Twitterの買収を仕掛けたイーロン・マスク。
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Twitterはここ数カ月間に大量のユーザーデータをイーロン・マスクに渡したが、マスクがそれを自らの目的のために使うのではと懸念するようになったという。
440億ドル(約6兆円、1ドル=137円換算)でTwitterを買収するという取引から手を引こうとしているマスクに対し、Twitterは2022年7月12日に訴訟を起こした。
それによると、億万長者のマスクは自らが「Twitterの取締役になる、買収する、または競合他社を作る」という3択しかなかったと、早い段階でTwitterの幹部たちに明かしたという。マスクが買収を優先させ、自分は同社の役員にならないことを決め、のちに「もっともらしい」理由で買収から手を引き始めたように見えたことで、Twitter側が懸念するようになったという。
「マスクの第3の選択肢、Twitterの競合他社を作るという選択肢は残っている」と同社の弁護士は訴状に記している。
それでも、同社はマスクの要求に応じ続け、ユーザーのアカウントとアクティビティに関する多くのデータを複数回にわたって渡したという。49テビバイト(1テビバイトは2の40乗バイト)にのぼる未加工のユーザーデータをマスクに渡したときもあった。
マスクによると、自らの要求はTwitter上に「ボット」やスパムアカウントがどれだけあるかを理解するためだったという。マスクの要求は続き、Twitterは時間がほとんど与えられない中で要求に応じていくうちに、マスクがデータを何に使っているのか疑問を持つようになったという。
「買収を完了させるというコミットメントを堅持するTwitterは、顧客データを保護しながらも、マスク側が要求するものを提供し続けようとした。しかし、マスクが取引から手を引くことに成功した場合、彼がデータをどのように使用するのかに関して深い懸念を抱いていた」と同社の弁護士は記している。
Twitterの弁護士によれば、同社は2022年5月の時点で、マスクが情報へアクセスするためにはいくつかの「プロトコル(ルール)」が必要だと表明していたという。マスクが要求していたデータが「もし外部に共有されれば、Twitterが競争上の不利益を被ることになる」からだ。マスクの弁護士からは、Twitterがマスクのデータ要求に応じないと非難する回答が送られてきたという。訴状によると、同社は結局「要求されたデータへのアクセス」を3週間のうちにマスクに渡したという。
マスクは2022年3月上旬、Twitterの株式を大量に取得していることを初めて明かした。彼は取締役に就任する予定だったが、その後同社の買収に乗り出し、Twitterの取締役会は最終的にこれを受け入れることにした。Twitter側は訴状の中で、株式市場が下落傾向に転じ、マスクの個人資産やTwitter買収の資金調達にかかる費用に影響が出たため、マスクが取引への関心を失っただけなのではないかと述べている。
Twitterはまた、2022年7月8日にマスクがこの取引は「終了した」と考えていると述べたものの、その後も情報を求めており、Twitterから渡されたデータを「匿名のデータ審査担当者の支援を受けて」データマイニング(データベースからの分析)をし続けていると主張している。
マスクは7月12日、この訴訟に反応したと思しきこんなツイートを投稿している。
「皮肉なことだ lol(爆笑)」
(編集・大門小百合)