、邦画の歴代興行収入1位という爆発的な大ヒットになりました。
その熱気のまま、同年12月にはアニメ2期となる『遊郭編』のPVを公開しています。
新たなファンを生むきっかけに?中山氏が指摘する“下からの圧”とは
──コンテンツの送り手側が新情報を断続的にリリースし、コラボでファンの熱を維持するプロモーションは、他のアニメ作品でも見られます。これらと『鬼滅』では、どんな違いがあるのでしょうか。
『鬼滅』は口コミの拡散数が尋常ではなかったんです。口コミというのはネット、SNSでの言及ですね。
たとえば、ハッシュタグ「#鬼滅の刃」がツイートされた数をみると『無限列車編』公開初日(2020年10月16日)には54.3万ツイートを記録しています。
また、フジテレビで放送された『無限列車編』の初回放送日(2021年10月10日)の午後9時~11時10分の「土曜プレミアム」枠では27.6万ツイートもありました。
それだけでは終わりません。“下からの圧”が大人たち、特に小・中学生の親世代にもやってきました。
──「下からの圧」というのは?
日常会話で「鬼滅見ました?」「え?鬼滅まだ見てないの?」と言われる機会の増加です。
身近な例で恐縮ですが、2020年4月のちょうど緊急事態宣言の最中、子供から「パパ、『鬼滅』見てないの?」と言われました。
でも、私は2019年に『鬼滅』1期をすでに視聴しており、子どもにも「一緒に見る?」と声をかけていたんです。
当時、子どもは「これ、血が出るやつでしょ?」と怖がって見たがらなかったんです。でも、子どもの中で何かが変わったんですね。
以前は関心を示さなかったのに、「まだ見てないの?」と言うほど姿勢が大きく変化した。
それは、学校や塾など、子どもたちのコミュニティの中で『鬼滅』が話題になったことが影響しているようでした。
子どもたちは自分が見知った大人が「これ面白いよ」と勧めても、あまり参考にはしてくれません。
むしろ、自分の友だちや普段アニメを見ない人たちまでもが『鬼滅』を話題に「そんなに流行っているんだ」と認知するんです。そうやって「世間」の温度感を知っていくのだと思います。
自分のコミュニティの中で「見た」という人が半分ぐらい占めた時に、「パパ、見てないの?」という発言につながったのだと思います。
『鬼滅』はSNSのフィルターバブルを突き破った。
撮影:吉川慧
──Twitterなどネット上でのブームと、自分がいるコミュニティで話題になることには、何らかの相関関係があるのでしょうか。
明確に関係があると思います。人は、自分が所属するコミュニティの中で、何らかのコンテンツが「みんな(マジョリティ)が関心を持っている話題か」どうかを感じ取り、自分の取るべき行動を決めたりします。
これは小学生から大人まで、どんな集団でも起こりうることです。
FacebookでもTwitterでも、SNSのコミュニティは自分と近い世代や親和性の高いクラスタで占められがちです。
つまり、SNSの景色は、その人が見たいものしか見えなくなる。フィルターバブルという言葉がありますが、コミュニティごとに見える景色が違っているのが通常です。
ところが、このフィルターバブルを『鬼滅』は突き破った。Twitterのトレンドなどを通して、下の世代やアニメファンのつぶやきが目に見える形で示されたことで、普段アニメを見ない層にまで波及したと考えられます。
──『鬼滅』がTwitterで言及された数とブームの拡大は連動していると。
【P93 図表17】
図:『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』より』
さきほどの表では、検索ユーザーの変化が分かります。
「原作の『鬼滅』第1巻がその月で何部売れたか」を年齢別で見ると、アニメ放送前は20~30代がメインでした。それがアニメ放送後にメイン層が10代~20代まで下がります。
その後、2020年2月でファン総量が増加する。年齢別でみると40代が急増しました。
この40代こそが「まだ見てないの?」と“下からの圧”を受けたり、SNSでトレンドになって『鬼滅』の存在に気付いた層だった。そこにちょうどコロナ禍がきた。
──2020年2月と言えば、コロナ禍が広がり、自粛が始まったころです。
自宅勤務が広がり、家での滞在時間が長くなった。そこで「最近話題だし、ちょっと読んでみようか」と購買力のある大人たちが突然『鬼滅』のファン層に現れるわけです。
当時はコミックスを全巻そろえても1万3000円程度。大人がライブやイベントに1〜2回行ける金額で買えてしまう。感動すら覚えました。
ここで購買力のある大人が入ってきたことで、『鬼滅』市場は大きく拡大しました。
──大人は、ハマるのは遅いけど、お金を落とすということですね。
これは私の肌感ですが、購買者数だけでみると増えたのは2倍くらいですが、市場規模でみると「大人買い」の影響で5倍くらいになった感じがあります。
コミックスやアニメに触れた読者は、周りでも流行っていることで、さらにハマりたいと思う。もっと知りたいし、語りたくなる。
行き場がなくなった気持ちは、ノベルやグッズといった関連商品の購入につながり、さらに経済圏が大きくなっていく。そして2020年10月公開の劇場版『無限列車編』でさらにファン数が激増した。
ここでまたグーグルトレンドが70万とか、とんでもなく増えるんです。
映画をきっかけに新たなファンを数百万人も生み出すことが出来ました。劇場版はいわば『鬼滅』のエントリーモデル、最初の入り口として機能したんですね。
これまで『鬼滅』の原作を読んだり、アニメを見たことがなくても、映画を見れば炭治郎たち登場人物の背景が理解できるつくりになっていましたから。
──「まだ見てないの?」と言われた大人も、入りやすい環境が整っていた。
