シアトルを拠点とする不動産投資家のトッド・ボールドウィン。
Courtesy of Todd Baldwin
不動産投資家のトッド・ボールドウィン(Todd Baldwin)は現在、投資に適した物件が出てきたときのために、現金を確保しておくことにしている。
「頭金として使うにせよ、現金一括で購入するにせよ、少なくとも100万ドル(1億3500万円、1ドル=135円換算)のキャッシュを手元にキープしておくことにしています」と、シアトルに住む29歳のボールドウィンは語る。
「今、アメリカでは金利が信じられないほど高くなっています。ですが、欲しいと思える物件を見つけたらすぐに手に入るようにしておきたい。すぐにでも動く準備はできているってことです」
ニューハンプシャーを拠点とする不動産投資家のマットと彼の家族。
Courtesy of Matt and Ashley
ニューハンプシャー州を拠点とし、100戸以上を所有している不動産投資家のマット(仮名)も、100万ドルの現金を元手に、良い物件が出てくるのを辛抱強く待っているという。彼には月に10万ドル(約1350万円)の不動産収入があり、Insiderもその事実を確認した。
マットはこの1年間、現金を確保するためにポートフォリオの大規模な借り換えを2回行っている。1回目は2021年7月だ。数百万ドルの現金を引き出し、2022年1月までに再投資した上で、さらに「400万~500万ドル(5億4000万円〜6億7000万円)相当の資産に換えた」という。
「今こそ、ポートフォリオからできる限りの現金を引き出し、不動産価格が大きく動いたときのために準備をしておく時ですよ。グレート・リセッション(編注:アメリカのサブプライムローン問題に端を発し、2008年から2010年にかけて起きた世界的な景気後退)のときのような不良債権はさすがに出ないでしょうから、50%も不動産価格が下落することはないと思います。10%から20%なら十分あり得ますが」
彼の2回目の借り換えは2022年3月だった。なお、1年を待たずに2回の借り換えをするのは、マットの場合はうまくいっても、その過程で発生する手数料のことを考えると一般の個人の住宅所有者には必ずしも意味をなさないだろう。
2回目の借り換え以降、マットは貯めた資金でさらに2軒の住宅(3世帯住宅と4世帯住宅)と1区画の土地を購入した。それでも、「2月の時点よりも現金は増えています。これがキャッシュフローを生み出す不動産投資のいいところです」と彼は言う。
マットは金利の上昇にも動じない。「今、貸出金利は5.75%から6%でしょう」と、彼は取材した日のアメリカの住宅ローン金利を指して言った。
「でも、2月、3月の時点では4%でした。実質的には50%も上がったことになる。ただし、健全な投資家にとって重要なのはコストがいくらかかるかではありません。どれだけ価値を生み出せるかです」
マットは、物件を購入するたびに20〜25%の頭金を支払うようにしているが、ROE(投下資本利益率)さえ高ければ、金利が高くても気にしないという。最近購入した4世帯住宅では、すでに投下資本の30%以上を賃料によって回収した。
「住宅ローン金利が6%だろうが16%だろうが関係ありません。重要なのは、投資した現金に対して、どれだけのリターンが生じるかだけです」
シアトルで不動産を購入し、2021年には不動産売却と賃貸収入で150万ドル(約2億円)以上を稼いだ前出のボールドウィンも、金利上昇にひるまない。
彼はこの2年以上物件を買っていないが、それはこだわりが強いからだという。
「市場を恐れている訳でも、不動産に弱気になっている訳でもありませんよ。基準が非常にはっきりしているというだけのことです。ですが、このこだわりがあるからこれだけうまくやれているんです。私は特定の物件しか買いませんから」
ボールドウィンは、多世帯住宅か、新築または築浅、そしてHOA(住宅所有者協会)の費用がかからない物件を探している。また、将来有望なエリア、つまり従来は見過ごされてきたが開発の兆しがあるような土地を買いたいと考えている。
「不動産を買うのに完璧なタイミングというのはありません。急ぐとよくありませんが、待っていてもチャンスを逃すことはある。『不動産を買うのは待つな、買ってから待て』という考え方に私は賛成です。そうすれば、長期的な成長の恩恵を受けることができますからね」
高利回りを実現する2つのポイント
大きなリターンを得るために、マットは2つのことを行っているという。
1つ目は、全ての物件を自主管理し、コストを低く抑えること。2つ目は、その地域の家賃相場を完全に把握することだ。
「家賃相場にはとても詳しいと思いますよ。レントメーター(周囲の物件と家賃比較ができるウェブサイト)のようなサービスもありますが、大抵は3カ月から6カ月遅れていて、家賃の値上がりがこれほど早いと使う意味がありません」
いくらで貸せるかを見抜くことは、不動産投資から利益を得るためには非常に重要だと話す。
「所有していても、利益がほとんど出ないように思える物件はあるものです。ですが、もしかしたら相場より低く賃料を設定してしまっているだけかもしれませんよ」
マットが賃貸料を正確に把握する上で、100戸以上のポートフォリオを持っていることは助けになるが、彼は地域の他の不動産投資家にも連絡を取り、彼らがどの程度の価格で物件を貸しているのかをリサーチする努力もしている。
土地の購入は、マットにとって新しい投資事業だった。インフレによる物価上昇のためまだ着工していないが、彼は、2023年の第1四半期に不況が訪れると予想しており、不動産の建設コストもいずれ下がると考えている。そうなれば、厳しい経済情勢の中で、建設会社の雇用を創出することも可能になる。
「銀行にお金を預けて、増やすことなく寝かせたままにしておくこともできる訳でしょう。だけど、もし今後市場が調整され、商品価格や建築コストが下がり、建築に携わる人も増えると思えるなら、今土地を買っておく価値はあると思うんです」
今日からできる3つのアドバイス
もしあなたが、不動産に関わりたい、あるいはポートフォリオを広げたいと思っているなら、今日からできることがいくつかある、とマットはアドバイスする。
「まず、今すぐ銀行に話を聞きに行くことです。銀行は不況下でどのように商売をするものなのか、どんな借り手なら安心して融資できると思うものなのか」
次に、「人脈作りにかける時間を2倍にすること」だという。
「どんなご縁から案件が舞い込んでくるか分かりませんからね。地元の不動産業者はもちろん、地域の投資家仲間や卸売業者とつながること。できるだけ多くの人に接触するんです」
最後に、「現金をつくり出すこと」だ。
「支出のうち、必要がないものは全てストップすることです」
結局のところ、不動産投資をするなら頭金や購入時諸費用などのために現金を用立てておく必要があり、ここは避けて通れないのだ。
(編集・野田翔)