IVS2022 NAHAで実施されたスタートアップのプレゼン大会「LAUNCHPAD」。
撮影:小林優多郎
スタートアップ交流型イベント「IVS2022 NAHA」(会期:7月6日〜8日)が先週、沖縄県・那覇市で開かれた。
最終日のスタートアップがプレゼンで競う登竜門「LAUNCHPAD」には、事前に250の応募から選出されたファイナリスト14社が登壇した。運営元によると、LAUNCHPADへの応募者数は、IVS史上過去最多。
今回、1位に輝いたのは、こだわりのペットフードとメディアを展開する「PETOKOTO」(ペトコト)を起業した大久保泰介さんだ。
人間の食事のようなペットフード
フレッシュペットフードを販売する「PETOKOTO」。
撮影:小林優多郎
大久保さんは2015年にPETOKOTOを創業。LAUNCHPADで大久保さんは「人間は毎日新鮮な食事をしているが、愛犬は違う」「(既存の)ペットフードは人間のエゴで生まれた食材」とし、ペットフードの再発明を訴えた。
PETOKOTOのペットフードは現在は犬向けに展開しており、「フレッシュペットフード」を自称する。累計出荷数は1000万食を超えている。
新鮮さや味を売りにしており、新鮮な野菜や肉、魚を使用し、その産地はホームページで掲載。保存料、着色料、香料などは使用していない。国内工場で製造し、スチーム加熱で調理、急速冷凍させて出荷する。
実際にPETOKOTOのペットフードを食べる大久保泰介さん。
撮影:小林優多郎
ペットに食べさせる際は、人間向けのチルド食品のように温めて出すだけ。見た目的にも人間の食事のようで、プレゼン時には大久保さん自身が自社製品を口にする場面もあった。
また、PETOKOTOは社名と同名のウェブメディア事業や保護犬・猫のマッチングサイトも運営している。ペットフードの販売もそれらのサイトからの流入が多く、ユーザーの獲得コストを抑えられているという。
コロナ禍で増えたペット需要に対応
IVS運営からトロフィーを受け取る大久保泰介さん(写真中央)。
撮影:小林優多郎
筆者も過去に犬を飼っており、「ペットを家族として扱うことを当たり前にしたい」と話す大久保氏に共感するところがあった。プレゼン後、審査員のコメントの中で、プレゼン中にPETOKOTOのペットフードを購入、もしくはすでにユーザーだったと告白する人もいた。
また、コロナ禍でおうち時間が増え、新たにペットを飼い始める人もいただろう。そういった社会の変化をある意味で反映した入賞だったのではないかと感じた。
大久保さんは今後の展望として、PETOKOTOでペットに関する医療や保険、旅行のサポートなど、事業を拡大させ、「5兆円規模あるアジアのペット市場でNo.1の企業」を目指すとしている。
なお、IVS2022 NAHAのLAUNCNPADに出場した企業とサービスは以下の通り。入賞は5位までで、5社目以降は順不同とした。
(2位)隠れた農業資源から服の繊維をつくる「FOOD REBORN」
撮影:小林優多郎
プレゼンターは社長の宇田悦子さん。FOOD REBORN(フードリボン)は沖縄県発のベンチャーで、パイナップルの皮やバナナの茎から、高品質な繊維を生成する技術を持つ(特許出願中)。
農家に機械を無償で貸し出し、その繊維を買い取り、さらにアパレル企業に売ることをビジネスモデルとしている。日本と台湾で事業を展開しており、今後インドネシアにも進出する見込み。
(3位)企業の二酸化炭素排出量を可視化する「アスエネ」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはアスエネ共同創業者でCEOの西和田浩平さん。企業の排出する二酸化炭素の量を可視化するSaaS「アスゼロ」を展開している。
アスゼロでは、契約している電気のプランや社員が業務で給油したガソリンスタンドのレシートなどから、企業全体の二酸化炭素排出量を計算。AI技術などを活用し、年間の排出量などを予測する。
東京証券取引所では、4月4日の市場再編以降、プライム市場上場企業に対し気候変動に関するリスク情報開示が求められている。今後はスタンダードやグロース市場にも広がる動きもある中で、一層ニーズが高まると予想している。
(4位)SNSの民主化を目指す「nanameue」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはnanameue(ナナメウエ)代表の石濵嵩博さん。心から素が出せるSNS「Yay!」(イェイ)を運営する。
Yayは完全匿名のネットワーク上で、趣味や興味ベースでつながり、情報交換や通話などが可能。累計利用者数は540万人を突破している(2022年7月時点)。
