ブリュッセル近郊の園芸店に陳列された除草剤ラウンドアップ。
Reuters
- 広く利用されている除草剤成分が、多くのアメリカ人の尿から検出された。
- アメリカ疾病対策予防センターの調査によると、2310人の尿サンプルの80%以上から、「ラウンドアップ」の有効成分であるグリホサートが検出されたという。
- グリホサートは特定のがんのリスク上昇に関連している可能性があるが、さらなる調査が必要だ。
化学物質は害虫の駆除、雑草や菌類の防除、農作物の収穫量の最大化など、さまざまな目的で使用されている。人が口にする食品にそれらが含まれていても驚くようなことではない。
グリホサートという除草剤の有効成分も、そのひとつだ。それがアメリカの人口構成を代表する調査参加者の80%以上の尿から検出された。この調査はアメリカ疾病対策予防センター(CDC)が、2013年と2014年の国民健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)で収集した2310人のデータ(そのうちほぼ3分の1は6歳から18歳の子ども)を分析したもので、その結果が2022年6月に発表された。
公衆衛生監視団体US Right To Knowによると、アメリカの農家は、ラウンドアップという商品名で市販されている除草剤の有効成分グリホサートを、毎年9万トン以上畑に散布しているという。特にトウモロコシや大豆などの遺伝子組み換え作物に広く使用されている。
何千人もの人々が、ラウンドアップはがんを引き起こすと主張して、その製造会社を訴えている。グリホサートが深刻な健康リスクをもたらすかどうかについて、公衆衛生機関の意見は分かれている。だがCDCの最近の調査結果はさらなる研究が必要だということを示している。
グリホサートは史上最も広く使用されている除草剤
カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の2017年の研究によると、グリホサートの使用は1990年代以降、少なくとも15倍に増加している。
ラウンドアップを生み出した農薬会社であるモンサント(Monsanto)社は、農家がラウンドアップを畑全体に散布しても作物が枯れないように、この化学物質に対する抵抗を持つ遺伝子組み換え作物を作り始めた。それが1990年頃だったのだ。
ラウンドアップは、遺伝子組み換えでない小麦やオート麦を収穫前に乾燥させるためにも使われ、多くの農家が生育期が始まる前に畑に散布している。グリホサートは歴史上最も広く使われた除草剤であるとガーディアンは報じている。
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関は、2015年にグリホサートを「おそらく発がん性がある」成分として分類している。しかし、アメリカ環境保護庁(EPA)は、グリホサートが深刻な健康リスクをもたらすことはないとしている。
ラウンドアップに対する裁判の一部を審理した控訴裁判所は、このほどEPAに再考を促した。
モンサントを買収したドイツの製薬会社バイエル(Bayer)は、グリホサートは人体に何の危険も及ぼさないという主張を続けてきた。それでも同社は、2023年から住宅用の除草剤に含まれる有効成分を置き換えるとしている。
バイエルの広報担当者がInsiderに語ったところよると、CDCが調査した尿に含まれるグリホサートの量は、「閾値(毒性が発現しない最小量)よりかなり低い」という。
[原文:Most Americans have toxic weedkiller in their urine, 'disturbing' study finds]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
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