『鬼滅』がすごいと思ったのは、先ほどお話しした配信プラットフォームが「アーカイブ」の役割を果たしたことです。
映画から入った人も、多くの配信サイトにアニメ第一期が全話無料があるので後追いできたんです。
普通、話題になった作品を一から見ようとすると、そのころにはすでに配信が終わっていたり、再放送の機会もなかったりする。
ところが『鬼滅』は常に無料アーカイブがあるので、いつでも見ることができる。「映画が良かったから、もう一度テレビシリーズを観たい」「物語に追いつきたい」というニーズに応えられたんです。
つまり配信は、テレビ放映時に放送されていない地域をカバーするためだけではなくて、流行に“後乗り”したい人に向けたアーカイブとしても機能していたんです。
もはや『鬼滅』を見るための「インフラの整備」と言ってもいいくらいです。
それだけの長い期間、話題性を保って盛り上げようという『鬼滅』の制作サイド、特にアニプレックスによる長期的な戦略だと思います。
『鬼滅』が起こした「アニメ流通の民主化」
──大人気となった『鬼滅』に、大手テレビ局も関心を寄せるようになりました。
まさに。FNN系列のキー局であるフジテレビは、劇場版公開にあわせてアニメ1期の再編集版を放送しました。
これはフジテレビという大手テレビ局が、自らお金を出して、すでに他局や配信会社が流し終わった「再放送」の権利を買ったということです。
そこまでしても『鬼滅』を放送する効果が大きいと考えたのでしょう。こうした動きは今までほとんどなかったと思います。
そして、アニメ2期ではフジテレビが放送権を購入した。面白いのは1期と2期で放送局が地方も含めて全然違います。2期はすべてフジテレビ系列。すでに有名になった『鬼滅』はもはや放送先を選ばなくてもユーザーがくるので、2期はマネタイズを優先して一番高く買ってくれる放送局とその系列に売ったわけです。
これはアニメとテレビ局との力関係が変わった、つまり「流通の民主化」が起こったと考えています。
──どういうことでしょうか。
最初にお話ししたように、キー局とアニメ作品は、アニメ作品の制作サイドがテレビ局に電波代やCM枠代などを支払う形で作品を「流させてもらっていた」形です。
しかし、『鬼滅』では違った。それまで優越的な力を持っていたテレビのキー局が、制作サイドにお金を払ってまで放送権を取得しに動いた。
『鬼滅』以降、アニメ供給側とテレビ・配信プラットフォーム側の力関係が、同列に並んだと言えると思います。
とは言え、テレビのアドバンテージがなくなったわけではありません。他の媒体にはない「新しい役割」が生まれています。
テレビの新しい役割、キーワードは「仮想一等地」
撮影:吉川慧
──テレビの「新しい役割」とは。
『鬼滅』の大ヒットには、TwitterなどSNSの効果が大きかったことは確かです。ただ、ネット発の“祭り”を作り出すためには「同じ時間、同じ場所に、みんなが集まる」環境を作り出す必要があります。
かつて日テレの「金曜ロードショー」で『天空の城ラピュタ』が放送されると、Twitterで同時に「バルス!」とつぶやく現象が話題になりましたよね。
コロナ禍では、それがちょうどテレビ放映中だった『鬼滅』だった。「ネットの中で、みんなで一緒に盛り上がれるものはないか?」と探していた人が『鬼滅』の実況に加わりはじめた。
同時多発的な「祭り」をつくる上で、同じ時間、広い地域に同じ番組を放送できるテレビ局の役割は大きいと思います。
──「今、この時間に放送されている」という制限が「祭り」をつくるパワーになっている。
ネット上に大勢が同じ時間に集まることを、現実にある銀座などの一等地と対比して、私は「仮想一等地の出現」と呼んでいます。
フジが放映した『鬼滅』再放送の初回では、「#鬼滅の刃」のつぶやきが27.6万ツイートにのぼりました。テレビの新たなアドバンテージは「ライブ感」にある、と示した瞬間でもありました。
──テレビの役割が変化する一方、「製作委員会」はいかがでしょう。異なる要求を持つ会社の集合体であるためにしがらみも多かった。変化は生まれたのでしょうか。
知る限りでは『鬼滅』が成功したことで、製作委員会のあり方も変わりつつあると思います。
いくつもの会社が集まって意思決定をしている製作委員会は「無料配信」「一挙放送」といった思い切った施策を思いついたとしても、全社の合意が取りづらかった。
一方で『鬼滅』はアニプレックス、集英社、ufotableの3社だけでフレキシブルに動けた。この事例は、製作委員会の課題を変えていくきっかけになるかもしれません。
『鬼滅』に続くヒットコンテンツとなった『呪術廻戦』は、製作委員会方式ではありますが、情報公開のタイミングの良さ、SNSを使った盛り上げなど『鬼滅』のプロモーションを思わせる展開手法をとっています。
21年12月の劇場版公開前にはMBSで1〜7話がゴールデンタイムに一挙放送されました。制作委員会内では「『鬼滅』が当たった」という前例ができたことで、各社のコンセンサスが取れやすくなったようです。
これは『鬼滅』がつくった1つのトレンドと言えます。各社とも「こうやって仮想一等地をつくれば盛り上がる」という合意形成ができたのでしょう。
アニメの「届け方」を成熟させた、それが『鬼滅』がアニメ作品の流通面で果たした大きな功績だと思います。
(後編に続く)
慶応義塾大学経済学部訪問研究員。立命館大学ゲーム研究センター客員研究員
1980年栃木県生まれ。東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。著書に『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)、『ヒットの法則が変わった いいモノを作っても、なぜ売れない?』(PHPビジネス新書)、『ボランティア社会の誕生』(三重大学出版会、日本修士論文賞受賞作)などがある。