ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の最初の「ディープ・フィールド」赤外線画像。2022年7月11日公開。
NASA, ESA, CSA, and STScI
- ジョー・バイデン大統領はNASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による最初のフルカラー画像を公開した。
- 待望の画像は「深宇宙」を捉えたもので、130億年以上前の銀河を表している。
- NASAは、JWSTが天文学に革命を起こし、宇宙の始まりにタイムスリップさせてくれることを期待している。
アメリカ航空宇宙局(NASA)は2022年7月11日、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による初のフルカラー画像を公開し、深宇宙観測の歴史を塗り替えた。
この画像は、これまで撮影された赤外線画像の中で最も解像度が高いものだ。「ディープ・フィールド」と呼ばれるもので、空のある一部の領域を長時間露光して観測し、非常に暗い遠方の天体の光を捉えている。
光が移動するのには時間がかかるため、この画像に写っている光の一部は130億年以上前のものだ。それはビッグバンから10億年足らずの頃で、望遠鏡は時間をさかのぼることに成功したのだ。
「今日は歴史的な日だ」と述べ、ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は7月11日の夜、ホワイトハウスの記者会見で画像を見るのを待っていた。
「これらの画像は、アメリカが大きなことを成し遂げられることを世界に知らしめ、アメリカの人々、特に子どもたちに、我々の能力を超えるものは何もないことを思い起こさせるだろう。我々は、誰も見たことのないような可能性を見ることができる。誰も行ったことのない場所に行くことができるのだ」
NASAのビル・ネルソン(Bill Nelson)長官は会見でバイデン大統領に「もし、あなたが腕を伸ばした先に砂粒を持っていたら、それがこの画像に写った宇宙の一片を表します」と語った。ネルソン長官はまた、この画像は最初の一枚であると述べた。
「我々は約135億年前までさかのぼる。宇宙は138億歳であることが分かっているので、我々はほとんど最初に戻ったといえるだろう」
この「ディープ・フィールド」の撮影では、JWSTは強力な赤外線カメラを「SMACS0723」 という巨大な銀河団に向け、その背後にある天体を写すための拡大鏡のように利用した。光の筋は「SMACS0723」の強力な重力によって引き伸ばされた銀河のもので、「重力レンズ」と呼ばれる現象だ。NASAによると、この画像の撮影には1日もかからなかったという。
これは、運用を始めた新しい望遠鏡からのフルカラー画像コレクションの触りに過ぎない。NASAは7月12日午前10時30分(アメリカ東部時間)から残りの画像を順次公開する予定だ。その中には、星雲(nebula)として知られる星が誕生する場所の画像や、遠くの惑星の大気に関する化学組成の情報を含むスペクトルも含まれる予定だ。
2020年3月4日、カリフォルニア州レドンドビーチにあるノースロップグラマン宇宙システムのクリーンルームに置かれたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡。
NASA/Chris Gunn
この新しい写真によって、NASAは20年と100億ドルをかけて建設した巨大な宇宙観測所の成果をようやく手に入れ始めた。そしてこの7カ月は、その投資に対する過酷なテストだった。
クリスマスの日に目が釘付けになるような打ち上げの後、新しい望遠鏡は地球から100万マイル(約160万km)離れた太陽を周回する軌道に投入され、344の失敗の機会がある繊細な展開プロセスを実行した(動画)。エンジニアの心配をよそに、7トン近い天文台は無傷で試練を乗り越え、すべての科学機器をオンラインにすることができた。
今後数年間で、JWSTはビッグバン後の最初の4億年という宇宙の歴史の謎となっている期間のギャップを埋め、宇宙人が住んでいるかもしれない遠い世界を特定することができると天文学者は期待している。
2021年12月25日、ロケットから離脱するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。カメラが望遠鏡を間近にとらえたのは、これが最後だ。
NASA TV
これらの宇宙的偉業を達成するために、技術者たちは1990年の打ち上げ以来、NASAの主要な軌道観測衛星だったハッブル宇宙望遠鏡よりも6倍大きく、100倍強力なJWSTを建造したのだ。
ハッブル望遠鏡が初めて捉えた下の画像は、32年前に公開されたときには注目に値するものだった。今回のJWSTの画像は30年にわたる技術の進歩を反映している。
ハッブルの「ファースト・ライト」画像(右)と地上望遠鏡による類似画像の比較。
E. Persson (Las Campanas Observatory, Chile)/Observatories of the Carnegie Institution of Washington; NASA, ESA, and STScI
「この望遠鏡は、人類の偉大な工学的成果の1つだ」とカマラ・ハリス(Kamala Harris)副大統領は7月11日に述べた。
「その歴史の始まりから、人類は驚きを持って夜空を見上げてきた。何十年もエンジニアリングと科学に取り組んできた献身的な人々のおかげで、我々は新しい理解を持って空を眺めることができる」
新しい宇宙観測所は、ハッブルよりもはるかに遠くまで、はるかに詳細に宇宙を見ることができるはずだ。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)