nanameueでは2022年冬以降、国内でNFT(非代替性トークン)の販売とIEO(トークンの発行体が暗号資産交換業社を介して資金調達をすること)を目指している。
(5位)サイト訪問者に直接営業ができる「ジェイタマズ」
撮影:小林優多郎
プレゼンターは共同代表の小池桃太郎さん。ウェブサイトの訪問ユーザーに直接ビデオ通話やチャットで営業をかけられる「OPTEMO」(オプテモ)を展開する。
OPTEMOを導入したサイトでは、ユーザーが閲覧中にポップアップが表示。ユーザーが許可をすれば、インサイドセールスの担当者と直接話すことができる。また、担当者側からはユーザーが今どのページを閲覧しているか分析も可能。
現在はまだ本格リリース前だが、すでに30社以上の企業が導入済みだとしている。
再エネオーナーのDXを進める「Tensor Energy」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはTensor Energy共同代表の堀ナナさん。再生可能エネルギーの発電所のオーナー向けのシミュレーションツール「Tensor クラウド」を提供している。
ウェブでの購入体験を変える「EC-GAIN」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはEC-GAIN代表の村田薫さん。EC-GAIN(イーシーゲイン)は沖縄発のスタートアップで、インフルエンサーや専門家のおすすめから商品を買えるソーシャルコマースアプリ「pippin」(ピッピン)を運営している。
ECサイトでの購入を簡単にする「Recustomer」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはRecustomer代表の柴田康弘さん。ECサイト向けにワンクリック決済などのフロントエンド機能、顧客からの返品対応や支援をするバックエンド機能を提供する。
Cookieレス時代におトク情報を届ける「STRACT」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはSTRACT代表の伊藤輝さん。iOS向けSafariの拡張機能「PLUG」では、ユーザーから同意の元にウェブサイトでの行動ログを取得。閲覧中のECサイトや商品を分析。そのサイトでの割引キャンペーンや他社ECサイトの最安値の通知をする。
家賃の支払い履歴を信用情報化する「rease」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはrease CEOの中道康徳さん。家などの賃貸保証会社(家賃保証会社)向けの業務支援ツール「smetaクラウド」などを展開する。家賃の支払い履歴などの情報から、新たな信用データの創出を目指している。
ホワイトハッカーをマッチングする「BoostIO」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはBoostIO CEOの横溝一将さん。フリーランスのホワイトハッカーにセキュリティー診断を依頼できるクラウドソーシングサービス「IssueHunt」(イシューハント)を、LAUNCHPAD当日(7月8日)にローンチした。
中小企業向けの電話自動応答ツール「IVRy」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはIVRy(アイブリー)代表の奥西亮賀さん。月額3000円から利用できる電話自動応答(IVR)サービスを提供している。創業から約1年半で累積アカウント数は2000を超えている。
代理店連携管理クラウド「PartnerSuccess」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはPartnerSuccess CEOの永田雅裕さん。SaaSなどのプロダクトを実際に販売する代理店向けの管理クラウドを提供する。1月に正式版をリリース、2022年6月末時点の導入社数は210社。
高度なフリーランスをマッチングする「Sollective」
撮影:小林優多郎
プレゼンターはSollective(ソレクティブ)創業者兼CEOの岩井エリカさん。Sollectiveはフリーランスと企業のマッチングサービスで、フリーランスはスキルや専門性などの同社基準の審査を経て登録が可能。今後は、企画書や契約書、請求書などを管理・発行するツールも展開予定。
(文、撮影・小林優多郎)